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事業譲渡・企業売却(バイアウト)における売り手・買い手側それぞれの変数について
直近のニュースでSalesforceによるSlackの買収が話題になっているアメリカなどと比較するとまだ少ないですが、日本のスタートアップでも事業譲渡や企業買収にまつわるニュースが増えてきています。
しかし、僕が事業譲渡、そして企業売却(バイアウト)を行った際もそうでしたが、売却にまつわる情報はいまだ世の中にあまり存在しないなーと感じます。
そこで本稿では、どういった変数が買収、そして買収額に影響するのか、というトピックについて書いていきます。
※過去記事のカテゴリ別まとめはこちら。
事業譲渡と企業売却の違い
ざっくり書くと事業譲渡はその事業単体を、そして企業売却は運営している事業を含む企業ごと買収する、ということです。
そのため、事業譲渡の方が金額は低い水準となります
また、事業譲渡においては運営スタッフも買い手側に転籍する場合もありますし、引き継ぎなどを行った上で事業のみ移管する場合も存在します。
企業売却においては当然そこに在籍しているスタッフもそのまま働き続けることが前提となることが多く、特に代表取締役などのキープレイヤーは2年程度のロックアップ(辞めちゃだめだよ期間)を設けられることが多いです。
ただ、ロックアップ期間については交渉における双方のカードになり得るので、こちらはまちまちです。
具体的には、ロックアップを長くすることで買取金額を高くしたり、短くすることで買取金額を安くする、という交渉が行われます。
特に企業買収においては上記の金額やロックアップ期間以外にも論点がいくつかあり、例えばオフィスの場所やアーンアウト条項などが含まれます。
売り手側の変数4つ
まずは売り手側の企業に関する4つの変数を見ていきます。
1. 事業数値
まずは当然ですが事業に関する各数値です。
年間利益が10億円の企業と1億円の企業であれば、(以下で述べる変数も絡みますが)前者の方が買収金額は高くなる可能性が高いです。
利益額だけでなく、売上額や利益率、過去からの推移なども参照されます。
2. 事業資産
数字だけで評価できないポイントです。
以下であげる買い手側の変数4とも重なるのですが例えば地方に進出したい首都圏の企業が地場企業の買収を行うケースや、買収対象企業が独自の販路やSNSで大量のフォロワーを有しているケースなどを指します。
他にも保有特許やブランドイメージなどもこちらに含まれます。
3. チーム(スキル)
いわゆるAcqui-hire(アクハイヤー)というもので、買収対象企業の人的リソースが評価の変数となります。
「受託のみを行うエンジニア集団」なども企業買収の対象になり、個人、もしくはチームの獲得のために行われます。
4. 将来のポテンシャル
例えば以下のような年商10億の会社が3つあった場合、A社が最も売却金額が高くなりやすいのは理解しやすいと思います。
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A社:急成長を遂げ、今後も成長が見込まれる
B社:10年間成長が横ばい
C社:かつては年商20億だったが、年々縮小傾向
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また、市場全体のトレンドもこちらに含まれ、成長市場における事業であれば売却金額は高くなりやすいですし、逆もまた然りです。
ただ、こちらについてはあくまで将来予測となるため、ここをどう考えるかで買収金額は大きくブレます。
買い手側の変数4つ
次に買い手側の変数を見ていきます。
1. 買収への意欲
どんなに魅力的な案件であったとしても、買い手側の企業が買収に対する意欲を持っていない場合はそこへの売却は難しいです。
2. 手持ちキャッシュ
無い袖は振れない、ということです。
特に買い手が上場企業であれば株式交換による買収なども選択肢に入りますが、キャッシュフローがうまく回っていない場合は(特に赤字企業を)買収する可能性は低くなります。
3. 買収後の事業シナジー
赤字事業・企業の買収を行う場合は特に、買い手側は自社事業とのシナジーを見込んでいることが想定されます。
そのため、相乗効果が強く生まれる場合は金額が高くなり、逆の場合は低くなりやすいです。
4. 競合の存在
買い手企業候補が複数存在する場合、買収時期が早く、金額が高くなる可能性が強まります。
例えば業界2位の企業が3位の企業の買収を行うことで業界1位になることを目論むという状況であった場合、現業界1位の企業も交渉テーブルに就くことが想定されます。
ーーーーー
ということで4点の変数を挙げましたが、買い手側が重視していることを端的に書くと「その買収に経済合理性があるかどうか」です。
実際いくらで売れるの?
事業や企業を売りたい方にとってはここが一番気になるのかもとも思いますが、ぶっちゃけ場合による、というのが結論です。
事業譲渡においては「利益の1年半〜3年分」みたいな目安はありますし、時価総額算定においてはDCF法などいくつかの計算方法もあるのですが、上記のように数字を左右する各変数は予想や主観的評価によるものも含まれるので、その金額は大きく異なります。
実際、僕が企業売却を行った際にもいくつかの提案をいただいたのですが、一番高いオファーと安いオファーでは倍くらいの差がありました。
そのため、本気で運営している事業・企業を売却したいと考えたのであれば、まずは買い手候補企業と話をしてみるなり、M&Aのエージェントさんに相談してみる、というのがまずやるべきことだなと考えています。
まとめ
冒頭でも書きましたが、日本では特にスタートアップの事業譲渡や企業売却の事例が少なく、それに関する情報も少ないです。
僕がそれを行った際も、知り合いを頼り経験者の方にお話を伺ったりしてなんとかキャッチアップを行っていました。
本稿が少しでもお役に立てば嬉しいですし、僕と話をしてみたいという方は以下からお気軽にご連絡ください。
※バイアウトではなくセルアウトの方が正しいということは認識していますが、前者が慣習的に使われているのでそちらを用いています。
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