#379 テレワークは、まだまだ最適化できる
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
コロナ禍による外出制限により、一気に普及が広まったテレワーク。最近では、テレワークのデメリットに対する意見や、対面コミュニケーション価値への揺り戻しも働いて、従業員に出社を促す企業も増えてきました。
私自身は、第一子(現在3歳の長男)が生まれたのが2021年で、ちょうどコロナ禍の真っ最中。当時、2ヶ月弱の育休も取っていましたが、何より救われたのがテレワークを活用した働き方でした。
私は元々海外での仕事がメインで、2010年代前半から空港ラウンジや現地のホテルから打ち合わせに入ったりと、特に場所を選ぶ働き方ではなかったですが、それがより広い範囲の話として、出社以外の選択肢が出てきたことはかなり大きな変化でした。
そもそも海外の仕事だけど、海外渡航制限により海外に行けないということで、日本の中で出社しても家にいてもあまり関係なかったので、2〜3ヶ月に1回出社するかどうか、くらいの生活をしていました。
そのため、子どもの保育園の送り迎えもやりやすかったし、当時は発熱などでの保育園からの呼び出しも頻繁にあり、熱性痙攣をして救急車で緊急搬送したことも3回あるので、テレワークでなかったらどんなに大変だったか・・と想像もできません。
そんなテレワーク議論では、よく「出社かテレワークか」みたいな「いずれか片方を選ぶ」対立議論が起きがちです。私は出社であれテレワークであれ、いかにブレンドさせていくか、「テレワークだから顔が見えなくて不安」みたいな個別の課題にどう向き合っていくか、みたいな議論の方が大切だと思っています。
今日は、テレワークの現状に触れながら、私の考えを述べていきます。
テレワークの現状
パーソル総合研究所さんが2024年8月30日に公開していた「テレワークに関する定量調査」をもとに、現状を把握したいと思います。
まず、全体傾向の把握となりますが、2024年7月の正社員を対象とした調査では、テレワーク実施率は22.6%で前年比でわずかに微増していることが分かっています。
企業規模別で見ると、従業員10,000人以上の大手企業において、テレワーク実施率が38.2%と2年ぶりに上昇。
さらに大手企業でテレワーク率が増加した職種を見ると「商品開発・研究」、「IT系技術職」、「営業職」などで増加しています。
1週間に2〜3日以上のテレワーク実施率では「企画・マーケティング職」、「IT系技術職」、「営業事務・アシスタント」の職種で特に増加していることが分かりました。
さらに、業種別テレワーク実施率では、「情報通信業」が56.2%で最上位。「学術研究、専門・技術サービス業」のように昨年比+8.3%と大きく実施率を伸ばしている業種もある反面、「卸売業、小売業」や「生活関連サービス業、娯楽業」では昨年より実施率が1%以上減少しているということで、業種によるテレワーク実施率の違いは今後ますます大きくなりそうです。
テレワーク非実施理由の推移で面白かったのは、「テレワークで行える業務ではない」がピークの2020年5月の52.9%から徐々に低下し、2024年7月には36.9%になっていることです。
代わって「テレワーク制度が整備されていない」がここ数年で微増傾向にあるのは、おそらくデジタル化の進展や働き方に関する文化が徐々に変容し、「実はこの業務はテレワークでできるかも?」というものが増えてきた時に「しかし制度が整備されてないからなぁ・・」に移行してきているのかな?と推測しています。「テレワークで行えない業務」は今後もゼロにはならないと思いますが、デジタル化による効率化はゆっくりでも進む一方だと考えますし、これから2030年、2040年と長期で考えれば、ますます減少傾向にいくものと私は予想しています。
2つの選択肢を広げたテレワーク
私は、自分自身の「小さな子どもの子育て期」がちょうど重なったというのもあり、テレワークの恩恵を大きく感じていますし、かなり肯定的に捉えています。
個人的な事情がなかったとしても、テレワークの普及は大きく2つの選択肢を大きく広げたものと考えています。
働き方の選択肢
一つは、よく言われるように、より柔軟な働き方の選択肢が世の中に生まれてくれたということです。
生産労働人口の減少を補うために、政府は「シニア活用」や「女性活躍推進」などを掲げていますが、育児や介護などの生活面での事情がネックになって仕事を辞めざるを得ない人を一人でも減らすことは必須ですから、テレワークをそのソリューションにすることが必要です。
さらには、リモートでできる副業なんかも増えています。個人の動画制作やプログラミングエンジニア、ホームページ作成やライターなど、「どこかの物理的な場所」に行かなくてもできる仕事の形態が多様化し、働き方の選択肢もより柔軟に選べるようになりました。
アクセスできる人や情報の選択肢
もう一つ広がったと感じているのが「アクセスできる人や情報の選択肢」です。
コロナ禍の外出制限中に私が感じていたことは、物理的な行動範囲は狭まっている反面、Webセミナーなどのオンラインコンテンツが一気に増えて、家にいながらアクセスできる情報が一気に広がったということです。
接続先リンクを変えるだけで、10時からは社内A部署の取り組みの話を聞き、11時からは社外のマーケティングセミナーに参加する、というようなことができるようになりました。
また、当時新規ビジネス開発の仕事に携わっていましたが、地方を含む様々な人とオンラインで気軽に話せるようになったことも非常に大きいです。日常的にオンラインコミュニケーションツールを使うことにお互いハードルがないと特に初見の相手だと成立しませんから、物理的な距離が離れていても、資料を投影しながら企画について話すことが当たり前にできるようになったのは、人の意識を含む情報インフラの大きな進展だなと。
テレワークの更なる最適化を目指して
これらの恩恵を生み出すテレワークだからこそ、「ウイルスへの感染リスクが下がったから出社に戻す」とか「対面の方がコミュニケーション取りやすいから出社に戻す」みたいな単純な話にしてはならないと思うのです。
上述した通り、テレワークできる業界かどうか、企業かどうかは、優秀な人材を集める上でも重要な戦略の一つになりつつありますし、究極的に問われているのは「社内コミュニケーションの最適化」です。
そう捉えるとテレワークがある程度普及した現代においても、まだまだ最適化の余地は残っていると考えます。
個人的に最も重要と捉えている論点は、組織の中で意識的に、機会格差を発生させないこと。
特に、対面とオンラインが混在している今、テレワークを一歩先に進めるために重要なポイントだと考えます。
具体的には、対面参加者とオンライン参加者が混在する会議において、対面参加者だけが得られる情報を極力作らないこと。また、マネジメントにおける評価に際しても「やはり出社してる人のほうが頑張ってるよな」としないこと。
対面でもオンラインでも、情報はすべてチャットツールなどのオンライン上に集約させること。機会格差が生まれる根源的な原因は情報格差ですから、出社してる人もテレワークの人もお互いにコミュニケーションが取りやすい関係性の構築と、情報の形式知化がこれまで以上に重要になります。
テレワークの議論も、ダイバーシティマネジメントに行きつくと考えています。単なる仕事をする場所の話ではなく、組織内コミュニケーションや業務プロセスのテーマだと捉えて向き合っていこうと思います。