「花の名前」
庭に小さい赤い実をつけた草花があるのは知っていた。毎日のように、その前を通り過ぎて、ポストを見たり、買い物に行ったり、出かけたりしていたのだけど、その名前を知らなかった。
白い小さな花が咲いているのを見て、ちょっと興味が出て、妻に、その花の名前を教えてもらった。
ジュズサンゴ。
それから、話が続いて、「これが花で、この赤いのが実でしょ。それから、この緑がつぼみなんだよね」。
「え。ということは、この一本の茎に、花もつぼみも実も、それもいっぺんにあることになるんだ」。
「そう」。
2階に上がって、カメラを持ってきて、戻ってきて、写真を撮った。
3世代同居、みたいな植物があるのは、初めて知ったし、もしかしたら、他にもあるのかもしれないけれど、自分にとっては、そこに違う時間が全部乗っかっているような感じがして、不思議だった。
訂正されたこと
何日かたって、妻がちょっと真面目な顔で、あやまることが、と言われて、何かと思ったら、ジュズサンゴのことだった。
「この前、緑がつぼみって言ったんだけど、この緑は、花が終わったあとに固まりになって、それから赤くなって実になっていくから、つぼみじゃないんだよね」。
「え、じゃあ、つぼみは?」
「つぼみは、やっぱり緑なんだけど、もっと小さくて、たぶん、違う緑だと思う」。
と言われ、つぼみのほうは、ちょっとよく分からなかったが、どうやら、この緑が違うのは分かった。それでも、白い花と、赤い実が、いっしょに茎にあることは、変わらなかった。
どうして、それに妻が、気がついたかというと、私に教えてくれたあと、また、よく見たら、その違いに気がついて、教えてくれたらしい。なんだか、ありがたかった。
ただ、それを教えてくれなかったら、私は、知らないまま、3世代が一つの茎に存在している植物として、ジュズサンゴを覚えることになったと思うが、それでも、これまでは知らなかった花の名前を覚えた事実は、変わらないはずだった。
ちょっと世界は、広がった。
10月まで咲く花
園芸種としてのジュズサンゴは、6月くらいから花が咲き始めて、枯れて、実になって、ただ、それが何サイクルも回って、10月くらいまで花が咲き続ける。(という妻の情報でしたが、もしかしたら、違うかもしれません、とも言っていました)。
妻は、続けた。
「だから、花がないときも、うれしいというか、ありがたい」。
「それに花も、実もかわいい」。
「この前は、この緑と白と赤の色味が揃っているジュズサンゴの茎をつみ、他の植物といっしょに、ガラスの器に水を入れて、ご近所のお宅に飾らさせてもらったら、評判がよかった」とも妻は言っていた。
小さめで控えめで、この時期も、残暑も、秋まで花を咲かせて、その上、秋が深まったら、葉っぱも紅葉して、さらに赤を加えてくれる、ということも妻に教えてもらった。
そんなことまで、してくれていたのに、これまで、ほぼ視線のすみっこで見ていただけで、ちゃんと見ていなかった。こうして、noteを書くようになって、いろいろと細かいことに気がつくようになった、などと妻にも言われるので、恥ずかしながら、現金なことだと思うけれど、確かに少し敏感になっていると思う。
それは、コロナ禍で、家にいる時間が長くなったり、特に東京都は感染者拡大で、これからも不安が増えそうな中、気持ちがやわらぐことにつながりそうだから、いい変化だと思っている。
(他にもいろいろと書いています↓。クリックして読んでもらえたら、うれしいです)。