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言葉の裏側

最近、「Utakata」という短歌投稿サイトで短歌を書いている。https://utakatanka.jp/kajin/6104

もともと、短歌に特別な興味があったわけではない。
俵万智の『サラダ記念日』を読んで「なんかいいな」と思った記憶はあるけれど、それを読んだのは中学生の頃で、なんだかちょっと当時の等身大の自分とはかけ離れた「大人向けの文学」というような気がして、そこから自分も短歌を書いてみよう!という気持ちにはならなかった。

宇都宮をぶらり旅していたとき、偶然入った「igno…book plus」という素敵な本屋さんで、一冊の本が目に留まった。
表紙が印象的で、何気なく手に取って中を見てみると、短歌集だった。

笠原楓奏(ふーか)『人の死なない話をしよう』

まずタイトルに惹かれて、少しページをめくって、「これは面白いぞ」と確信し、そのままレジへ直行。
ネタバレになるから詳しくは言わないけど、このタイトル、一つの短歌の一部分に使われていて、その短歌を読んだ瞬間、「ああ、そういうことか」と読み手の理解がさらに広がるような仕掛けになっている。
短歌そのものに遊び心がたっぷり詰まっているのはもちろん、本自体にもさまざまな仕掛けや工夫が散りばめられていて、最初から最後までわくわくしながら読んだ。まさに「言葉のテーマパーク」とでも言いたくなるような一冊だ。

短歌といえば、5・7・5・7・7の定型が基本だけど、現代短歌はもっと自由で、31音の中で言葉を自由に区切ったり、そもそも31音のルールをぶち破ってる作品も多い。(私は、31音の音数はぴったり合わせたいけど、その中でできる限り自由にやりたい派)
それがすごく新鮮で、この自由なスタイルにすっかり惹かれてしまった。
そんな経緯で、私も短歌を書いてみようと思ったのだ。

短歌は縦に読むのが個人的にしっくりくることもあって、noteではなく、縦読みができる「Utakata」に投稿している。
自分が書くのも面白いけど、noteみたいに他の人のをランダムに読んでみるのもとても面白い。
自分では考えてもみなかった視点や表現に出会い、「こういうふうに世界を見ることもできるんだ」と感心させられることが面白い。

どんなに長い言葉を尽くしても、何かを完全に表現することはできない。一方で、たった31音の短い言葉が、ときには世界のすべてを言い表してしまうことがある。
短歌は31音の中で、あえて書かれていない部分を読者に想像させる。限られた言葉で、読み手にその裏側を覗かせ、余白を活かして広がりを持たせる、まさに究極の文学だ。
制約があるからこそ、言葉が持つ力が際立ち、そこに自由が生まれることを感じさせられる。

言葉が規範やルールとして機能し、人を制御するこの時代にあって、私は言葉に振り回されるのではなく、その裏側を見つめ、むしろ自分が言葉を玩具のように扱えるようになりたいものだと、つくづく思う。

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