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2月の読書 | 本という娯楽へ逃げ続ける
下書きしたままでいつの間にか3月も終わりかけ。最近はいろいろと考えることが多い。そんな日々には小説を読みます。違う世界へ連れて行ってくれるから、最高の気分転換になる。2月はたっぷり時間をかけて、単行本全601ページの川上未映子さんの長編を読みました📚
黄色い家/川上未映子
歪んだ生活。善と悪の狭間で幼い彼女たちに何を判断することができたのだろう。いや、あれは悪だったのだろうか。さまざまな問いが自分の中に駆け巡った。安易に要約することはできない。生きていくということのあまりにも複雑な混沌としたやさしい1冊だった。読み終えたあともしばらく、彼女たちがまるでこの世界に本当に存在しているかのような気分になり、どんな暮らしを今しているのだろうか、などと考えてしまった。その世界からなかなか抜け出せなかった。
星を編む/凪良ゆう
ぼくと彼女の間にある温かく、けれど脆い何かーーーー。
それをもう愛と名づけていいだろうか。
「汝、星のごとく」の続編。登場人物の過去、そして未来の話。「汝、星のごとく」も心温まる大好きな1冊だったけれど、今回「星を編む」を読んでさらに大好きが深まった。どこか儚いのに、確かにそこにある愛情、人情、友情。そういうひとつひとつの気持ちが誰かが生きる支えになっている。確実に。わたしはやっぱり北原先生のキャラクターが好きだ。「汝、星のごとく」を読んだときに感じたわたしの中の北原先生の像がさらに輪郭がはっきりとして、その静かさの中にある激しい情熱、人間らしさに心が打たれた。人はいつも脆い。その脆さの中に確かにある何かが、いつも生き続けることをやめさせないでくれていると思う。
ミトンとふびん/吉本ばなな
よりさりげなく、より軽く。しかしたくさんの涙と血を流して。この本が出せたから、もう悔いはない。引退しても大丈夫だ。
なんとかなる。悲観でも楽観でもない。目盛りはいつもなるべく真ん中に。なるべく光と水にさらされて。情けは決して捨てず。
何度目かの読了。迷ったとき、寂しいとき、嬉しいとき、どんなときでも立ち返りたくなる1冊。短編集なのでどこからでも読みやすく、ちょっとした心のお守り。「なんとかなる」と思えるのだ。大きく一歩踏み出すまでは行かなくても、顔を上げる準備をさせてくれる。そこにはいない人のことが、丁寧に描かれていて、あぁすごく愛していたんだな、とか、愛されていたんだなとか、そういうことが感じられてホッとする。当時、ばななさんはこの本が自分が書ける最良の本だと言っていた。その後もいくつもの素晴らしい本を書いていらっしゃるけれど、わたしはこの本が一番好きかもしれない。「デッドエンドの思い出」と並ぶくらい。これからも頼りにさせてもらう。
本という娯楽の幸福さについて、より一層感じる日々が続いている。映画館に行かなくても、誰かに会わなくても、大金をかけなくても、たった一人でも、どこでも。わたしを連れ出してくれる。時に優しい世界へ、時に苦しい場所へも。そしてまた自分のあるべき場所に帰ってきたとき、わたしはほんの少しだけ、変化している気がする。そういう扉が本棚にたくさん並んでいるのをみると、嬉しくなるし、安心する。わたしはこれからも本に逃げ続ける。より素晴らしい人生を送るために。
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