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日本と世界を比べてみる

本日は本のご紹介をします。

タイトルは、「「日本」ってどんな国?国際比較データで社会が見えてくる」です。
著者は以前ご紹介した「社会を結びなおす」と同じ東京大学大学院教育学研究科教授の本田由紀先生です。

この本は2021年に出版された本で、タイトルのように日本を国際データで比較した際にどのような位置付けなのか。そして、そのデータからどのような事が言えるのかということが記されています。
読んでみて感じた事は、国際データで見てみるとやはり異質な部分があるというか、今まで当たり前だと思っていたことが実は海外から見ると少しおかしかったりする部分もあるということを知ることができました。

全体の構成
全部で第7章で

第1章:家族
第2章:ジェンダー
第3章:学校
第4章:友だち
第5章:経済・仕事
第6章:政治・社会運動
第7章:「日本」と「自分」

といった構成になっております。

ページ数は271ページです。一応この本は学術書というよりも新書ですので、文章もかみ砕かれた様子です。また、行間も詰め詰めではないので、読みやすいかと思います。

内容の一部ご紹介
それでは、第1章の「家族」の内容について一部ご紹介します。

日本における家族間の関係が国際的にデータで比較した際にどのような実態なのかという事を把握することができます。

例えば、31カ国の様々な年齢層に対して2012年に家族に関する調査を行ったISSPの結果を見ると、日本に置ける家庭生活の満足度は男性は27位、女性は29位となっております。

また、「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」では数カ国に絞って調査を行い、若者にとって父親・母親がどのような存在なのかについても肯定的であったり親密な関係性について「あてはまる」という比率は最低でした。
だからといって両親に対して否定的な回答があったのかというとそうではないという結果になっています。

このことから、若者にとって「親」は存在感が薄いのではないかと本田先生は推測しています。

では、家族の生活について着目します。
日本の著しい特徴として、「男性は仕事、女性は家事育児」という性別役割分業が実態として濃厚であるということです。
そして、生活時間について調査をすると、男子絵は家に居る時間も短く、価値絵の生活の諸々を積極的に担当する度合いも低い。その分、女性は常に忙しく仕事と家事を切り盛りせざるを得ないという大人たちの余裕のない生活が、家族間の関係や特に親子関係にも影響を与えているのかもしれません。(特に、長い時間を仕事に費やしたりしていることで、プライベートの時間が少ない事を「時間貧困」と言われたりします。)

子どもについても調査をしてみると、日本の小中高生の生活時間の特徴は、「学業」の時間が極めて長く、代わりに「自由時間」と「家事」の時間が少ないという結果でした。

このことから、家族全体としてそれぞれの領域で時間を割くことが多いため、家族の時間を過ごす時間が必然的に少なくなっているため、家族関係がドライになってしまっていると言えるでしょう。

私がこの「第1章:家族」で最も関心があったことは、「貧困」についてです。
貧困とは、家族の経済的資源が不足している事を意味しています。
ただ、家族においては経済的資源だけでなく、

・文化的資源(親の学歴や本の数、博物館などに行くかどうかなど)
・社会関係的な資源(どんな知り合いがどれほど多くいるか)
・時間的な資源(どれほど時間的な余裕があるか)

などが溜め込まれており、それらは家庭によって大きな格差があります。

現状として、生活保護に関しても親族の資産や収入を調査する事を求められています。
このように簡単に生活保護がもらえないことも貧困の再生産に繋がっているのではないのでしょうか。

という感じで、第1章のざっくりとした内容をお伝えいたしました。

最後に
この本の最後では著者である本田由紀先生の「社会を結びなおす」にも登場する戦後日本型循環モデルを用いてどのように日本を良い方向に持っていくのかということが書かれています。
やはり、本田先生の熱意というものが伝わってきてそのようなバイタリティを持ってこれからの生活を送っていきたいと改めて思う事ができました。


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