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昨日の詩 16

昨日のTwitter投稿詩。

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詩集『空想少女』 | 詩集ゆきみず屋 yukimizusosogi.booth.pm/items/3940055

#15

狂瀾怒濤の外側で
一人芝居をしている
青酸カリの入った瓶
小道具でしかないから
毒物など持っていない
けれどもこれから私は死ぬ
脚本通りに悲劇的に不遇のまま
これから私は死ぬ
狂瀾怒濤の外側で
一人芝居を続けて
私が死んだあとに
幕は降りることは無い
私は起き上がり
舞台から下りる


#16

塗りつぶしたのはどうして?
教室の中で顔の見えない先生が
真っ赤に染まった画用紙を突き出す
この下に、青い象を描いた気がする

塗りつぶしたのはどうして?
顔の見えない先生の声は
女性でも男性でも機械でもない
まぎれもない違和感を持つ声だ

塗りつぶしたのはどうして?


#17

太陽の光を吸収して
熱くなっていくドレス
灼熱の着心地のままに
優雅な笑みを浮かべて
誰かと踊りたがっていた
履き慣れないハイヒール
ドレスは構うことなく踊る
この漆黒が見る人の目に焼き付くまで


#18

袋に入れて封をして
知らない町に送った

それは空気のような
それは手紙のような

みかんの色をした
みかんの匂いのした
みかん箱の上で綴った

私の柑橘系の寂しさです
町に届いて、誰かに届いて、

アーケードの上、踏まれ続けても



頭でわかっていることが、解決策とは思えない。思考にはいつも限界があるし、人は放っておくとネガティブな考えに陥ると何かで聞いた。

心配性で慎重だから生きてこられた。進化論的な話になれば、なるほどと思う。ジャングルの中で裸のまま無謀なことをした祖先はみんな命を落とした。「そんなことをしたら危ないよ」と思っていた人たちだけが生き残った。それでも文明も命の安全のためにここまで発達した。全部生き残るためという本能的な感情で発展して、争いが起こらないように法律を作り、道徳を作り、倫理を作った。人は殺し合う生き物だから、人はか弱いから、安全に生き延びるために、知恵を絞って今日まで生き抜いた。

残されたネガティブは置き土産。次の進化まであとどれぐらいかかるか、少なくとも私が生きている間に、その瞬間には出会えないだろう。けれども、怖がりは強みだ。一番生き残る可能性がある。勇気と無謀の違いは何か。怖いという気持ちがあるかどうか。怖いから、備える。怖いから、計画する。理性的に見えることも、実は本能の働きなのかもしれない。

体の力が抜けない。寝ても寝ても眠い。どうでもいい、もう嫌だ、全部嫌だ、つらい、泣きたいのに涙が出ない。大人になればもっとしっかりするものだと思っていたけれど、違った。でも子供に戻りたいとは思わない。あの頃は良かったね、なんて、過ぎた熱さを忘れているだけだ。

宿題も試験も受験も過ぎた熱さだけれど、もう一回はいらない。大騒ぎして笑っていた頃にも苦しさがあったこと、自分の存在についての他者との齟齬に苦しんで一人になりたかったこともあった。自分は結局一人なんだと自分で突き付けていた。幸せにどこまでも浸れなかった、手放しに浸っても終わることに恐怖していた。

喜怒哀楽の喜と楽が無い、と親に言われた。親は親で怒が抜け落ちていると言った(私の子供時代めっちゃ怒ってたじゃん…)

たしかに哀と怒で私は生きている。喜びが持続しない。心から楽しめない。終わりがあることに安堵しながら、終わりが来ることに怯えている。

馬鹿にしてきた奴等を見返してやりたいという気持ちがあった。いつも振り返って、子供時代の怯えている私に「ここまで来たよ。強くなったよ。他の奴等を追い抜いた。」と言い聞かせていた。でも、子供時代の私は復讐より安心を求めていた。ただ、無邪気に遊んでいたかっただけ。

もう、無邪気さとはかけ離れている。しかし、幼い所が今でもある。認めたく無いけれど、私は幼い。大人になれていない。ずっと背伸びをして来ただけだった。爪先が疲れて、足が疲れて、座り込んでいる。もう背伸びもできない。社会的な私の無理を肌感覚でわかっている。無視して麻痺させてきた、無理が、今は全身に覆い被さる。


無抵抗なまま、私は全部投げ出したくなる。

毎秒、気を取り直しては全部が嫌になる、を、繰り返している。合間合間に私の世界は滅亡している。コマの中で創造され次のコマへの空白で滅亡、次のコマでは日常、そんな毎日。

だから、詩を書こう。


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