ナル

よろしくお願いします。 詩、エッセイ、短編、岩手紹介記事など色々書きます。 シリーズ「神と人」「空想エッセイ 昨夜の話」「いかにしてナルは振られたか」不定期更新。 日向坂46推し。

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マガジン

  • 自作小説集

    長いものからショート作品まで、いろいろ書いてみます。怖い話って書いてても怖いよね。

  • 自作エッセイ

    私、ナルが書いたエッセイと呼べるかぎりぎりの文章を集めました。しょうもないことしか書いてません。

  • 空想エッセイ 昨夜の話

    作者・ナルが昨夜体験したかもしれない、妖怪たちとの交流のお話。事実か空想かは、ご想像にお任せします。

  • 岩手のはなし

    ナルの主観で書いた、岩手県紹介記事です。岩手への興味が増す記事を目指しています。

  • 自作詩

    ナルが書いた自作の詩のようなものたちです。読んでいただけたら成仏できます。

最近の記事

【SS】違法クローン【ボケ学会】

かつて都市伝説として有名になった『ドッペルゲンガー』をご存知だろうか。自分そっくりの人間に出会うと死んでしまうという話。 22世紀中盤になって、人間のクローン作成は珍しいことではなくなった。自分の記憶を引き継がせる者、単に労働力として採用する者…さまざまな用途にクローンは使われた。 大手のクローン制作会社”CH”が違法クローンを作成していたとわかったのは、そんな時代の最中である。 「うわあ…見たくない」 警察からの連絡を受けて、僕は工事現場の映像を見ていた。僕のクローンは

    • 16番目の月(下)

      ※この作品はフィクションであり、実際の人物・団体・事件とは関係ありません。また、特定の政治的・宗教的思想を否定するものではありません。ご了承ください。 【高橋】 都内のスナック”Truth”。そこには、極僅かの人間のみが知っている地下室がある。そこに俺はいた。 「高橋さん、準備オーケーだ」 坂東がこちらを見据え言う。彼はいわゆる極道で、かつての取材で出会った。件の宗教団体に腹を立てているのは、彼らも同じだった。 「あいつらに尻尾振る奴等もいる。オモテに出て権力を手に入れる

      • 16番目の月(上)

        ※この作品はフィクションであり、実際の人物・団体・事件とは関係ありません。また、特定の政治的・宗教的思想を否定するものではありません。ご了承ください。 【藤井】 私は月を見上げた。 16番目の月。満ち足りた時を終え、欠けていく運命の月を。 その事実に気付いたのは、近年頻発する災害の復興予算について調べているときだった。大きな額が支出されているにも関わらず、被災した各地の状況が一向に改善していない。人手不足等様々な要因があるのだとしても、その進捗はあまりに遅いと感じていた

        • 不眠症浮袋【毎週ショートショートnote】

          医者は真剣な面持ちでレントゲン写真を見てから、僕に向き直った。 「ナルさん、あなた浮袋があるよ」 うきぶくろ、と言葉にしてみた。そうだったのか。だから、周りから浮いていたのか。 「これね、切除できる。そうすると不眠症も治るよ。”不眠症浮袋”って名前の、立派な病気」 なんと。予想外の嬉しさに僕の心は飛び跳ねた。 「でもね、ウキウキするようなこともなくなる」 「え?」 「ウキウキできなくなるし、浮いた話もなくなる。金が浮くってこともなくなるし、勿論カナヅチになる」

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        • 自作小説集
          70本
        • 自作エッセイ
          55本
        • 空想エッセイ 昨夜の話
          8本
        • 岩手のはなし
          1本
        • 自作詩
          25本
        • 「神と人」シリーズ
          10本

        記事

          【SS】あの場所へ

          「高瀬さんが来週転校することになりました」 それまで新作ゲームのことを考えていた僕の耳に届いたのは、あまりにも悲しい知らせだった。ちらりと高瀬さんを見ると、一瞬だけ目が合った。 高瀬さんを好きになったのは、去年の文化祭準備期間だった。 僕たちの中学は夏休みの直前に文化祭がある。 耳をつんざくほどの蝉時雨の中、模擬店の準備をしながら僕たちは毎日話をした。それまでただのクラスメイトだった彼女は、いつの間にか大切な人になっていた。 「高瀬さん」 ホームルームの後、僕は彼女を呼び

          【SS】あの場所へ

          【短編】牛蒡

          馴染みの青果店に『閉店』の張り紙を見つけて、私はため息をついた。そういえば最近はあんまり来ていなかったな、と自分の行動を反省し、来た道を引き返した。 アーケードの上の空は雨模様で、商店街の人影はまばら。流行のアイドルソングが何処かの店のラジオから聞こえてくる。 商店街の入り口に、青果店のおじさんが立ち尽くしているのが見えた。私は声をかけようとしたが、おじさんの様子がおかしいことに気付いてやめた。 おじさんの目は、商店街にいる誰のことも見ていなかった。濁ったその目はまばたき一

          【短編】牛蒡

          【短編】食卓と惑星

          「僕ね、故郷の惑星に帰らなきゃいけないんだ」 二人で夕ご飯を食べているときに、君は申し訳なさそうにそう言った。 今日のメニューは君の好きなとんかつで、私は今日の出来に自信があった。いつもより上手く揚げられたんだ、と言うつもりだった。 君が私の家に来たのは、10年前だった。当時話題になった流星群に紛れて、君は宇宙からやって来た。 犬とも猫ともつかない奇妙な姿の生き物。その上、空から降りてきて間もなく、たどたどしい日本語を話し出した。 間違いなく、宇宙人だ。私はその生き物を抱え

          【短編】食卓と惑星

          長距離恋愛販売中【毎週ショートショートnote】

          私は列車の車窓にすがり、涙を流した。 「また会えるわ、愛してる!」 彼は息でガラスを曇らせ、「あいしてる」と書いた。汽笛が鳴り響き、駅員が私の体を車体から引き離した。 「愛してる、愛してる!」 列車は戦地へと彼を運んでいく。私は膝から地面に崩れ落ちた。 「カット!!」 監督の声で、私たち演者は現実へと帰って来た。 「明里ちゃん、いい芝居だったよ」 監督は軽薄な言動には似合わず、演技を見る目に定評がある。裏表もない人なので、素直に褒め言葉を受け取ることにする。 「ありがとうご

          長距離恋愛販売中【毎週ショートショートnote】

          ある書店の話

          ほんの数日前のことである。 僕が大好きだった書店が閉店したらしいとの報に接した。『接した』というのはXでその情報を見かけたからであって、直接行けたわけではないから。 個人経営の書店ではない。いわゆるチェーン店。しかも、ショッピングセンターの一角にあったその店舗を僕は愛していた。 というのも、こんなエピソードがあったから。 僕は田牧大和さんの『鯖猫長屋ふしぎ草紙』シリーズのファンである。 ある日僕は、その新刊を買うために店に立ち寄った。 まっすぐ新刊コーナーに向かうが、平積

          ある書店の話

          【短編】ふたりの。

          見上げた空は白く濁っている。雪が瞼に触れた。 あまりにも冷えた冬の空気に、少しだけ笑いがこみ上げた。残酷だ。世界はいつだって残酷だった。 私の名前を呼ぶ声がする。今は聞こえるはずもない、あの澄んだ声が。 同じ名前が、私たちを繋いだ。そうして出来た絆を、私は今も探している。 海を見下ろしながらあの場所へと歩く。はしゃいでいた君を思い出す。 あのときは桜が綺麗に咲いていた。花びらが舞っていたあの場所にも今はきっと、真っ白な雪が降り積もっている。 もうすぐ世界は、その活動を停止

          【短編】ふたりの。

          缶蹴り恋愛逃走中【毎週ショートショートnote】

          妻が家を出て行って、もうすぐ2週間になる。 「懐かしいアルバムを御覧なさい」 置手紙には、それだけ記してあった。 幼馴染から恋になった。どちらから告白したのかさえ忘れた。 私はアルバムを見返しながら考えていた。どうすれば、君は帰ってくる。 ある写真が目に留まった。私と妻、弟たちの5人で缶蹴りをしたときの写真。 セピア色の景色を背に、幼い頃の妻が笑っている。 この頃には、もう君が好きだった。缶蹴りから始まった恋は愛になった、はずだった。 「缶蹴りの後は、あの神社まで走ろう!

          缶蹴り恋愛逃走中【毎週ショートショートnote】

          さんぽ・盛岡編

          前回『田舎編』に続いて、今回は盛岡編をお届けする。 とはいえ、僕が盛岡にいたのは結構前のことなので、最新の情報ではないことはご容赦いただきたい。 僕の盛岡さんぽは、それなりの目的をもって始まる。 具体的に言うと「気分を入れ替えたい」という目標だ。要はただのリフレッシュだ。気分転換だ。気まぐれ(以下略) アパートを出て、盛岡駅方面に向かう。 当時暮らしていた場所からだと、それなりの距離になる。そして、ルートが複数ある。そこはその日の気分で決まる。 駅に用事があるわけでもない

          さんぽ・盛岡編

          【SS】ある写真家の願い【#シロクマ文芸部】

          「紅葉から人間を消してくれ」 目の前の男は血走った眼でそう言った。 「世界から人間を消せばいいんだな」 私は神。そのくらいのことは容易い。残念なことではあるが、この男一人を残して人間を消滅させてやろう。そう思った矢先、男は首を振って否定した。 「紅葉シーズンだけでいいんだ。なんなら、景勝地以外には普通にいてもいい。それに、モデルは何人かいてくれないと……」 男はぶつぶつと呟きだした。フォトグラファーだというこの男は、完璧な紅葉写真のために人間を消滅させたいらしい。彼

          【SS】ある写真家の願い【#シロクマ文芸部】

          【SS】W.W.W

          第三次世界大戦間際とまで後に言われるほどに、世界情勢は悪化していた。各国首脳や国連はこれ以上の紛争を回避するため、知恵を絞った。戦争以外の手段での国際紛争の解決策。もはや国際法すら存在意義を失っているこの世界に、そんなものはあるのだろうか。 国連職員であるジョナサンは、別件で盛岡に来ていた。 そこで彼が目にしたのは、さまざまな争いを『わんこそば』ですべて解決する盛岡の民だった。個人的ないざこざ、不良集団の抗争、痴情のもつれ。『わんこそばをどれだけ食べられたか』でそのすべてが

          【SS】W.W.W

          【短編】ハッピーエンド

          曇天を見上げた君の睫毛に、今年初めての雪が触れた。体温で溶かされた白い結晶は僅かばかりの雫になり、君の頬を流れていった。 「…ごめんね」 呟くようにして君が言った謝罪が僕に向けられたものだと気付くまで、静寂が僕らの間を流れていった。 「謝るようなことじゃ、ないよ」 つらいのは間違いなく君の方だと言うべきなのに、僕の口は機能不全を起こしている。もし僕がAIだったなら、もっと上手く君に寄り添えたのだろうか。何を言えば、君の瞳は僕を映すのだろう。何を言えば、あの日々が戻って

          【短編】ハッピーエンド

          【短編】夢の朝食

          枕元の照明を消して、私はようやく私に戻った。 生きづらいと言うほどでもないが、窮屈な日々。ほんの少しだけ噛み合わないことばかりの日々に、心が疲れているのを感じていた。 目を閉じても、眠りに就けない。また照明を点けて立ち上がり、睡眠薬を服用した。 15分ほどして、ようやく効果が出てきたようだ。目を瞑ると、意識は次第に遠のいていく。 「夏菜実、そろそろ起きなさい」 眠い目をこすりながら、私は身体を起こした。珈琲の香りがする。辺りを見回す。眠る前と景色が一変していた。ログハウス

          【短編】夢の朝食