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【詩】風の時代 骨董通りを歩いていると

夏に骨董通り「菊家」の水ようかんを
故向田邦子さんの霊魂に捧げて、
新しく生まれ変わる魂の
新しい人生を歓迎して。



骨董通りを歩いていると
人がことばを紡いだのか
街がことばを紡いだのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人がエッセイを書いたのか
街がエッセイを書いたのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が服をつくったのか
街が服をつくったのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が菓子をつくったのか
街が菓子をつくったのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人がジュエリーをつくったのか
街がジュエリーをつくったのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が音を奏でたのか
街が音を奏でたのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が詩を書いたのか
街が詩を書いたのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が花をいけたのか
街が花をいけたのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が絵を描いたのか
街が絵を描いたのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人が仏像を彫ったのか
街が仏像を彫ったのか
分からない

樹齢六百年のくすのき(楠)が
いのちを捧げて観世音(かんぜおん)

十年かけた仏師のときが
いのちを捧げて観世音(かんぜおん)

骨董通りを歩いていると
人が仏像を彫ったのか
仏が仏像を彫ったのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人がことばを紡いだのか
ことば(ロゴス)がことばを紡いだのか
分からない

骨董通りを歩いていると
人がことばを生かすのか
ことば(ロゴス)が人を生かすのか
分からない


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