コミュニケーション・スキルの低いかおすは、なぜ出会って早々に小夢らと親しくできたのか?|『こみっくがーるず』(6)
本記事は、アニメ「こみっくがーるず」を徹底分析する特集の……第6回である★
第1回からご覧になることをオススメします!
今回のテーマは……!
前回、かおすの抱える「対人恐怖」について詳しくご説明した。
すなわち、かおすは「家族のように特別親しい人」以外の人と付き合うのが苦手だ。
……が!
小夢ら寮生とは出会ってすぐに打ち解けている!
かおすのことだから、親しくなるまでに1か月くらいかかりそうな気がするのだが……一体なぜそんなことができたのだろう?
本記事の目標は、この理由を明らかにすることだ!
※「対人恐怖」ゆえにすぐに奇声を発し、泣き出してしまうかおす。
「距離」と「コミュニケーション・スキル」
しょっぱなから堅苦しい話で恐縮だが……まずは「距離」と「コミュニケーション・スキル」についてご説明したい。
私たちは普段誰かと交流する時に、無意識の内に相手との「距離」を測り、それに合わせて適切なコミュニケーションを行っている。
例えば……一般的には、最も「距離」が近いのは「家族・恋人」だろう。
そんな家族や恋人との「適切なコミュニケーション」といえば……内容は多様。ごくごく些細なことから、人生における重大事まで様々なことを話すはずだ。
言葉づかいは、多少乱暴でも許されるだろう。
むしろ、敬語や遠回しな表現を使っていると、何か隠し事でもしているのではないかと不審に思われてしまう。
家族や恋人の次に「距離」が近いのは、「親友」だろうか。
親友とは、友人の中でも特に親しい人を指す。
とはいえ、家族や恋人と比べれば、多少なりとも気を使うのが一般的だろう。
例えば、給与や財産などのお金の話、家族内のトラブルなどについては、どれほど親しくてもなかなかストレートには話しづらいものだと思う。
そして……これが「他人」となると、グッと「距離」が遠くなり、ルールやマナーに則ったコミュニケーションが求められるようになる。
例えば、偶然同じ電車に乗り合わせただけの相手に、人生相談を持ちかける人はいないだろう。
何か話しかける時にも、「突然すみません。ちょっとよろしいでしょうか?」なんて気を使うはずだ。
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こうした「距離」は、以下のように整理できる。
ただ、これは模式図であり、実際にはもっと細かく分かれているだろう。
例えば、「恋人」と言っても、交際を始めたばかりの頃の「距離」と、結婚直前の「距離」、あるいは喧嘩別れしそうな時の「距離」には大きな差があり、そして「適切なコミュニケーション」もそれぞれ異なってくるはずだ。
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さて……このように、相手との「距離」を測り、それに応じて「適切なコミュニケーション」を選択する力。
ここでは、これを「コミュニケーション・スキル」と呼ぶことにしよう。
私たちは、いつ、どのようにしてコミュニケーション・スキルを獲得するのか?
はて。
それでは、私たちは一体いつ、どのようにしてコミュニケーション・スキルを身につけるのだろうか?
一般的には……成長過程において様々な人と交流を重ねる中で、コミュニケーション・スキルを獲得していくと考えられる。
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例えば学校で同世代の友人と付き合う中で、「『友人』という距離」を知り、「『友人』との適切なコミュニケーション」を学んでいく。
「『友人』というのは、『先生』よりもざっくばらんに付き合うべきものなんだな」、「ただ、『家族』のようにべったりするのは違うようだ」なんて具合だ。
同様に、先輩や後輩と接する中で、「『友人』と『先輩』は別もののようだ。どれだけ親しくなっても、多少の遠慮は必要なようだぞ」なんて学習していく。
これは、ご自身の経験を振り返れば、感覚的にご理解いただけることだと思う。
例えば、以下のような俗説を聞いたことがあるだろう。
これらはすべて、「コミュニケーション・スキルは、人との交流を重ねる中で獲得されるものである」ということを意味している。
コミュニケーション・スキルが低い人からすれば、世界には2種類の人間しかいない
ここまでコミュニケーション・スキルについてご説明してきたが……世の中にはスキルの高い人と、そうでない人がいる。
スキルの高い人は、相手との「距離」を正しく把握し、「適切なコミュニケーション」をとることができる。
彼らからすれば、世界には様々な人がおり、その数だけ「距離」と「適切なコミュニケーション」がある。
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一方、スキルの低い人は、「距離」を正しく把握できない。
あるいは把握できたとしても、「適切なコミュニケーション」がわからない。
そして「スキルが低い」といっても様々なレベルがあるが……著しく低い場合には、自分以外の人を2種類に分けて把握しているようだ。
人類は70億人もいるというのに、そのすべてをたった2種類に分け、2種類の「距離/コミュニケーション」で乗り切っているのだ!
その2種類とは?
すなわち……「家族のように親しい人」と「敵かもしれない他人」である。
もちろん彼らも、世の中には様々な人がいることを知っている。
しかし繰り返しになるが……彼らは、相手がどのような「距離」にいる人なのか把握できないし、把握できたとしても、どう付き合えばいいのかわからない。
だから結局彼らにとっては、世界には2種類の人間しかいないのだ。
「コミュニケーション・スキルが低い」とは、すなわち「距離/コミュニケーションのバリエーションが少ない」ということ
ところで……コミュニケーション・スキルが極めて低い人は、以下のようにふるまうことがある。
あなたは、彼らがなぜこうしたふるまいをするのか、おわかりだろうか?
答えは簡単。
彼らにとって、世界には「家族のように親しい人」と「敵かもしれない他人」しかいないからだ。
「敵かもしれない他人」ではない以上、それは「家族のように親しい人」なのだ。
だから馴れ馴れしくなる。
一方、「家族のように親しい人」でなければ、それは「敵かもしれない他人」だ。
だから関係を遮断してしまう。
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つまり、コミュニケーション・スキルが低いというのは、「距離/コミュニケーションのバリエーションが少ない」ということなのだ。
コミュニケーション・スキルが著しく低い人は、「家族 or 敵」の世界で生きている(まるで戦国時代だ!)。
「親友」とか「友人」とか「知人」とか、そういった「距離」が存在しないのだ。
かおすにとって、小夢らは「友人」ではない。「家族」だ!
※泣きべそかおす。
以上、長々とご説明してきたが……ここからが重要!
すなわち!
「人と接するのが苦手で、対人恐怖を抱えているはずなのに、小夢らとはすぐに親しくなる」という一見不可解なかおすのふるまい。
これは、ここまでご紹介してきた「コミュニケーション・スキルが極めて低い人に見られるふるまい」そのものだと思うのだ。
まずは、具体的なエピソードを見てみよう(以下はすべて第1話)。
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かおすが、小夢と出会って直後のこと。
かおすは「ワーッ!」だの「あばばばばば!」だのと奇声を発し、落ち着かない。
じつにかおすらしい!
……が!
その後、すぐに2人は打ち解ける!
そしてここでご注目いただきたいのは、出会ったばかりの2人が随分とツッコんだ会話をしているということだ。
例えば……かおす「担当編集者から、『あまりにも人間を書けないけど、ちゃんと友だちいますか?猫とか虫とかしか話し相手いないのでは?』とか言われて……ズバリ、図星!」。
あるいは……かおす「私、この先、生き残れるのか不安なんです……」。
これが、出会ったばかりの相手とする会話だろうか?
家族か大親友とするようなヘビーな話に見えるのだが……。
その後、残り2人の寮生(琉姫、翼)も合流するが……やはりかおすは最初から親しげに接している。
あっという間に、家族のような仲よし4人組のできあがりだ!
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既にお気づきの方もいると思うが……解説させていただく。
まず、かおすはコミュニケーション・スキルが低い。それも、相当に低い(詳細は前回)。
そんな彼女は、人びとを「家族のように親しい人」と「敵かもしれない他人」の二元論で把握している。
※補足:担当編集者(編沢)への態度を見ると、実際にはもう1つバリエーションがありそうだが、ここでは話を単純化するためにこの2つしかないということにしておく。
そして小夢ら3人は、じつにいいヤツだ。
かおすに対して優しく親切で、そして気さくに接する。
その結果……かおすは判断したのだ!
「この人たちは『敵』ではない」、と。
そして「敵ではない」ということは……そう!「家族のように親しくしていい人」ということになる!
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つまり!
ここまで、「かおすはコミュニケーション・スキルが極めて低い。それなのに、小夢らとは出会って早々に親しげに付き合っている。……おかしくないだろうか?」と申し上げてきたが、この考えが誤りだったのだ。
話はまったく逆だ!
コミュニケーション・スキルが極めて低い……だからこそ!出会って早々に知人、友人、親友といった「距離」を全部すっ飛ばして、「家族」になってしまったのだ!
むしろ、かおすが適度にコミュニケーション・スキルを持っていたら、こんな風にはなっていなかったはずだ。
小夢のような極端にコミュニケーション・スキルが高い人は例外として、普通は「他人 → 知人 → 友人 → 親友」と距離を縮めていくはずなのだから。
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そして、このように考えてくると、かおすが出会ったばかりの小夢に対して、「友だちがいない」とか「この先、生き残れるか不安」なんてヘビーな話をしたのも納得できる。
……だって「家族」なのだから!
そりゃヘビーな話をすることだってあるだろう!
まとめ
最後に、前回、そして今回の議論をまとめよう。
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つまり、かおすと小夢らの関係は、「友人」や「仕事仲間」なんてレベルではない(かおすは、そんな適度な関係を築くことはできないのだから)。
彼女らの関係、それは「家族」だ!
「疑似的な家族」を形成しているのだ!
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