(映画感想文/短歌)『マルホランド・ドライブ』
『マルホランド・ドライブ』※ネタバレなし感想文
真夜中のマルホランド・ドライブ(ハリウッドに実在する峠道)で起きた自動車事故。奇跡的に生きのびたものの記憶を失った「リタ」と、ハリウッドに女優を夢見てやってきた「ベティ」は偶然出会い、ベティはリタの記憶を取り戻すことに協力するのだがーー。
2001年上映作品。カンヌで監督賞(デヴィッド・リンチ監督)を受賞し、英BBCが選ぶ「21世紀の偉大な映画ベスト100」でベスト1に選ばれた本作が4Kレストア再上映とのことで観てきました。個人的にも、21世紀のベスト1かどうかは別としても、まぎれもない名作だと思います(実際、これまで何度も観ています)。
本作は「ストーリーが難解」との評が多く、また多くの「謎」をめぐっての様々な解釈があるような映画です。実際、それを前面に押し出して宣伝されていましたし、それを楽しむのもアリだと思いますが、個人的には、ナオミ・ワッツ演じる「ベティ」のパーソナルな心情を、時に儚く、時に生々しく、時にグロテスクに描いた映画として観ました。今回の4Kレストア上映時に、特典としてA5サイズのアートビジュアルミニポスターが配られましたが(先着順)、そこには「夕暮れ(あるいは朝焼け?)に、ひざを抱えて一人たたずむベティ」が印象的に描かれており、彼女の抱える葛藤や混乱、寂寥感が伝わってきます。先にも書いた通り、難解かつ様々な解釈の余地がある映画ですが、彼女に、また彼女の「物語」に何を重ねてこの映画を観るかは各自に委ねられていますので、難しく考える前に、まずはこの迷宮のような映画の中に迷い込んでみてはいかがでしょうか。
『マルホランド・ドライブ』個人的評価:★★★★★
こんな人におすすめ
ミステリーとしても、ラブロマンスとしても、ホラーとしても観られる映画なので、個人的にはあらゆる人におすすめしたいです。一回観てわからないことがあったとしても、この世界観に惹かれたら、くり返し観てみることをおすすめします。なお、性的なシーンもありますので(PG12)、ご注意を。
(混乱しつつ)短歌
ベティの抱える葛藤や混乱、あるいは人の心の中の迷宮をテーマに詠んでみました。彼女は決して特別な存在ではなく、誰しも彼女と同じようなものを大なり小なり抱えていると思いますので、結末は別でありたいですが、案外身近な物語なのかもしれません。