花火 ❲詩❳
ドン! と、小気味良い低音が
夏の夜空に、こだまする
しゅるしゅるという音が天に向けて上昇し
漆黒の闇の彼方に、パッ!と大輪の花が咲く
瞬きするのさえ惜しむように
目を見開く
この世の美を集結させたかのような
そのきらびやかな姿を
息絶えるまでの瞬時の様子を
じっと見届ける
赤、緋、橙色の花弁は思い思いの方向に咲き乱れ
目もあやに夜空を焦がし、瞬き
極限まで広がると
次第に花弁が重みに耐えかねるかのように
ゆるやかに落下し始める
瞬間、遠近感が無くなった
頭上に花火の残滓が降りかかる
そう感じた
私は顔を上げたまま、思わず後ずさる
火の粉はゆらゆらと
散りゆき、きらめき
その余韻を引きずりながら
ゆるゆると闇に溶けてゆく
バラバラ……、という残響を残して
もう少し、もう少しだけ
目に留めていたい
やがて、火の粉は闇に飲みこまれ
跡形もなく消え去る
一時、目蓋に消えた花火の色彩が入り乱れ
残像となって、チカチカと点滅する
が、次第に影を潜める
その時、私は気づいた
花火は散り際が美しいということに
そして、人の一生に似ているということにも
儚い
実体がない
一炊の夢
花火と人の一生が重なり合う
まるで、諸行無常を演じているよう
だけど
儚くても
思う存分人生を開花させて
生を謳歌したい
そして、潔く散っていきたい
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