ナル

よろしくお願いします。 詩、エッセイ、短編、岩手紹介記事(予定)など色々書きます。 シ…

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よろしくお願いします。 詩、エッセイ、短編、岩手紹介記事(予定)など色々書きます。 シリーズ「神と人」「空想エッセイ 昨夜の話」不定期更新。日向坂46推し。

マガジン

  • 自作小説集

    長いものからショート作品まで、いろいろ書いてみます。怖い話って書いてても怖いよね。

  • 空想エッセイ 昨夜の話

    作者・ナルが昨夜体験したかもしれない、妖怪たちとの交流のお話。事実か空想かは、ご想像にお任せします。

  • 自作エッセイ

    私、ナルが書いたエッセイと呼べるかぎりぎりの文章を集めました。しょうもないことしか書いてません。

  • 自作詩

    ナルが書いた自作の詩のようなものたちです。読んでいただけたら成仏できます。

  • 「神と人」シリーズ

    神や妖怪と関わる人間をテーマにした自作の小説集です。あとがきも収録。あとがきのほうが面白いらしいです。納得いかない。

最近の記事

【短編】さようなら、猫の国

果歩は立ち尽くしていた。どうして、どうしてこうなったんだろう。 猫を追いかけていた。それだけのはずだった。偶然見つけた、白い猫。青い目で、桜色の首輪をしていた。かわいさのあまり、撫でようとしたら、ものすごい勢いで逃げられた。 「あ、待ってよぅ。」 細い路地に入って、突き当りを右。鳥居をくぐって、神社がある。子供の頃から何度も通った裏通り、のはずだった。 鳥居をくぐった先にあったのは、大きくて古い街だった。ところどころ損傷した建物。荒廃している、とでも言うのだろうか。 間

    • 【空想エッセイ】昨夜の話(2)

      「はあ…。」 僕はため息をついた。缶チューハイを飲む。またため息。 やっぱりだめだったかあ…。 こんこん、と窓を叩く音。東北にはうっすらと秋が来た。夜はもう、ちょっとだけ寒い。窓を開けた。 「やあ、一つ目小僧と………誰?」 「今日は新しい友達を連れてきた!イッポンダタラだよ。」 「こんばんはー。イッポンダタラっす。よろしくー。」 大きな身体。隻眼で、一本足。なのに、ノリが軽い。 「よろしく、イッポンダタラくん。なんて呼べばいい?」 お菓子を支度しながら、僕は尋ねた。今日はと

      • 【空想エッセイ】昨夜の話(1)

        何も書けない。 今日は何をやったってだめだった。 行こうと思ったお気に入りの店は臨時休業。通行人によくわからない理由で舌打ちされて、睨まれた。書こうと思ったテーマの小説で、ものすごくいいものを見つけてしまって自信喪失…。 なんだって、こんなにうまくいかないんだろう。 ノンアルビールを流し込んで、窓越しの夜空を見た。 空を、妖怪たちが駆けていく。 ああ、そうだ。今日は百鬼夜行だった。すっかり忘れていた。窓を開け、おぅいと呼んでみた。一つ目小僧がこちらに気付いて寄ってきた。

        • 書かなかったのは何故か

          「書いてたじゃないか、しょうもない短編を」とは言わないでくれ。 書いていなかったのは、エッセイの話である。 このところ、エッセイの更新をさぼっていた。別にお叱りを受けたわけではないのだが、今日はその言い訳をする。させてほしい。ナルの作品ならエッセイ派!という皆様、長らくお待たせしました! そんな人、いるのか知らんけど。 ところで『言い訳』というと、政治家や芸能人が不祥事を起こしたときの会見をイメージするのは僕だけだろうか。もしくは浮気をした人間。 ああいった会見を乗り越え

        【短編】さようなら、猫の国

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        • 自作小説集
          28本
        • 空想エッセイ 昨夜の話
          2本
        • 自作エッセイ
          37本
        • 自作詩
          25本
        • 「神と人」シリーズ
          10本

        記事

          【短編】目印

          その港町を訪れたのは、俺がまだ君と出会う前だった。 小さな音楽イベントに招待されたんだ。俺は、今はもう手放してしまったベースと、文庫本、少しの酒を積んで車を走らせた。 ここからだと二時間くらいかかる。そこまで急ぐような日程でもなかったから、道中の色んなところを見て回りながら、ゆっくりその町を目指した。 途中、奇妙なことがあった。 誰もいない場所に向かって、老婆が頭を下げていたんだ。 神社の礼拝作法っていうのか?ああいう感じだよ。 二回頭を下げて、二回手を叩く。何かを唱えて、

          【短編】目印

          【短編】君はキョンシー

          彼が、キョンシーになって戻ってきた。 キョンシー(僵尸)。 中国の死体妖怪の一種。中国湖南省よりの出稼ぎ人の遺体を故郷へ運ぶために、道士が呪術で歩かせたのが始まりとか何とか。詳しく知りたい人は調べてくれ。これはそこまで詳しくなくても読める。 彼―高本くん―の葬儀を終え帰宅すると、彼は当然のように家にいた。 「おう、ひより。おかえり。」 「……どういうこと?」 私は、目の前にいる高本くんと、持ち帰ってきた位牌を見比べた。 「なんかさ、有名な道士?が、魂だけで人を生き返らせる

          【短編】君はキョンシー

          【短編】花火の夜に

          「一緒に花火を見に、お祭りに行こうよ!」 放課後、五年生になってクラスが一緒になった平岡くんに声をかけられ、僕はうろたえた。 「どうして、僕なの?」 「清水くん、花火好きそうだから。」 花火が好きそうって、どういうことだろう。悩む僕に平岡くんは続ける。 「黒い服は着てきちゃ駄目だよ。できたら、白い服を着ておいで。」 そう笑った平岡くんの顔は、西日に照らされて、見えない。 お母さんに説明して、真っ白いTシャツを着た。 「不思議な集まりでもあるのかしらね。」 ちょっとだけオカル

          【短編】花火の夜に

          【短編】彗星

          君が眠りに就いて、六千と二十九日が過ぎた。 ひどく長い時間だった。たったそれだけのことだ。僕は今日も、君の何一つ変わらない頬に触れる。19歳の頃と、変わらない。たくさんの医療機器と繋がっていることを除けば、何も。 極めて稀な病気です。 この病気になると、人間は歳をとらなくなります。 その代わりに、ある日を境に眠りに就いて、目を覚まさなくなります。それぞれの症例によって期間は違いますが、永久に目を覚まさないこともあります。 きっかけとなるような出来事で目を覚ます場合もあります

          【短編】彗星

          ずっと以前、岩泉と田野畑で買ったものが出てきた。 また行きたい。今度はもっと色々買おう。 シールの言葉は岩手弁。

          ずっと以前、岩泉と田野畑で買ったものが出てきた。 また行きたい。今度はもっと色々買おう。 シールの言葉は岩手弁。

          【短編】天ぷら定食

          天ぷらと白飯は合わないっていう人がいる。だが、天ぷらも揚げ物のひとつであるのだから、白飯に合わないはずがない。僕は天ぷらでご飯を食べるのが好きだし、この食べ方を否定されたら怒るだろう。 とにかく、僕が頼んだのは、天ぷら定食だったはずだ。 運ばれてきた定食は、この米不足の世にあるまじきほど盛られた白米と、申し訳程度に添えられた漬物。そして、岩手山ほど高く盛られた天かすだった。 「天ぷら、とは…。」 僕は愕然とした。先週までは、普通に天ぷらだったはずだ。絶妙な揚がり具合の海老、

          【短編】天ぷら定食

          モンブラン失言【毎週ショートショートnote】

          美穂はデスク周りを片付けた。今日で、この会社を去る。 入社から3年。思いがけないことだった。気軽に応募した小説が大賞を受賞し、作家になることが決まったのだ。だがそれを言い出せず、家庭の事情ということにしていた。 唯一の同期である菜緒が、送別会を開いてくれた。ケーキバイキングになったのは、酒の苦手な美穂のためだ。 「さみしいよ~。」 菜緒が涙を流す。美穂も泣きそうになった。 「美穂、これからどうするの?」 美穂は答えようとしてケーキから顔を上げる。その瞬間、視界がぐるっと回

          モンブラン失言【毎週ショートショートnote】

          【短編】長い夜とアーモンド

          目の前の男は意気揚々と、自分の推理を披露している。 「その時間、アリバイがなく、被害者のそばにいた人物はただ一人!」 そう言って、俺のほうを見た。 まず、何が起こったか説明しよう。 謎解きゲームで優勝した賞品として、俺たち7人の大学生はこの館に招待された。そのうちの一人、いわゆる「嫌われ役」だった男が殺害された。嵐のせいで携帯電話やネットは繋がらず、ここに繋がる橋は崩落した。まあ、よくあるミステリーだよな。俺も笑っちまった。 もともと謎解き好きの集まりだ。互いの腹の探りあい

          【短編】長い夜とアーモンド

          モノマネとあがり症

          人生でいちばん上手くできたモノマネは間違いなくIKKOさん。 どうも皆さん、おはようございます。 人は生涯で一度はIKKOさんになる瞬間がある(はず)。 会社の忘年会、合コン、元気がないとき。 人は心にIKKOさんを呼ぶ(はず)。僕はつらくてどうしようもないときには、大声で「どんだけ~」と言う。心と声帯にIKKOさんを召喚する。 するとどうだろう、それまでの悲しい気持ちはすべて「どんだけ~」とともに消えていく(はず)。 え? ネタがないからこんな話してるのか、って? 違う

          モノマネとあがり症

          どうかその目を閉じないでいて いつか闇を舞う、蛍の光を けして見逃さないように どんな暗闇にいたとしても あなたはあなたでいるのだと 失わずにいるその呼吸が あなたの命の証明なのだと だから、もう一度だけ 閉じた瞼を開いてみて 初夏の折爪に舞う姫蛍 その命が浮かぶ暗闇の深さが あなたの命を讃えるだろう どうかその目を閉じないでいて 闇を舞う鮮やかな数多の命が あなたの全てを讃えているから 作中に出てくる「折爪」とは、岩手県二戸市と軽米町、そして九戸村にまたがる「折爪岳

          ホラーっぽい実話たち

          「あなたが好きですあなたが好きですあなたが好きですあなたが好きですあなたが好きです……」 A4の紙いっぱいにこの文言が書かれた(正確には書かれているわけではなく、印刷されていた)ものを貰ったことがある。3枚。無記名であった。 小3か小4の頃。下駄箱に入っていた。当時の僕はビビりにビビって、すぐさま職員室に駆け込んだ。今考えると、ナチュラルにホラーだった。誰からのものだったのか、未だに知らないし、知りたくもない。 僕は幽霊を直接見たことはないのだが、ホラーな経験は意外と多い。

          ホラーっぽい実話たち

          【短編】缶チューハイ

          冷蔵庫の缶チューハイの中に、見慣れない缶があるのに気付いた。 こんなもの、買っていたかな。白い缶に青い文字で「Time」と書いてある。きっと、この間の家飲みのときに、友人の誰かが買ってきたのだろう。いつも買っているものに飽きていた僕は、ちょうどいいから飲んでみることにした。 リビングの椅子に腰掛け、テレビをつける。もうすぐ、いつも楽しみにしているバラエティの時間だ。CMをぼんやりと見ながら、缶を開けた。口に入れると、氷のように冷たく、不味い。飲み込んで、缶を見る。 「なんだ

          【短編】缶チューハイ