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わたしの本棚

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#本屋大賞

わたしの本棚102夜~「52ヘルツのクジラたち」

わたしの本棚102夜~「52ヘルツのクジラたち」

 2021年本屋大賞受賞作です。今年は、ノミネート作品のなか、宇佐見りん氏『推し、燃ゆ』(河出書房)、加藤シゲアキ氏『オルタネート』(新潮社)、伊坂幸太郎氏『逆ソクラテス』(集英社)を読みました。

 3作品とも面白かったのですが(特に『逆ソクラテス』は大好きな作品でした)、それらに比べても、受賞作『52ヘルツのクジラたち』は、一番、感情を揺さぶる内容であり、泣かされました。ラストへの収束は、少し

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わたしの本棚39夜「そしてバトンは渡された」

わたしの本棚39夜「そしてバトンは渡された」

 「MAGMA」烈の巻(幻戯書房、平成30年4月発行)の特集座談会、「二十代の書き手は何を表現したいのか」は、村上先生を司会として日大芸術学部出身の方の座談会ですが、そこで、逆に若者は何を読むのかという談がありました。読書離れした若者が読むのがゲーム感覚のもので、ライトノベル、ファンタジーだという。そして、社会派や純文学と違って、読んだ人が幸せになる小説を好むという。ファンタジー色が強かった201

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わたしの本棚34夜~「かがみの孤城」

わたしの本棚34夜~「かがみの孤城」

 2018年本屋大賞受賞作品ですが、この年、柚月裕子さんの「盤上の向日葵」に感動したわたしは、「盤上の向日葵」だと思っていました。この作品は、ノーマークで、慌てて、ママ友さんに借りて読みました。そして、はからずも納得したほどです。辻村深月さんの作品は、今秋話題の「朝が来る」にしてもそうですが、必ずしもハッピーエンドではないのですが、後味はいいです。中学生を扱ったこの作品、ママ友さんの間で賛否別れま

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わたしの本棚33夜~「蜜蜂と遠雷」

わたしの本棚33夜~「蜜蜂と遠雷」

 ☆「蜜蜂と遠雷」恩田陸著 幻冬舎文庫 803円(税込み、上下あり)

 ピアノコンクールの舞台裏、若き4人の天才ピアニストたちのコンクールにかける思い、人生を描いた作品です。音楽コンクールの4人の候補者と選考委員の悲喜こもごもを描いて、そこから、人生を照らす手法は、ありふれているものの、丁寧に描いて好感でした。直木賞と本屋大賞を同時に受賞という快挙の作品でもあり、石川慶監督で映画化もされました。

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わたしの本棚25夜~「流浪の月」

わたしの本棚25夜~「流浪の月」

 毎年、本屋大賞の受賞作品は楽しみに読んでいます。書店員さんが選ぶというのが良くて、一般の読者の感情に共感する作品が選ばれることが多いから好きです。ただ、今年の作品、わたしには少し生き苦しすぎました。文章上手く、一気に読ませますが、繊細すぎて痛々しく、わたしは、どちらかと言うと、川上未映子著「夏物語」の明るい貧乏のバイタリテイの方が好きでした。

☆「流浪の月」凪良ゆう著(東京創元社)1650円(

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