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【短歌十首】車椅子の風景その1

すれ違う車椅子の吾に目を凝らし眉間に皺が犬も赤子も

多様なる人の世なれば多様なる歩き方ありタイヤの足跡

車椅子この足で行くこと「歩く」と言ふ我を怪訝かいがせぬかがリトマス紙なり

車椅子を壁にぶつけて「痛っ!」と呻けばメルロ=ポンティ頷く

色めきたるアパレル店の入口に二段あり我を拒む二段

コンビニの届かぬ棚のスイーツは無駄遣いせぬためその棚に

狭い歩道、歪んだ地面、石畳、用を成さない急なスロープ

我先とエレベーターへ駆けて行く健脚の二足歩行者たち

介助請う我を見れども我でなく連れに応える駅員もいて

左手が空くから電動車椅子でんどうで良かった自走じゃ君と手を繋げない
  



※第四首
メルロ=ポンティは、20世紀のフランスの哲学者。身体論を構想した。

※第六首
もちろん、本当に必要なものや欲しいものであれば、店員さんに頼んで取ってもらいます。

※第十首
自走式の車椅子ユーザーで健脚のパートナーさんと手を繋いで歩いているかたを見かけたことがあります。ですので、必ずしも自走では手を繋げないということではありません。
 



「車椅子の風景その2」~「その4」はこちら↓


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