メンバーの成長のために言うべきことと言わないこと/しくじりマネジメント
新人や若手メンバーに対して、良かれと思ってたくさんのフィードバックをした経験はありませんか。相手のためを思ったら、何でもフィードバックすべき。確かにこの考え方は間違っていません。伝えないと伝わらないし、相手の成長機会を奪うことになります。
ですが、学ぶ内容によってはタイミング・順序というものがあることも事実です。部下(以下:メンバー)を抱える上司の皆さんには、僕のした失敗とそこから得た教訓について、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
また、職場に新人や若手メンバーがいる先輩社員の皆さんにも参考になれば幸いです。
良かれと思って伝えたのに・・・
ある成長意欲が高いメンバー。バリバリ仕事ができるようになりたいと強い意志を持っていました。
僕の部署に配属された以上は彼の「成長したい」という意思を大事にしたいし、育ててあげたいと思っていました。そこで、1on1の時だけではなく、日常の中で気づいたことは「これができていないから、こうした方が良い」「そこはそのやり方ではダメだから、この方が良い」等と彼のためを思って気づいたことは全部を伝えました。
それに対して、真摯に受け止めようとしてくれましたし、頑張っていることは分かっていました。ですが、なかなか僕の求めるレベルには到達しない・・・
そんな状況の中、ある時、そのメンバーから言われたのは、
「もうきついです・・・」
「成長できる気がしません・・・」
「え゛え゛・・・!!!」(心の声)
あの意欲はどこにいってしまったのか。成長したいんじゃなかったのか。
確かにまだまだ僕が求めるレベルには足りないものの、成長のために必要なことはたくさん伝えてきたではないか。
僕自身も頑張ってきたことを否定されたようで、打ちひしがれたことを覚えています。
思っていることを言わないのは悪なのか
冒頭にもお伝えした通り、感じたこと、思ったことを伝えるのは確かに正しいことですし、間違っていません。むしろ必要なことだともいえるでしょう。ですが、それらを全部伝えるのは本当に相手のために正しいことでしょうか。
例えば、僕は会社で戦略を作ることがあります。その内容を日本の名だたる経営者がもしも見てくれて、思ったことを”全部”フィードバックをくれるとしたら、僕はどうなるでしょうか。
とんでもない量のフィードバックを受けて、有難いことではありますが、何の学びにもならないと思います。こんなものは戦略と呼ばないとボコボコにされるサンドバックになるしかないでしょうね笑
そもそも、相手にフィードバックするのは何のためでしょうか。
それは成長してもらうためだと思います。成長して欲しいから伝えるのだと思います。
もし今、心のどこかで、「自分のストレスをぶつけるために伝えてしまっているかも・・・」「昔の自分を見るようで、それを否定するために伝えているかも・・・」等と思った方は注意が必要です。それは単なるエゴです。
あくまで相手の成長のためを思って伝えることが大前提です。
ではもう1つ質問です。成長とは何でしょうか。
それは目指す状態と現在のGAPを埋めていくことにあります。
もし先輩社員や上司にとって、メンバーの目指す状態が高くなりすぎると当然GAPは大きくなりすぎます。イメージをお伝えすると、新人メンバーが目指す状態を上司である自分と同レベルになることに設定してしまうと、当然GAPは大きくなります。そのGAPを埋めるための方法(つまりフィードバックする内容)は多岐にわたり、大量のフィードバックが必要になるでしょう。人間そんなに一気に覚えられませんし、変われません。
だからこそ、今自分が相手に伝えていることはエゴになっていないか、メンバーにとってハードルが高すぎることはないかを常に意識することが必要です。
あなたなら、何をフィードバックしますか?
ここであるケースで考えてみたいと思います。
入社半年の営業メンバー。まだまだ知識・経験は足りませんが、ノリが良く明るく気さくでお客様にも好かれています。
ある時、お客様から、大事なプレゼンの機会をいただきました。顧客の現状を押さえ、お客様の状況を見立てて課題を設定し、解決策としてのソリューションを仕立てる必要があります。
自分なりに頑張ってみたいと知識や経験の不足を努力で補い、一人で企画書を作成しました。プレゼン前の3日間は徹夜をしながら頑張ったものの、力及ばず、結果は失注しました。
本人は悔しい想いもありつつ、次に繋げたいとやりきった爽快感はあり、適切に次に向けて頑張ろうとしています。
確かに僕から見ても、
企画書のフォントがバラバラ(A)
ページ構成にストーリー性が足りない(B)
スケジューリングが大雑把すぎて現実味が湧かない(C)
顧客の問題意識の背景にある事実把握が甘い(D)
仕立てたソリューションはありきたりで想像を超えない(E)
等と気になることは盛りだくさんです。例えば、こんな状況の場合、あなたなら何をフィードバックするでしょうか。
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僕なら
『なぜ一人で取り組もうとしたのか』ということです。
決して一人で取り組むことがダメだということが言いたいわけではありません。それはお客様のためを思ったのか、自分のためを思ったのか、ということをフィードバックします。
えっと思った方がいるかもですが、A~Eの中から選んでくださいね。とは伝えていませんからね笑
はい、意地が悪いです。失礼しました。
もちろん、これが正解なわけではありません。様々な考え方があるし、いろんな選択肢があると思います。僕がお伝えしたかったのは、フィードバックの際には『技術課題』と『適応を要する課題』に分けることが大事ということです。
「仕方ないこと」と「仕方なくない理由」
A~Eの項目がこのメンバーにとって課題ではなかったわけではありません。ですが、1つ1つ”なぜできなかったのだろうか”ということを掘り下げた時に「経験がないから」「そのスキルを知らなかったから」となることについては、正直仕方ないですよね。
例えば、企画書のフォントがばらばらであることは揃えることがマナーであること。揃えていない企画書はそれだけで読む気がなくなるような人もいること。これを知らなければ、別にいいかと思ってばらばらのまま提出しても仕方ありません。
また、スケジューリングが大雑把すぎることも、何かに取り組む際にどれくらいの期間・時間がかかるのか見立てができなければ、仕方ないでしょう。
ソリューションがありきたりになることも、事例を知らなければ、思いつくことはとても容易なことではありません。
これらは『技術的な課題』と捉えれば、大した問題ではありません。文字通り仕方ないわけです。ですが、”仕方ない”で片づけて良いかというと、そんなはずはありません。なぜ仕方ない状況になってしまったのかを考える必要があります。
今回のケースについて、どのように考えたかというと、このような状況になってしまった理由を相談をしなかったからだと僕は結論づけました。
もっと言うと、相談しようとしなかったからであろうと考えたわけです。
では、なぜ相談しようとしなかったのかというと、一人で企画を作る人が偉いと勘違いしていたから(してそうだから)です。これが『適応を要する課題』であり、もっとわかりやすく言うとスタンス・考え方の課題です。
(※あくまで仮説のため、そうだと決めつけず本人の認識を確認の上で伝えることが前提です)
技術的な課題は基本的には時間が解決してくれますが、適応を要する課題とは時間がどれだけあっても解決してくれませんし、そこに気づいても明日には解決するかもしれないし、1年後かもしれません。それだけ癖づいた考え方や固定観念や習慣を変えることは難しいことです。
特に新人・若手にフィードバックする際は、なぜを繰り返して抽象化したり、致命的なことに着目することで、何でもかんでもフィードバックするのではなく、適応を要する課題にフィードバックすることを絞り込むことが大切です。
技術的な課題についても、フィードバックする際に「単なるスキルだから覚えればいいだけなんだけどね」とか「経験の問題だから今は問題視しなくていいんだけどね」等の枕詞をつけてあげるだけでも、メンバーにとっては「あれもこれもできていない・・・」という状態を防げるかもしれません。
技術的課題と適応を要する課題に分けて、メンバーと会話することを意識してみてください。
終わりに
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