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【経営メモ】功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ。会社経営では、人事が一番大切。

私は海外の子会社の社長を3ヵ国、計17年務めましたが、国が違えど、販売する商品、サービスが違えど、会社員運営にとって1番重要なのは、組織でした。今日は、強い組織について書いてみます。

組織においては、誰をマネジメントにするかということが、とても大事になります。
その肝要なところは、今から1千年以上前の中国の古典「書経」に既に書かれています。

「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」

この意味は、功績のある者には、地位を与えるのでなく、報酬を与える。功績があり、人徳のある者に地位を与えるということです。

ソニーの設立趣意書も、強い組織について、しっかりと記されています。

「従業員は厳選されたる、かなり小員数を持って構成し、形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技能を最大限度に発揮せしむ。

業績を上げたものが、良い評価をもらうのはある意味当然ですが、会社のマネジメントとなると、その人の徳や人格を考慮にいれないといけないということです。

これを実際の現場で実行するというのはどういうことか、以下に書いてみます。

海外販売子会社の毎日というと、やはり売り上が一番気になります。売り上げが計画通りに進んでいるか、コストや経費が計画された数字より低く押さえられているか。
売り上げと経費の二つの数字が順調であれば、一番大切な利益が確保できるということです。
社長の仕事もこの2つの数字を追いかけるに、その多くが費やされます。

特に売り上げは重要です。売り上げがヒドク落ちると、クリスマスパーティは簡易なものになり、酷い場合には、人を解雇したり、小さなオフィスに引っ越したりとなります。
よって、直接売り上げに関係しない部署、受付の人や、お掃除の人も含め、全社員が会社の売り上げ状況には敏感です。

こういう背景から、売り上げを作る部署、営業やマーケティングの仕事はとても重要と位置付けられ、売り上げ不振を回復させた営業マンは、ややもすると時のヒーローになったりします。

ここで、売り上げを回復させるのに貢献した社員へどう報いるかというのが、経営・人事でとても重要な選択となります。
売り上げ貢献が大きかったから、イコール昇進ということで、営業マネジャーや場合よっては、ポジションが空いていたら、で営業部長へと昇進というのは、とても慎重に判断する必要があります。

会社にとって、今日の売り上げはとても大事ですが、それ以上に、組織が継続的成長していけるかという事がとても重要です。
マネジャーになる人は、視座が高く、会社の成長を理解し、自分の部下や他部署を巻き込んでリードできるような人材であるべきです。

もし、ヒーロー営業マンが、まだ、次のポジションにreadyでない場合は、社長は悪者になってでも昇進にはストップをかけ、代わりに、大きな賞与で彼/彼女の貢献に応えるというのが正解です。

今回は営業マンを例にしていますが、ありがちなのは、ヒーロー営業マンは顧客訪問に忙しく、社内の教育研修や、コンプライアンス研修など、今日の売り上げに直接繋がらないものを軽視して参加しないというものがあります。(ヒーロー度が強かったりすると、皆、遠慮して参加を促さなかったりすることも、まま、あります)
自分が学習をしないタイプの人が、チームを率いるようになると、組織の成長を妨げる可能性がでてきます。

会社を運営していて、人が辞めていく、それも優秀な人が辞めていく。
更にはその人のポジションが課長や部長となれば、なおさら、会社にとっては大きな痛手というのは、社長のみならず、多くの社員が明らかに認識することだと思います。

しかしながら、実は、会社にとって一番ピンチなのは、適正のない人が部長や課長職についているケースです。
1つ下のポジションでは活躍できていた、若しくは、前の競争環境、仕事環境では活躍していたが、今はそのポジションの仕事が上手くできていないということがあります。
長期的な視野に立たず、適正をよく見極めずに昇進をさせる文化のある組織では、こういったことがよくあります。

こうした、ある意味ボタンの掛け違いになってしまった人事は、当の本人は全く悪くありません。
しかしながら、ボタンを正すのには、当の本人にも大きな迷惑をかけますし、また、会社としても膨大なエネルギーと時間を必要とします。
そして、回復するまでの間、その部門はオペレーションが安定せず、往々にして会社の足を引っ張ることとなります。

アジア系の人事だと、適正のない部長を助ける目的で、次長や担当部長のポジションを新設して、部門としてのパフォーマンスを保つという方策がとられることもありますが、基本会社のコストを上げたり、指示系統が乱れたりするのでお勧めではありません。
(日本でも、部長1人に次長が2-3人いるような時代もありましたが。。。)

特に、適正のない人が、とても真面目で性格がよく、長年会社に勤めてくれているとなると、情もでてきて、なかなか難しい判断をしなければならなくなります。
そこを、日和ったりせずに、腰を落とし正面から構えて、無礼のないよう形で当事者との会話を深め相互理解に持っていくというのが、社長の仕事ということになります。
(大事な案件の時は腰を落として、正面から対処をしないと、場合によっては大怪我をしてしまいます)

今やVUCAの時代に入り、会社は市場の予測できない変化に柔軟に且つ、迅速に対応をしなければならなくなっています。
組織のkey positionに不適格な人がいるということは、会社にとって、命とりになるほどの時代に入ったと認識すべきでしょう。

社員を昇進させるというのは、Good newsなので当の本人が嬉しいのはもちろん、会社の雰囲気も明るくなりますが、会社運営においては、持続的成長の目線から、ケース毎に慎重に判断する必要があります。
(新しく人雇うということも少し似ています。雇うのは簡単で、適正のない人にやめてもらうのはそれはとても大変です。そして、それが労働法に触れることなく、不公平になることなく、実行できる人が、優秀なマネジャーとなります)

以下に参考文献を少し載せておきます。

📚「ビジョナリー・カンパニー2 / ジム・コリンズ」
著名な経営書です。
会社を持続的に成長させるのに、「誰をバスに乗せるのか」が一番大事といっています。
そう、間違った人が乗っていると成長速度が著しく落ちるということです。

📚「功ある者には禄を与えよ、徳ある者には地位を与えよ」
西郷隆盛が、中国の古典「書経」に出てくる言葉から、作り出した名言とされています。
100年、1,000年前も、やはり適正のある人事というのは、組織の要だったのでしょう。

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