営業成績が安定しないメンバーを変えた”たった1つの方法”/しくじりマネジメント
営業成績が向上し、成長してきたと思ったら、次の期は目標が未達。そして、また次の期には達成するが、また・・・。こんな状況を繰り返し、なかなか業績が安定しない。本人にとっても成長感を得られなくて、自己肯定感が高まらず、年次はあがっているのにどこか弱々しい。
そんな部下(以下、メンバー)をマネジメントした経験したことはありませんか?
今日は業績が安定しないメンバーの要因は何か。上司はマネジメント上、どんな関わりをするのが良いのか、僕の失敗とそこから学んだマネジメントノウハウをお伝えしたいと思います。
勘違いしていた成功体験
一生懸命頑張っているけど、なかなか結果に繋がらないAくん。そんな彼に大きなチャンスが訪れました。ある大手企業から、「プロジェクトを立ち上げることになったので、どのような支援をしてくれるか提案をしてほしい」と依頼を受けたのです。これまでパッとした成果をあげられてなかった彼にとっては千載一遇のチャンスです。
メンバーの成長には”成功体験を積むこと”が大事である。管理職を担う方であれば、一度は聞いたことがある通説だと思いますが、僕自身も成功体験をメンバーに与えることにはこだわっていました。Aくんに舞い込んだ機会は組織の業績が厳しい状況でもあったし、彼にとって非常に良い経験になるだろうと鼻息を荒くしたことを覚えています。
しかし、取り組み始めたものの、お客様の要望値は高く、彼の経験だけでは顧客の期待には応えきれません。どのように関わるか悩みましたが、僕自身が手を動かしてしまうと仕事を奪ってしまうことになる。でも、失注してしまっては彼にとってマイナスな経験になってしまう。
そんな葛藤を抱えつつ、出した結論は、手を動かすことはせず、「こうした方が良いのではないか」「それは違和感がある」と口だけを出すことにしました。
いやいや、手が口に変わっただけで、ダメに決まってるだろ。
そんな突っ込みが聞こえてきそうですが、切羽詰まった実際の場面ではこれでも一生懸命考えた結論でした。結果はご想像に容易く、案件そのものは受注できましたが、メンバーにとって良い経験にはなりませんでした。
改めて振り返ったときに、なぜそのようなかかわり方の選択をしたかというと『大型受注や新規受注等のような象徴的な案件を受注することが営業の成功体験には重要だ』と思っていたからです。
つまり、成功体験とは成果をあげることだと勘違いをしていたのです。
業績達成や営業成績は誰の成果なのか
前述のとおり、Aさんの案件は無事に大型受注ということのなったのですが、全く良い経験にはなりませんでした。
僕「受注おめでとう」
彼「いえいえ、仮谷さんに支援してもらったおかげです」
僕「いやいや、そんなことないでしょ」
彼「ほとんど僕は何もできなかったです・・・」
僕「そんなことないけどな・・・」
そんなやり取りをした僕は何ともいえない気持ちになりました。Aさん自身が自分の頑張りや努力に満足感を得られていないことはもちろんですが、僕自身も「Aさんの頑張りポイントはここだったよね」ということを具体的に事実ベースで伝えることができなかったからです。
人は成功体験によって、成長するのではありません。成功体験を通じて、自分の特徴や強みを生かすことで成長するのです。メンバーが頑張ったポイントを伝えることができなかった僕がやったことは結局何だったのか?
それはメンバーの機会を奪っただけだったのだと思います。
管理職になると自分にスポットライトを当てるべきではありません。メンバーにライトが当たりやすい環境をつくってあげる必要があります。それにもかかわらず、メンバーの成果ではなく、上司の成果となってしまったのだと思います。
よくドラマなんかで部下の成果を奪うダメ上司を演じているのを見ることがありますが、僕自身の今回の選択・行動は同じことをしてしまっていました。むしろ、無自覚だったことを考えるともっとタチが悪いかもしれません。
では、どうすれば良かったのでしょうか。
マネジメントにおける”際(きわ)”
一言で言うと、バランスが大事だったのだと思います。僕はこれを”際(きわ)”と表現しています。
マネジメントをしていると、あらゆる場面で二律背反になる状況がおとずれます。その両面の際を理解し、意思決定することが大事だと思っています(この話の詳細は別の機会にさせてください)
今回の二律背反とは、
①任せてもらっているとメンバーが感じられること
②顧客の期待に応えられるクオリティ
の2つをどのように両立させるか、です。
どちらを選ぶべきか正解はありません。なぜならメンバー1人1人によって感じ方は異なりますし、全く同じ場面は二度とないからです。そして、二者択一ではなく実際の場面では『AよりのB』『少しだけBの要素を入れたA』のようにその場や相手に応じた最適を判断することが求められます。
もっと言うと、その答えを出すにあたり、上司はあらゆる場面で判断が求められますが、分かりやすくAにするかBにするかという”問い”としては訪れません。刻一刻と流れる時間の中では気づかぬうちに判断をしていることも多くあり、”判断している”という自覚をすることができないと、正しい判断もできません。
上司は、問いを認識し、二律背反の際を見極め、最適解を出すことが求められます。
選択権をメンバーに与える
その後、Aさんに対して、どのように関わったのか?
そのたった1つの方法は何か?
それはあえて受け身でアドバイスをした。という方法でした。メンバーが考える前にアドバイスをするのではなく、考えてきたものに対して、アドバイスを求めてきたときに「こういう考え方もあるよ」というアイデアを渡す。という方法でした。そして、そのアイデアを選ぶかどうかもAさんに任せるようにしました。
「どうしたらいいですか?」と答えを求めた場合には「こうすれば良い」ではなく、あえて複数の回答をすることで本人に選ばせるということをしました。
そうしたところ、僕の意見を取り入れた提案内容も自分ごとに変わったのです。
これまでなら、周囲のメンバーから「なんで、そういう提案したの?」と聞かれると「仮谷さんにそうアドバイスをもらったので・・・」と回答していたものが、「僕はこう考えたからです」と自分で考えた回答に変わりました。
大きな変化です。
上司から正解をもらう。上司の言われたとおりにする。のではなく、上司のアドバイスをヒントに自分で考えるようになりました。その後、少し時間はかかりましたが、安定的に成果を残せるようになりました。
上司の役割はメンバーの主体性を引き出すことです。一人一人その引き出し方は異なりますが、それを見つけること、見つけようとすることが大事なのだと思います。
終わりに
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