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茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第25note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
愚煎(弐連) It’s not my cup of tea (後)
「大丈夫でしたか?ご令嬢。」
ルリーアンジェの驚きの表情にも素知らぬ顔で、彼は穏やかな口調でそう問うてきた。
「え?ええ。あなた、のおかげで。」
熱に浮かされたかのようにただ単語の羅列で応える。
「それは良かった。では、一つお願いが。」
「え?」
彼はその場の誰にも間を持たせず、即座に彼女の側に寄ると彼女に向かって軽
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第24note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
愚煎(弐連) It’s not my cup of tea (中)
嫌な噂が広がっていることは耳にしていた。
商団を率いる身ゆえに、各方面からさまざまな情報が巡ってくるが、特にアンゲフォース家の動向については、どんな些細な情報であろうとも拾い上げて私の元へ回すようにと。
だが、自分が大きな商談の為にマラーケッシュ公国を離れていたほんの少しの間に、彼女を取り巻く環境がこんなにも揺れ動いていたとは。
note創作大賞2024応募三作品
☆(全54note)茶酵令嬢双書ルミューリア編『溺れる王に仮初の薔薇は笑い~茶酵令嬢は世を”秘”する~』⇓ ⇓ ⇓ ⇓
☆茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》⇓ ⇓ ⇓ ⇓
☆かみさまはうそつきなの? ⇓ ⇓ ⇓
#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第23note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
愚煎(壱連) It’s not my cup of tea (前)
独りの男がそこに、深き遠き闇の淵に生きている。
「アンゲフォース、アンゲフォース。
憎々しきこの名を、あと何度・・・唾棄すべきか。
アンゲフォース。
あらゆる憎悪をかき集めたとて足らぬほどのこの厭忌の情を、どうしてくれよう。
深淵より愛しきアンゲフォースに。
この怨嗟の口づけをおくろう・・・。」
「公国に太陽であられる国王陛下
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第22note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
疎煎(弐連)瞋恚に燃ゆるは・・・されど、よしなきことよ・・・
ああ、この花は茎が腹痛に効いて、花と葉は整腸作用の効能があったはず。
でも、煎じると臭いが強いから、あれをブレンドして飲みやすくしたらいいかしら?
えっと、それから、この草は~
自分の前に飾られている生け花たちの匂いをすうっと吸い込みながら、ルリーアンジェは無意識の内にそこに手を伸ばそうとしていた。
「ルリーアンジェ嬢。もうお食事は
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第21note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
疎煎(壱連)瞋恚に燃ゆるは・・・されど、よしなきことよ・・・
あの侯爵邸での夜会の後、ルリーアンジェはマラーケッシュ公国首都のアンゲフォース伯爵本邸に戻った。
次から次へと茶会の予約が舞い込み部屋に籠ることになるのは、ルリーアンジェにとっては、なにより嬉しいことだった。
ルリーアンジェは夜会に出てアンゲフォースの”秘”された令嬢との特別な茶会を求める貴族達をあしらうのは好きではない、というか本
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第20note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
瞻煎(肆連) 抽出の頃合いは珪砂の流れるままに・・・と云う訳には。
あれから。
あの人は、どうしただろうか。
侯爵邸の庭園をぶらりとふらつきながら、ルリーアンジェは奥まったところに東屋を見つけて入りこんだ。
「ふううう。疲れた。」
東屋の中の長椅子に座ると椅子に足を伸ばして楽な姿勢を取る。
なんて綺麗なんだろう。
緑の蔓に編み込まれたかのような東屋は天井がガラス張りに設えてあり、その内外の
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第19note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
黎煎(参連) ”真っ赤な薔薇”が『プールス ノビレス』に捧ぐは・・・
「今夜は、夜会の薔薇に擬態<へんそう>しなくていいのですか?」
ルリーアンジェの側に近寄って来たその男性は、微笑みながら彼女にそう言葉をかけた。
ルリーアンジェは手に持っていた扇を自分の顔の前で大きく開くと、視線だけを浮かばせながら、彼を凝視する。
落ち着いた色合いのグリーンの衣装が、シャンデリアの光によって光沢を放つこと
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第18note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
瞻煎(参連) 抽出の頃合いは珪砂の流れるままに・・・と云う訳には。
レイビオン卿は皇城からの急務という呼び出しに抗えず、急遽、エーリガントの首都へ向かって出発した。そして、帰宅予定日を幾日も過ぎたが、おそらくは皇城での仕事が長引いているのか、ルクステネブラエ湖の屋敷に戻って来ることはなかった。
ルリーアンジェは、自分に残された時間がもはや残り少ないのだという覚悟を決めると、ほぼ毎日のように訪れ
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第17note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
瞻煎(弐連) 抽出の頃合いは珪砂の流れるままに・・・と云う訳には。
「なんて美しい、のだろう」
ルリーアンジェは壁に吸い寄せられるようにその絵画に近寄った。
漆黒の空を駆ける美しい黄金の獣。
その虹彩の瞳はまるでそこに在るかのように、真っすぐにこちらを見つめているかのような錯覚さえ覚える。
それは、とても印象的で、神秘的で、ある意味、煽情的で。
まるで真摯な黄金が彼女を射貫くかのようだった
茶酵令嬢双書ルリーアンジェ編☆第16note《『わたくしのお茶は飲めない、とでも?』~茶酵令嬢は世を”秘”する~》
瞻煎(壱連) 抽出の頃合いは珪砂の流れるままに・・・と云う訳には。
ルリーアンジェ・ステラクス・アンゲフォースは手にしていた文献を読み終わると立ち上がって窓辺まで歩いていった。
「夕陽が。」
彼女の唇から思わず言葉が洩れる。
とても、綺麗だわ。
まるで湖が夕陽を呑み込もうとしているみたい。
聖ルクステネブラエの湖面は琥珀色に煌めき、そこに浮かぶアンビリカスは幽玄の美そのもののように儚げにそこ
かみさまはうそつきなの? 第3note『はっぴい』
あの子のこと。
ずっと、ずっと。
あの夏・・・。
初めておうちに連れて帰ってくれた日。
いつも側から離さずにいてくれたね。
リビングでご飯食べる時も、みんなでテレビを見てる時も、ずっと側に居た。
お風呂に一緒に入るんだって、そう言って駄々をこねてた君を今でも覚えてるよ。
お湯につかったら、錆て壊れちゃうよって、パパに言われてやっと頷いてたっけ。
その後、お布団で一緒に眠ったね。
かみさまはうそつきなの? 第2note 『いのり』
ぼくはぴーすけ。
ぴーちゃんじゃなくて、ぴーすけさ。
ぼくは生まれた時、たくさんの仲間といたような気がする。
そこにいたのは、赤、白、黄色、緑に青、みいーんなぼくみたいにコロンと丸い豚だった。
そこはぼく達みたいにたくさんの色々な動物たちがいる場所で、ぼくはライトが眩しいなっていつも思ってた。
そしてその場所で、ぼくとぼくの仲間達は、いつも何かを待ってたんだ。
そう、それはぼく達を連れ
《完結!》第54note☆茶酵令嬢双書ルミューリア編『溺れる王に仮初の薔薇は笑い~茶酵令嬢は世を”秘”する~』
祀煎(参連)オムニア・テンプス・ハベント~連々たる繚乱の・・・華燭を捧ぐは、ただその時にこそ。(後)
於マラーケッシュ公国
「この映像魔具は実に素晴らしいものですな。」
「エーリガントの国力は空恐ろしい程強大だ。」
王宮の大広間に設置された魔具に映し出される婚礼の儀典を見ながら、マラーケッシュの貴族達はエーリガント帝国の強大さ、身分を越えてあらゆる場所の者まで魔具を配置した懐の大きさに感嘆の念を