「そのキャラらしくない行動」をいかにして正当化するか?|『ありふれた職業で世界最強』に学ぶテクニック
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本記事では、「ありふれた職業で世界最強」に【「そのキャラらしくない行動」を正当化するテクニック】を学びます。
※「ありふれた職業で世界最強」については、別記事でも研究しています。詳細は、記事末尾の「関連記事」欄をご参照ください。
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この主人公はクールで非情!しかし……
本作の主人公は、ハジメ。
彼は、元々は心優しき高校生でした。
しかし異世界に召喚された後、とんでもなくひどい目に遭った。かくして性格が激変。「必要なら殺人すら厭わぬ」というクールで非情な男になってしまいました。
また、彼はユエという少女と出会い、間もなく恋人同士になります。
※ユエ:吸血鬼。見た目は美しい幼女。本作のヒロインの1人(属性:ロリ、クール)。
以上の結果、ハジメはこう考えるに至りました。
1:「何が何でも、ユエと共に元の世界に戻ってみせる!」
2:「それ以外のことはどうでもいい!」
3:「邪魔するヤツは、皆殺しだ!」
これだけ見ると、「ハジメが元の世界に戻る方法を探す → ユエと共に元の世界に戻る → ハッピーエンド」というストーリーになりそうなものですが……ところがですね、このハジメという青年、実際には随分と「回り道」をするんですよ。
「回り道」というのは、具体的には「ハーレム作り」と「人助け」です。
※ハーレムについては、以下の記事で詳述しました。本記事では、「人助け」に注目します。
なぜ「人助け」をするのか?
「えー!『ユエと共に、元の世界に戻ること』以外は、全部どうでもいいんじゃなかったの?なんで人助けをするの!?」と驚く方もいるかもしれません。
確かに。驚くのももっともです。
しかしですね、作者(= ストーリーを作る人)視点で考えれば、「『ハジメが人助けをする』という展開になるのも頷ける」とご納得いただけるでしょう。
<作者視点で考える①>
まず何よりも、「ハジメが元の世界に戻る方法を探す → ユエと共に元の世界に戻る → ハッピーエンド」だけでは、ちょっと素っ気なさすぎると思いませんか?
もっと山場がほしいじゃないですか!ハジメを活躍させ、鑑賞者に興奮してもらいたいじゃないですか!
……となれば、そりゃ「『ハジメが困っている人と遭遇。敵を倒し、助けてやる』という展開 = 人助けエピソード」を描くのも当然ですよね。
<作者視点で考える②>
「『オレは面倒ごとはごめんだぜ』と言いながらも、しかし困っている人を見捨てられない主人公」って、どう思います?
あるいは、「いざ困っている人を見かけると放っておけず、悪態をつきながらも手を差し伸べてしまう主人公」は?
端的に言って、超カッコいい!
……と考えれば、やはり「人助けエピソード」を描くのは当然のことだと言えるでしょう。
ポイントは「いかにして正当化するか?」
ここまで申し上げてきたことをまとめると……ハジメは、「人助け」をするキャラには見えない。しかし、そんな彼が「人助け」をするシーンを描きたい!
したがって、問題は「いかにしてハジメの行為を正当化するか?」です。
どうすれば、「ふむふむ、なるほど。ハジメが人助けをするのももっともだ」と鑑賞者に納得してもらえるのか?
どうすれば、「ハァ?なんでこいつは余計なことばかりしているの?」と鑑賞者がうんざりするのを回避できるのか?
以下、本作で使われている「正当化」のテクニックをご紹介します。
【タイプ①】目標達成に必要だから、人助けする
まずは、「ハジメが、シアの頼みを引き受けるシーン」を見てみましょう(第6話)。
※シア:兎人族。見た目は美少女。本作のヒロインの1人(属性:残念系、若々しいエロ)。
シアは、強力な助っ人を探していました。というのも、彼女の仲間が魔物らに狙われているのです。このままでは、仲間は全滅してしまうでしょう……!
そんな中で出会ったのが、ハジメとユエ。
シアは懇願しました「力を貸してください!お願いします!」。
しかし、ハジメはあくまでもクールです「それで?オレに何のメリットがあるんだ?」。
相手が美少女だろうと、露出狂じみたエッチな格好をしていようと、ハジメの心が揺らぐことはないのです(カッコいい!)。
シアは、自分の「価値」を必死にアピールします。
「おふたりは、これからハルツィナ樹海の大樹に向かわれるんですよね?」
「あそこは、いつも霧に覆われています。感覚を狂わされ、必ず迷うと言われているんですよ」
「しかし樹海の住人である自分がいれば、迷子になることはありません!」
※補足:ハジメとユエは「元の世界に戻るには、ハルツィナ樹海の大樹に立ち寄る必要がある」という情報を入手し、この時、大樹に向かっていた。
シアの言葉を聞き、ユエが頷いた。彼女はシアの「価値」を認めたのです。かくして、ハジメはシアの助太刀をすることになりました。
……つまりこれ、「『目標(= 元の世界に戻る)』を達成するのに必要だから」という理由で「人助け」が正当化されているわけですね。
【タイプ②】「信念を貫く人」の言葉に心を動かされたから、人助けする
続いて、「ハジメが、愛子の頼みを引き受けるシーン」を見てみましょう(第10話)。
※愛子:ハジメが通学する高校の教師。生徒と共にこの世界に召喚された。
愛子が、とある町に滞在していた時のこと。
ひょんなことから、魔物の大群が町に迫っていることが判明します。このままでは、町は壊滅してしまうでしょう。
かくして愛子が言った「南雲くん!町を救ってください。このままでは、多くの人びとの命が失われてしまいます!」。
※南雲:ハジメの苗字。
しかし、やはりハジメはクールです。彼は言った「意外だな。あんたは、生徒が最優先なんだと思っていたよ。まさか生徒に戦えとはな」。
愛子は返答に窮する。
まぁ、ハジメの言葉には一理ありますからね。確かに教師の言葉としては不適切とも考えられる。
しかし、それにしても……ハジメくん、意地悪なことを言いますよねぇ(そこがダークヒーローっぽくてカッコいいわけですが)。
短い沈黙の後、愛子が言いました「もちろん先生にとっては、生徒が一番大切です。でも、この世界で出会い、言葉を交わした人びとを見捨てたくない!」。
愛子はさらに続ける。
この世界に召喚されてから、ハジメがひどい目にあったことは知っている。非情になるのも理解できる。しかし、それでも……「すべてを切り捨てて生きるような、そんな寂しい生き方はしないでください!」。
再び沈黙。そしてハジメが問うた「先生は、この先何があってもオレの先生か?」。
愛子「当然です!」。
ハジメ「オレがどんな決断をしても?それが先生の望まない結果でも?」。
愛子「はい。南雲くんが先生の話を聞いて、なお決断したことなら」。
この後、ハジメは町を救うべく戦いに挑むことを決意するのですが……はて、ハジメはなぜ「人助け」をする気になったのでしょうか?
明言こそされていないものの、おそらくは、愛子の「信念を貫く生き方(たとえ異世界でも、生徒を大切に想う姿勢/常に弱者に寄り添う姿勢)」に心を動かされたのでしょう。
ハジメは異世界に召喚されてから、嫌というほど辛酸をなめてきました。そんな彼には、愛子の姿勢が生ぬるく思えたはずです。「平和ボケしている」と感じたことでしょう。
しかし、たとえ価値観や立場が異なれど、「信念を貫く生き方」は人の心を動かすものです。
……つまりこれ、「『信念を貫く人』の言葉に心を動かされたから」という理由で「人助け」が正当化されているわけですね。
【タイプ③】仲間の言葉に心を動かされたから、人助けする
続いて、「ハジメが、遠藤の頼みを引き受けるシーン」を見てみましょう(第10話)。
※遠藤:ハジメと共にこの世界に召喚されたクラスメイトの1人。
ハジメ一行は、ある日偶然遠藤と遭遇します。
遠藤は青ざめていました。
話を聞くと……何人かのクラスメイトが、いままさに強力な魔物に襲われているとのこと。このままでは、彼らは殺されてしまうだろう!
遠藤がハジメに泣きついた「オレたち、仲間だよな!頼む、助けてくれ!」。
しかし、ここでもやはりハジメはクールです。「ハッキリ言うが、オレがお前らに持っている認識は『ただの同郷の人間』、それだけだ」。
遠藤はショックを受ける。しかしそれでも頭を下げ、哀願します「頼む……南雲!みんなを……」。
さすがのハジメも心が揺らぎ始めます。彼の脳裏にクラスメイトの顔が浮かぶ。
とはいえ、それでもハジメは動かない。彼は非情な男なのです。
とその時、ミュウが言った「ミュウのパパは強いから、絶対助けられるの!」。
※ミュウ:海人族。見た目は幼女。ハジメを「パパ」と呼ぶ。本作のヒロインの1人(属性:幼女)。
ハジメがハッとする。
ミュウは、じっとハジメを見つめていました。
続いてシアも言った「助けなくていいんですか?」。
さらにティオ「どうするのじゃ?ご主人様」。
※ティオ:竜人族。見た目は20~30代頃の女性。本作のヒロインの1人(属性:和装、ドM)。
そしてユア「ハジメのしたいように。私は、どこにでもついていく」。
ハジメが呟く「お前ら……」。そしてハジメは、クラスメイトたちの救出に向かうことを決意します。
……つまりこれ、「仲間の言葉に心を動かされたから」という理由で「人助け」が正当化されているわけですね。
まとめ
以上、本作で使用されている「正当化」のテクニックをご紹介してきました。
▶ 目標達成に必要だから、人助けする
▶ 「信念を貫く人」の言葉に心を動かされたから、人助けする
▶ 仲間の言葉に心を動かされたから、人助けする
キャラに「らしくない行動」をさせる時に、ぜひ参考にしてみてくださいねー!
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(担当:三葉)