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星の夢と、混濁の

星の夢と、混濁の

 寒い夜に、温いひとりの布団がある。それだけで、私の生活は、始まって終わる。それ以上でもそれ以下でもなくて、ただそれだけで、私の世界にあなたはなくても良いのだと遠回しに突きつけられた証拠のようで、少し怖い。
 あなたの生活もきっと同じで、私がそこに入れなくても何も変わらないし、あなたはそのままだ。

 星が泣いていた、暗くてどこまでも飲み込む夜の宇宙は冷たいから、私の呼吸も止まりそうだった。止まっ

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交わるものの話

花びらが蹲っていた、苦しそうにもがく事もせずただそこにいた。形は変わらないはずなのに私たちの心はとどまることを知らないで、1秒も一瞬も進み続けて、だから泣く。騒がしい時間がきらいそうなきみは夢を見ることが好きみたいだったね、愛なんてものはないとわかっていながら、寂しそうな目はいつも私の心を見ていた。砂漠の中に迷い込んだみたいに、全部から水が抜け出していって、空気は体を取り囲んで、そこに繋ぎ止めよう

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私の濁った世界を、あなたの抱擁はそれを濾過するかのように。幾重にもなる、柔らかく繊細な、その糸の結びたちが、余計なものを絡め取って、美しさだけがするり、と抜け出でて、最後にポツン。と、澄んだ一雫だけを、指先で掬い取って、口に含む。

そんな優しさが欲しい、私の世界を、私が悲しい世界を、誰かの抱擁で、濾過して、綺麗なところを私に食べさせて。

おと

両の手のひらを擦り合わせて
空にかざす時、ぼくは生きているんだなあ、という実感が心臓の奥の、血の巡りからどくどくと、わき上がってくるんだ、
どくどく、どくどく、
自分の中からする音が、ぼくはとても心地いい
ぼく以外の誰かが住んでいるかのように、
その誰かが声をあげているかのように、

ぼくも生きている
そうだ、ぼくも生きている
ぼくの中のぼくも生きている

どくどく、どくどく
この音が止まらないか

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no title

no title

吐き溜めた水色に私は夢を見るのだ。
その水色は灰色のようなくすんで曇って濁っている
でも確かに明るい
でも確かに綺麗で柔くて強い

それは液体でどろどろしていて
一見浅くて水溜りのようだが一番真ん中だけ、深い。
宇宙のようだ、とも思った。
だがただの泥の水溜りのようでもある。

感情が溶け出しているのかもしれない

一体、それは

文章というのは、収まりが良くて、読んでて心地いい長さのものが美しくて正解だと思っていた。でもそうではないらしい。句読点で幾つにもつながった言葉でも、表現が豊かな人が綴れば、それはどんな形であれ、美しい表現で、美しい作品で、一つの形となるのだと知った。

私の醜さも全部まとめて愛してくれ。受け止めてくれ。許してくれ。お願いだから。嫌いにならないで。離れていかないで。私を見つけてくれ。お願いだから。

私の指が作る言葉を。
私の唇が吐き出す音を。
私の脳が生む言葉を。
私の心臓からの感情を。

波が打ち寄せるかのように、寄せては引く、引いては寄せる、そんな風な暗い感覚をどうか、どうか、攫ってくれ。私が溺れてしまう前に。空気が奪われる前に。

私たちの愛なんてものは軽薄で、吹いたら飛んでいくよ。本の一ページよりも薄くて、ひとつまみの砂糖よりも軽い。海水よりも塩っぱくて、珈琲よりも苦い。蜂蜜よりも甘くて、その涙ほど暖かい。手から零れ落ちていった愛は、地面が吸い込んで、花に。
なるわけがないさ。溢れた愛は何にもならない。