架空旅行記A#7
はぁ疲れたっ!
複数のショッピングバッグを
ベッドにどさっと置く。
デスクが部屋の奥側にあることから
手前のベッドを荷物置きにすることを決めた。
明洞に戻る電車内で思ったのだ。
あ、明日着る服もないかもしれない、と。
色々と買う心づもりで来たものの
さすがに下着類だけはやりすぎた。
明洞に着いて
とりあえず、とアディダスに向かい
トラックパンツを購入した。
黒に白いラインの、
サイドボタンがついたものだ。
その後ALANDにて
TシャツとロンTを何点か、
太めのダメージジーンズとパーカー
それにスウェットのセットアップを買った。
まあとりあえずこれだけあれば
心配はないだろう。
辺りはもうすっかり暗くなっている。
夜の7時をまわったところだ。
様々な店や看板に灯りがつき
露店も煌々と光を放っている。
通りには人が溢れかえり
活気に満ちていた。
気づけば街が
その表情を変えていたのだ。
おお、なんだかお祭り気分だな。
ちょっとこの雰囲気を味わってみよう。
人混みを、流れにのって
ゆっくりと進み、
露店の活気や店ごとに変わる音楽、
そういった喧騒を楽しみながら
歩きまわった。
ああ、なんだかいいなぁ。
気分がいい…。
上機嫌で、目に入った露店にて
特に理由もなくハギーワギーのキーホルダーを
2つも買ってしまった。
青いものとレインボーカラーのものだ。
きっと付けることはないのだろう。
だがこれを見たらこの喧騒や活気を
ありありと思い出せるのではないか?
そう思ったのだ。
フワフワとした気持ちで通りを歩き
活気が途切れる辺りで路地へと入る。
すると途端にどっと疲れが押し寄せてきて
一気に我に返った。
あ、疲れた。もうホテル戻ろう。
と、すごく渇いた独り言が
口からぽろっとこぼれた。
袋をガサゴソと開け
買った洋服を広げては畳み
ジャンルごとに仕分けてゆく。
ズボンはここ、Tシャツはこっち、
といった具合だ。
うん、なかなか良い買い物が出来たな。
ひとまず非常階段に行き煙草を吸おう。
ドアをガチャっと開け
煙草に火をつける。はぁ。
さて、どうしたもんか。
もう今日は疲れたし
早めに眠りにつきたいものだ。
なんたって朝の4時に起きてこっちにきたのだ。
心身ともに限界が近い。
しかしここで悩ましいのが夕飯問題だ。
この国はお一人様に案外優しくない。
飲食店に行っても大体2人前からだし
1人で店でご飯を食べていたら
ヒソヒソと言われ白い目で見られる
といったドラマを観たこともあるくらいだ。
ラーメン屋や牛丼屋のような
気軽にサクッと食べれるお店が少ないのだ。
うーむ、悩ましいぞ…。
あ、でもそうか。
いつも通りに
ホテル飯、部屋飲みと決め込むか。
こちとらホテル暮らしのエキスパートだ。
舐めてもらっては困る。
装備品がなくともどうにでもなるのだ!
そう決心し、街へ再び出ることにした。
とは言えなー。どんな工夫をするべきか。
そんなことを考えながら歩いていると
目の前にキムガネが見えた。
あ、ここでいいや。
ここでテイクアウトしよ。
言った側から何ではあるが
ここは1人でも全然大丈夫だ。
メニューもそこそこ豊富で
基本的なものはあるような感じだ。
散々息巻いた結果がこれ
という何ともつまらない顛末だが
どうか許して頂きたい。
とにかく疲れているのだ。
私は券売機で
キンパ、スンドゥブチゲ、ラッポッキを買い
暫し席にて待つ。
程なくして番号が呼ばれ
カウンターへ取りに行く。
実に簡単だ。
帰りしなコンビニにも寄る。
籠を床に置きCASSのロング缶を3本入れる。
そして一応マッコリも買っておこう。
あとはチンするタイプのフランクフルトと、
チーカマだ。
このチーカマ。
以前の旅で不思議な光景を目の当たりにしてから
何だか気になるようになり
今では割と好きなものになった。
夕刻の、これまた明洞。
とあるセブンイレブンの店先に
おじさんが5人ほどいた。
みな会話などはしていないので
団体などではなく
各々がソロプレイヤーなのだと思う。
椅子に腰掛ける者、立ったままの者、
ビールを片手にの人もいたが
何故だかその5人のおじさんたちが皆
こぞって同じチーカマを食べていたのだ。
しかも何故だか皆同じ方向を見ていた。
さながら奇妙な恵方巻きの儀式のようだったのだ。
これを見て私はさすがにその時に飲んでいた
コーヒーを盛大に吹き出すこととなったのだが、
とにかくとても印象的で
その日の晩、私は迷わずコンビニで
そのチーカマを買っていた。
そんな奇妙な事件により
韓国 コンビニ 部屋飲み
で脳内グーグル検索をすると
チーカマとトップに出るほどになってしまった。
なのでこれは外せないのだ。
しかもこれは2+1の商品だ!やったぜ!
両手にビニール袋をぶら下げて
ホテルへと戻ってきた。
風呂に入りたい気持ちもあるが
やはりあたたかいうちに食べたい。
なのでもうはじめようじゃないか。
デスクにスンドゥブ、ラッポッキ、キンパと広げてゆく。まだ湯気が立っていて実にいい匂いだ。
お、キムチとたくあんもつけてくれた!嬉しいですね、こうゆうの。
そして別の袋からビールを1缶取り出して
プシュっと!
グビグビグビグビ。はぁ、生き返る。
他のビールとチーカマは一旦冷蔵庫に入れ
割り箸を割って、いただきます。
キンパをひと口。モグモグモグ。
まあ普通だな。美味い。
スプーンを取り出しスンドゥブを混ぜひと口。
うん、これも普通だ。まあ美味い。
ラッポッキはどうでしょう?
麺と餅を一気に掴み口に運ぶ。
おおっ!これは美味いぞ!
なかなか濃厚で甘さが際立つが
後からしっかりとした辛さがやってくる。
ビールが進むやつだ。実にいい。
その後チンするフランクフルトを
チンせず開けてひと口。
これ、美味いんですよ。あっためても勿論美味しいけど、そのままでも全然美味い。
これは日本でも是非とも販売してほしいと
常々思っている。
とにかくビールが進むものばかりで
なんだか嬉しくなってくる。
こうゆうのでいいんだよ…
と何処かで聞いたようなセリフが
口をつきそうになるのをグッと堪え
2本目のビールをプシュっと開けた。
幽
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