情報を思い出すことで記憶に残る「検索練習」
小テストの回数を増やせば最終的なテストの点数が上がるとい趣旨の論文があったのでメモ(1)。
これまでの効率的な学習方法について検討した研究を見てみると,以下のような行動が記憶の定着率を上げ,テストの点数を上げることが分かっています。具体的な研究の例を挙げると以下の通りです。
・学習と再学習,またはテストの間隔を設けることでよく記憶に定着する(分散学習,2)
・手を握ることで記憶力が高まる(3)
・絵を描くとよく覚えられる(4)
・他人に教えるつもりで学習すると頭に残る(5)
このようにちょっとした工夫が学習の効果を高め,テストの点数を上げることが分かっています。今回紹介する論文は小テストの回数を増やすことで記憶の定着率が高くなることを教えてくれます。
2008年にカリフォルニア大学の教授であるシャナ・カーペンターらは小テストの効果について調べるために実験を行いました。
実験の対象となったのはオンラインで募集した大人44名でした。
実験参加者をランダムに2つのグループに分け,PC上位に60組のスワヒリ語と英語のペアを2秒間提示し,記憶してもらいました。その2つのグループには再学習の仕方に以下のような違いがありました。
<グループ1>
スワヒリ語だけを2秒間見せ,その間にペアの英語を思い出してもらう
<グループ2>
2秒間スワヒリ語と英語のペアを見て,再び覚える
このように①片方の単語を見て,もう片方を思い出す,②再び単語のペアを見て記憶するという再学習の方法に違いがありました。そして直近で5分後から最長で42日後までの間隔を空けて単語の記憶を問うテストを行い,その点の差を調べました。
実験の結果,片方の単語(スワヒリ語)が提示され,もう片方の単語を思い出した場合には,再度単語のペアが提示され記憶した場合と比較して,最終的な記憶テストの点数が高くなりました。またその最終の記憶テストの点数の差は42日後にも見られました。
この実験ではただ記憶するだけでなく,記憶の検索することによって長期的な記憶として頭に定着することが示されました。
過去の研究を見ても,再学習が必ずしも記憶の定着に効果的でないことが分かっています。
・教科書の再読は効率的でない(6)
・学習の間隔が狭い集中学習は記憶に定着しにくい(2)
このように記憶力を測るテストにおいて重視すべき点は記憶できているかではなく,記憶を検索し思い出すことが出来るかであり,記憶力を問われるテストの勉強をするのであれば小テストを繰り返した方が効率的であると言えるでしょう。
(1)Carpenter, K., et al. (2008). The effects of tests on learning and forgetting. Memory & Cognition, 36, 438-448.
(2)Rohrer, D., Taylor, K., Pashler, H., Wixted, J. T., & Cepeda, N. J. (2005). The effect of overlearning on long‐term retention. Applied Cognitive Psychology, 19(3), 361-374.
(3)Propper, R. E., McGraw, S. E., Brunye, T. T., & Weiss, M. (2013). Getting a grip on memory: Unilateral hand clenching alters episodic recall. PloS one, 8(4), e62474.
(4)Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2016). The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Quarterly journal of experimental psychology (2006), 69(9), 1752–1776.
(5)Mueller, P. A., & Oppenheimer, D. M. (2014). The pen is mightier than the keyboard: Advantages of longhand over laptop note taking. Psychological science, 25(6), 1159-1168.
(6)Callender, A. A., & McDaniel, M. A. (2009). The limited benefits of rereading educational texts. Contemporary Educational Psychology, 34(1), 30–41.
■使える脳の鍛え方成功する学習の科学/ピーター・ブラウン (著), ヘンリー・ローディガー (著), マーク・マクダニエル (著), 依田 卓巳 (翻訳)
■Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ/アーリック・ボーザー (著), 月谷真紀 (翻訳)
■脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!/ベネディクト・キャリー (著), 花塚 恵 (翻訳)
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