おと

両の手のひらを擦り合わせて
空にかざす時、ぼくは生きているんだなあ、という実感が心臓の奥の、血の巡りからどくどくと、わき上がってくるんだ、
どくどく、どくどく、
自分の中からする音が、ぼくはとても心地いい
ぼく以外の誰かが住んでいるかのように、
その誰かが声をあげているかのように、

ぼくも生きている
そうだ、ぼくも生きている
ぼくの中のぼくも生きている

どくどく、どくどく
この音が止まらないかぎり、ぼくは生きているのだと実感する

どくどく、どくどく
この音が止まるとき、ぼくは
ああ、生きている時間が終わってしまったんだなあ
と、そんなふうに呑気にぼそっとつぶやく

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