【てる子さんの友人に贈る小説】『転生しても、しなくてもいい』
私は、ずっと「何者か」になりたかった。平凡な生活に飽き飽きしていたし、誰の目にも留まらない自分が嫌でたまらなかった。そんなある日、怪しげな売人から「転生林檎」というものを手に入れた。食べれば生まれ変われるんだと言う。迷いはなかった。私はその林檎を頬張った。たちまち意識は遠のいていった。
目が覚めると、私は一流のアーティストになっていた。世界中で私の作品が称賛され、人々は私を天才と呼んだ。才能に酔いしれ、他の人間なんて凡人に過ぎないと思い始めた。だが、どんなに成功しても、