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映画の残響

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映画やドラマ鑑賞が趣味です。感想文をまとめています。ネタバレは御免ください。
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私ときどきレッサーパンダ/メイの自己肯定感の根拠

私ときどきレッサーパンダ/メイの自己肯定感の根拠

 母と娘の絆を尊く神聖に描くのでなく、むしろ母娘の相互依存から脱却し、互いに自立する物語でとても感動しました。

 主人公のメイは勉強・友人関係・家の手伝いなど、完璧にこなせる自信に満ちた女の子です。しかし、その自信の根拠は母親の望み通りに生きれていることです。だから母が嫌がる異性やチャラチャラした音楽への関心を隠すし、序盤では隠してる自覚すらなさそう。
 メイの表情はコロコロと変化し、とても豊か

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バケモノの子/自分を受け入れる、とかそういう話

バケモノの子/自分を受け入れる、とかそういう話

 本作では主人公のレンとライバルの一郎彦が対の関係として描かれます。心の闇が暴走した一郎彦に対し、レンが制御できたのは何故か。それはレンが自己を受容できたからだと思います。
 バケモノの世界で暮らすことになったレンは、人間であることを理由に差別を受けます。否応なしに他者との違いを突きつけられるのです。
 また武術の師匠である熊徹は口下手で上達法を教えてくれないから、熊徹を観察し、自ら工夫することで

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花束みたいな恋をした/他者の変化と向き合う

花束みたいな恋をした/他者の変化と向き合う

時間や環境によって変化していく他者とどう向き合うか。人と長く付き合っていく中で、誰しもが通るこの問題が本作のテーマだと思います。
 人間は誰もが家庭環境や職場、学校、人間関係…様々な変化に適用しようとします。変化しない人間などいるはずがない。それが成長か、堕落か。そんなのは各々の評価で、変化という事実だけが確かにある。なにより変化をするからこそ人生は物語になるのです。

 他人と長く付き合おうとす

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