#358 プロジェクトマネジメントにおけるお金の活かし方
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
私は昨年の社内での部署異動をきっかけに、それまでの10年近くにわたる東南アジアを中心としたキャリアから一転し、国内での仕事が中心の部署を担当することになりました。
自分から異動希望を出したわけではなく、社内でも本部を跨ぐ全く別の部署へと急な異動となったため、会社としては「次はこの場所で成長しなさい」というメッセージだと受け取っています。
そんな経緯で異動になった先で待っていたのは、それまで経験したことがない規模のシステム開発のプロジェクトで、全く新しい人間関係の中にマネージャーの立場で放り込まれたわけですが、早くも1年半近くが過ぎ、それなりに面白がりながら毎日を過ごしています。
特に力を入れているのが自身のマネジメントとしてのスキルアップで、特に今年度に入ってからは、「(社内外問わず)いかに同じチームメンバーに成長実感と日々の仕事の中にいかに面白さややりがいを見つけてもらえるか」を意識して動いています。もちろん、足らない面も沢山あって、上手くいかないことの方が多いのですが、それでも自分がこの部署に来たからこそ、貢献できていると感じることもいくつか出てきました。
その一つとして、先週まで自分のチームメンバーを2週間ほどニューヨークとラスベガス出張に行かせていた話があります。もちろん会社の出張で行ってもらい、円安影響などもあり安くはない訳ですが、日々チャットで現地から送ってきてくれる滞在記や、久しぶりに帰ってきて、色々と現地で学んだことを話している本人の顔を見て、「あぁ、自分の上司や組織長にも話を通して、今回の機会を作ってもらってよかった」と感じることができました。
今日は、このエピソードをきっかけに、「プロジェクトマネジメントにおいて、お金を活かす対象」として私が考えている3つのことを紹介します。
以前は、「お金を使うタイミングは先の方がいい!」という趣旨で話しましたが、今日は使う対象に焦点をあてます。
1. 「人」にお金をかける
まずは、何といってもこれです。
私は、企業が右肩上がりの成長を目指すこと、究極的には各企業がそれぞれの利益を追求する資本主義的な考え方には肯定的な意見を持っているのですが、それは組織が「成長」を目指して稼いだ利益があるからこそ、人の成長のための投資が出来ると考えているからです。
逆に言えば、稼いでいても「人の成長のための投資」がなされないのであれば、組織として何のために成長を目指しているの?というところが解せません。
個人視点で見れば、自分が人生の中で使える時間を投資して何らかの組織やプロジェクトに属しているのであれば、他と比べてここにいる方が自分にとって何らかの価値がある(=投資対効果が高い)と感じられるところに身を置くべきだと考えています。それは別に金銭面での話だけでなく、その人間関係の中にいることで安心できるとか、成長実感があるとか、やってる事業に共感できるとか、人それぞれではあると思いますが、とにかく個人が何らかの組織に関わるということは、他の場所にいるよりも、その場所にいる方が良い(と思える)ことが重要だと考えています。
組織側としても、出来るだけ能力の高い人にモチベーション高く持って組織貢献してもらった方が組織の成果が出るのは当たり前で、(そういう理由でメンバーの気持ちを落とす行動ばかりしている企業管理職などは全く意味が分からないのですが)、お金の使い方も出来るだけ人のモチベーション向上や視野を広げることに使うべし、と考えています。
昨日の記事で、企業が就業者1人にかけるOff-JT費用は年間平均1.5万円とあり、もちろん会社の体力の違いなどはあるとは思いますが、それでもかなり低いという印象を個人的には受けました。
「我が社は人材育成に最も力を入れています!」とのスローガンを掲げる企業は多いですが、本当にそんな企業ばかりであれば、さすがに年間1.5万円はないよなと。
今回、私のチームメンバーでアメリカ出張に派遣したのは20代前半の女性社員で、本人は元々グローバル志向もある方だったということもあるのですが、現地で初めて会う人たちとは起きている時間はほとんど一緒にいたようで「今後、こういう技術領域を学びたい」とか「日本に帰ってきてからも、今回ご一緒したコミュニティを大事にしたい」とか話してくれていて、本当に良かったなと思います。
今回の出張費用が安くはないとは言え、よく分からないコンサルに「やった感」出すための市場調査に関するレポート作成をお願いしたり、お試しで外から1ヶ月外注で人をアサインするのと比べれば全然安い金額です。
出張というと、未だに「遊び半分でしょ?」と思われることもあるように感じますが(もちろん何の出張成果もアウトプットしないオッサンはNGとして)、10年近く様々な国に出張させてもらってた自分の感覚とすれば、常に出張投資に対するアウトプットを求められ、現地では自分の普段の担当チーム関係なく常に「会社の代表者」としての動きが求められますから、本当に毎回ヒリヒリするんですよね。常に「本番」がそこにある感じ。
でも、その「本番」の感覚こそが人を成長させるし、現場を見ることでモチベーションややり甲斐に繋がりますから、出張だけに限らず「メンバーをワクワクさせること」に使うお金はプライスレスだと考えます。
2. 「仕事環境」にお金をかける
これはこれまで色んなタイプの上司のもとで働いてきましたが、上の考え方次第で1で述べた「人のモチベーション」に直結するところだと考えています。
私自身も特に刷り込まれたのが、「通信環境」です。今でこそオンライン会議が普通になりましたが、私は2010年代前半から国内とのミーティングには出張先や空港から参加することが多かったので、通信機器やネットワーク環境にはかなり気をつけるようにしています。
最近ではあまりなくなりましたが、時々通信環境が悪くて、自然なコミュニケーションに支障が出るくらいの人がいましたが、そこに出席している他の参加者の時間も奪っているという感覚がないのかな?と思えてしまうので、私としては「あぁ、この人は、あまり仕事のセンスないんだな」と感じていました。
他にも、会社指定のPCやスマホがしょぼいみたいな話もあると思うのですが、私はこれもキツいです。コロナ禍で一斉にリモートに移行した直後など、会社としてもそれだけのアクセス数を想定した設備になっていなかった事情もあるとは思うのですが、すぐにネットワーク接続が切れたり動作が遅かったりするだけで、仕事のリズムをイチイチ遮ってくるので、本当に苦痛でした。
人が気持ちよく仕事できる環境への投資は、本当に大切です。
3. コミュニケーションにお金をかける
最後は、人と人とのコミュニケーションにはお金をかけるべし、という考え方です。2点目も3点目も、根底には1点目に「人」にお金をかける、がある気がしますが、今年度の自身の取り組みで言えば、協力会社の方も含めて、ニアショア先の協力会社の人たちと直接会って、深い議論をしたり、食事をしながらお互いの仕事以外のことも知る機会を作ることに積極的に動いています。
これは東南アジアでの仕事をしていた時の上司から学んだのですが、私が現地に行くだけでなく、東南アジアの現地スタッフが逆に日本に数ヶ月常駐して、日本で一緒に仕事をする機会も積極的に作っていたのですよね。
これは、日本に来ているスタッフ自身の刺激や勉強にもなるし、日本にいるメンバーにとっても、普段日本人に囲まれて仕事をすることばかりですから、海外の方との仕事の仕方を学ぶという意味でも非常に優れたマネジメントの考え方だと学びました。
結果として、当時の私のプロジェクトは、他部署からも社内公募で入ってくる人が絶えませんでしたし、一緒に仕事をしていた現地スタッフも、数年間でかなりの成長を見せました。私にとっても、こうしてキャリアの軸になる経験を数え切れないくらいさせてもらったのは、このようなコミュニケーション機会の創出に対して、当時の上司に恵まれたからだと、本当に感謝してもしきれません。
プロジェクトマネジメントで大切なのは、「お金」を何に配分するかというリソースマネジメントですが、私がこれまで学んできたことから「人・環境・コミュニケーション」への積極投資は、絶対にケチってはいけないところだと考えています。