再会
驚いたことに、#1を書いて投稿したまさにその日、彼から1年ぶりの電話があった。
運命の作用怖すぎる。というか運命信じたくないんだけど、あまりに自分の力ではない何かがうごめいている感覚。
ライオンキングで、サルの毛がめぐりめぐってシンバに届くイメージ?
決して自分の力だけでは辿り着けないところに、自分の伝えたいことが、なんとまぁ届いちゃったみたいな。
電話がかかってきたちょうどその時、私は自分の大事な人といたので、(そしてなぜか私のスマホは着信音を鳴らさないので)気づかなかったのだけど、その帰り道に、いつもの公園の前をゆっくり歩いていた時、着信履歴に気づいた。
驚きつつ、でもどこか、知らせが来る気もしていた感じもなくもなくもない感じ。
15分待って!とメッセージを送って、急いで帰ってきて折り返し電話をした。
1年ぶりに画面越しに見た彼は、ぼっさぼさの髪の毛で、クマができていたけど、顔が見れるだけでうれしかった。生きていたの、よかった。
彼は、先日大学から合格通知が来て、私に電話をする気になったそうな。
それを聞いて、人の大学合格が嬉しいのは初めてだと思いながら、おめでとう、と言った。良かったね。良かった。
それは彼の大学合格自体が嬉しかったんじゃなくて、彼が大学に行っていない自分を負い目に感じていたから、それがなくなって、本当に良かったな、嬉しいな、の嬉しい。
その後は、いつも通りつらつらつらつら喋った。やっぱり、noteに書く彼は美化されてたな。話は長いし、何が言いたいのかよく分からないし、すぐ保身的になるし。
でも、まぁいいや、と聞いてられるのが、大事な人だな。
1時間くらい喋って、「まだ喋りたいから、折り返し電話する」と言われた。「なんかあるの?」と聞いたら、「彼女が仕事終わって、迎えに来て欲しいらしい」と返ってきた。
瞬間、胸が痛んだ。
「そうなんだ、じゃあね」
その気持ちを読み取られたくなくて、私からすぐに電話を切った。気にしていないふりをして、内心すごく動揺していた。
のがすごく、なんか嫌だった。
彼が今、私でない誰かを好きで、私でない誰かが彼のことを好きであってほしいという気持ちはあるのに、それを素直に思えない、喜べない自分がよく分からなくなった。
私にも今、大事な人がいて、それは彼の代わりなんかじゃ全然ないのに、まだ彼に未練があるみたいで嫌だった。
私が彼にとって特別で唯一であることも、
彼が私にとって特別で唯一であることも、
これまでも、これからも、変わらないのは分かっているし、
彼の方もそれを分かっていることも分かっているんだけど、
でもなんかな、そっか、そうだよな。2年も経ったんだもんな。私達が離れてから。
2時間後に彼は本当に電話を折り返してきた。
私は、震えているスマホを見ながら、電話に出るか否か躊躇していた。
スマホが動きを止めたのを確認して、独り言。ひとしきり「どうしよぉ」と呟いて、意を決してかけ直した。
もしここで電話をしなければ、また彼とは1年間か、それ以上話せないだろうと思った。
普通の会話が、普通の沈黙を挟んで始まった。
彼について電話の前日、偶然考えていたことや、彼について書いたことを何度も言おうとしたけど、
言葉が出なかった。
いざ彼を目の前にして、自分の感情に向き合うのが怖かった。
何回か、彼が「君は僕にとって特殊な例だからね。」と言った。
私は自分の顔色を悟られないように、毎回「そう?」と返した。
やっと最近、自分が自分の感情に素直になってきたと思っていたのに、全然表現できないじゃないか、これじゃあ2年前と一緒だ、とちょっと絶望した。
どうにかしたくて、「生きてるだけでいいよ」と言った。ちゃんと言えた。
3時間話し続けて、黙り続けて、私達は互いに「おやすみ」と言った。
2年ぶりのおやすみ。
おやすみ。
電話を切ってから、ちょっと考えて、メッセージを送った。
彼のことを昨日考えていたこと、日記に書いたこと、生きているのが分かって今日は嬉しかったこと
を伝えた。
泣き笑いの絵文字が返ってきた。
時々でいいから、これからも、
あなたがどこかで生きてるって教えてほしいな
絵文字一個でいいからさ、
彼女がいるの、ちょっと複雑な気持ちだったけど、でもやっぱり、あなたは誰かにいつも愛されていてほしい
ちゃんとご飯食べて、
眠れる時に眠って、
生きててね
ずっとずっと、私の大事な人
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