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暗い季節の底 まどろみで先を感じる

第42週 1月19日〜1月25日の記憶。 それを探る試みです。 
一年間のルドルフ・シュタイナー超訳に挑戦中です。

今週は、暗い冬の闇の方へ誘われます。しかし、そこには、眠りから覚める“まどろみ”のような感覚があることに気づかされるのです。それは、春の感覚を内包しているものでもあり、先のものでもあり、未来でもあり、温かな心をもつことなのです。人生を選び取るために…

では、読み解いてまいりましょう。


 

  

Q‘. ZWEIUNDVIERZIGSTE WOCHE (19. JANUAR – 25. JAN. [1913])

42.
Es ist in diesem Winterdunkel
Die Offenbarung eigner Kraft
Der Seele starker Trieb
In Finsternisse sie zu lenken
Und ahnend vorzufühlen
Durch Herzenswärme Sinnesoffenbarung.

Anthroposophischer Seelenkalender, Rudolf Steiners,1913




  この暗い冬のなかで
  自らのチカラは
  心の強い反応で
  暗闇へと導かれる
  そして先にあるものを感じるのだ
  温かな心で五感から受け取ろう。





 闇のなかで芽吹く



その昔、登山に夢中になっている時期がありました。「冬山はリスクが大きいから止めて…」とまわりから心配されるも、その忠告をはねのけ、雪山の静寂と白き世界の美しさに魅了され、それに向けた訓練をかさね、天気予報とにらめっこして、しずしずとこの時期に山へと出かけることがありました。

ちょうど今頃になると、雪が締まって落ち着いてくるのです。歩きやすくもなり、雪崩などリスクも減るのです。そして、眺めの良さそうな尾根筋の標高2,000メートル付近に雪洞を掘り、そこで一晩を過ごすという冒険に出たことがありました。

雪洞を掘るためには、当然、雪がたっぷりと積もっていることが条件になります。そして、洞窟のように横から掘れる斜面を探し、あたりを踏み固めてから、エッさエッさと、寒空の下で汗をかきながら谷間に雪をはね除け、トンネルを掘ってゆくのです。

1メートルぐらい掘ったところでしょうか、木の枝が出てきてしまいました。こうなってしまうと、掘り進んでもさらに多くの枝が出てきてしまい、寝蔵としてはうまくありません…。居心地のよい雪洞で喰らう鍋を頭に描きながら、もう一度、別の斜面で汗を流すしかないのです。

しかし、そのときの枝なのですが、深い雪に埋もれているにも関わらず、しっかりと芽がついているのに驚かされたのです。極寒の真っ暗な雪のなかでムクムクと植物が成長している姿。それが山の斜面一帯を埋め尽くしているのですね。

植物にとっては、あたりまえかもしれませんが、冬が内包しているパワーを感じ、春にはふたたび芽吹き輝きはじめることを想像してみると、大自然のチカラに驚かされる出来事だったのです。

この象徴的な出来事は、“季節のうつろい”と“眠り、まどろみ、覚醒”といった人間の意識状態との共通性を理解し、自然界と人間存在との深いつながりを探るシュタイナーの思想にも通じるのです。このテーマは、循環的な時間感覚や意識の変容、そして生命のリズムに関わる学びが含まれているのですね。

四季の変化、眠りと覚醒などの、“静と動”の二面性は生命にとって不可欠なリズムです。リズムは、エネルギーの保存と放出、集中と解放のバランスを取る役割を果たします。このような周期的なプロセスがなければ、人間や自然は消耗し、やがて睡眠不足で倒れてしまうように滅びてしまうのかもしれません。

自然は、春(新たな覚醒)、夏(完全な活動)、秋(成熟と緩やかな変化)、冬(休息と静止)という循環的なプロセスをたどります。人間の意識状態は、眠り(無意識)、まどろみ(半意識)、覚醒(意識)、活動(生活)の段階に分けることができます。この変化は、日々繰り返されるリズムをもつサイクルです。

シュタイナーの“こよみ”では、自然の循環と日々のリズム、そして人間の成長を、“再生と変容の連続性のあるサイクル”としてとらえています。冬に植物が枯れ、種子が眠るように、眠りのなかで人間の身体と心が再生を遂げるとしています。そして、春の訪れとともに新たな生命が芽吹くように、覚醒は人生の新たな意識の活動を象徴しているのです。

まどろみは、眠りから覚醒への移行の中間段階であり、意識が揺らぎながら新しい状態に向かう時期です。この過程は、冬から春に向かう季節に似ています。冬は、休息し静止しているようにみえますが、覚醒への移行期であり、自然や人間の意識は、次のサイクルへの下準備を無意識のうちに着々と進めているのです。


静寂のなかに、まどろみにも似た、
不動の動きのようなものがあるのです。



東洋哲学やインテグラル理論の視点からも、意識状態と自然の循環は分離された現象ではなく、全体的な存在の表現とみなされます。たとえば、禅においては、“目覚め(悟り)”が、四季折々の自然との調和のなかで語られるのです。同様に、インテグラル理論では、個人の意識の進化と宇宙全体のプロセスが相互に関連し合うとされています。

人間の眠りや覚醒のサイクルは、自然のリズムと共鳴しながら、自己超越や深い気づきへの道を示しているのかもしれません。冬の静けさのなかで自己を見つめ、春の躍動のなかで新たな目標を見出すように、意識と季節は内的・外的成長の可能性を象徴しているのです。


そして、自然のリズムを尊重し、
それに調和する生き方を模索することが、
あなたの幸福と地球の未来にとって重要な意味をもっているのですね。




 脳が感じる宇宙意識



そして、「その先にあるものを感じるのだ」といわれれば、春を象徴するような未来が連想されます。そのようなことを考えていると

「わたしは、天国に行ったかのような幸福感を体験したことがある。」


このような発言をする人が現れました。あなたはどのような人物を想像しましたか。いかがわしい人物でしょうか。瞑想できわめた遠い眼差しをもち、袈裟のような服を着たスキンヘッドの凜々しい人物でしょうか、極限での冒険を乗り越え、大自然のなかで彼岸をみてきたような日焼けしたドレッドヘアーの人物でしょうか。

これらの人々は異様に澄んだ目をしていて、普通ではとうていたどり着けない境地にいることを感じますよね…。

しかし、薄ピンク色の手術着を着たまじめそうな女性が
水がしたたるような、“ヒト”のリアル脳みそを手にして
プレゼンテーションをはじめたら…


2008年の伝説的なTEDの一幕です。


脳科学者のジル・ボルト・テイラー博士は、脳出血により認知機能、身体機能を失ったにも関わらず、そのときに、この上もない幸福感に包まれたそうなのです。

理由は、左脳が機能を失い、右脳でしか認識できなくなったときにその状態におちいったというか、境地に達したのでした。



英雄が、左脳の正義を追求する姿勢と自我という名の剣を置くとき、左脳の「個」から解放され、起源である万物の宇宙の意識へふたたび溶け込むと言われています。

水滴が海に戻るように、英雄は一瞬にして、自分の魂が生まれる前に知っていた、永遠の愛とでも言うべき、このうえない幸福感に包まれます。自分がクジラであることを忘れていた巨大なクジラみたいに、英雄の魂は、すべてのものがひとつとなった静かで幸せに満ちた海へと、滑り抜けるように戻っていくのです。

『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン)』  ジル・ボルト・テイラー著


そして、脳の構造を学び、別の回路をはたらかせられれば、いつものあなたの考え方や感じ方のパターンとなっている否定的なクセなどを変えてゆけるといいます。

左脳が、暗い不安に満ちた世界に襲われているとき、常識的に発達してきた脳回路は、不穏な現実をまきちらし、空虚な充溢を生み出すのです。それは、生命維持のための強い反応なのだそうです。

そして、右脳が活性化したとき
「すべてのものがひとつとなった静かで幸せに満ちた海へと」


戻ってゆけるというのですね。


脳は、2つの感情、2つの思考の合計「4つのキャラ」で構造化されているそうです。頭のなかで強いキャラが主張をはじめているときは、異なるキャラはその声に押しつぶされている状況なのですね。

キャラたちが、ワンチームとして協力し合えば、心穏やかな人生が手に入ることを証明してくれたのです。

脳科学の分野の『4つのキャラ』と、ユング心理学の『4つの元型』は符合すると、テイラー氏はいいます。〈キャラ4〉の真の自己を活性化できればそこに戻ってゆけるのです。


〈キャラ1〉はペルソナ
〈キャラ2〉はシャドウ
〈キャラ3〉はアニムス/アニマ
〈キャラ4〉は真の自己

『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン)』  ジル・ボルト・テイラー著


自分を例にすると…、

アーティストであるわたしは〈キャラ2〉を『カネゴン』と名付けました、「制作はいいけど制作費や時間はどうするんだよ」といつも騒ぎ立て不安を煽るような忠告をしてくる恐怖心のキャラです。

しかし、いいかえると『カネゴン』は、わたしのことを必要以上に心配してくれているのです。きちんとした人生を歩んでいけるのか、心配で心配でしょうがない親心のキャラです。

そうすると〈キャラ1〉の『つみあげさん』が、「大丈夫。余裕はないけど…生きてゆけるだけのモノはあります、だから安心して」と理路整然と家計簿をみせながら『カネゴン』を諭してくれるのです。

すると、〈キャラ3〉〈キャラ4〉は、「やったぁー、ラッキー」っとなって今日も元気にnoteの執筆をしているのあります。

このような具合に、『カネゴン』を野放しにせず、それぞれのキャラが脳内でしっかりと対話できるようになると、誰しもが穏やかな人生への好循環が生まれてくるというのです。



これらのキャラがどのように関わり合うのかを詳しく知りたい方は、ぜひ、テイラー氏の『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン)』を読んでいただけると、ストンと腑に落ちていただけるかと思います。

あなた自身の脳にいる『4つのキャラ』に名付けをすると、自分の思考のクセの分析にも役立ちますし、良い部分も再確認できるはずです。


脳科学と心理学を融合させ
あなたのチカラで、あなたの“脳”を動かし
あるべき“あなた”になる方法を教えてくれます。


  

 


2025年1月 芽




 


 一瞬ごとに選び取る力



「私たちはだれ?」  

私たちは、器用に動く手とふたつの認知する心を備えた、宇宙の生命力。私たちは、この世界のなかで、自分が何者で、どんなふうでありたいかを、一瞬ごとに選び取る力をもっています。  

今ここで、私は右脳の意識に踏み込むことができます。そこでの私は宇宙の生命力です。私は私を作っている五十兆個の美しい天才的な細胞の生命力であり、すべてのものと一体化しています。  

あるいは、左半球の意識に入ることも選べます。そこで、私はひとりの個人、肉体をもち、〝(宇宙の)流れ〟から離れ、あなたたちとも離れた存在です。  

私は理性的な神経解剖学者のジル・ボルト・テイラー博士でもあるのです。  
私のなかには「私たち」がいます。どれを選びますか……そしていつ選びますか? 右半球の深い内なる平和の回路を動かす。その時間が長ければ長いほど、より多くの安らぎが世界に投影され、地球がより平和になると信じています。  

そして私は、この考えをみなさんに広める価値があると信じています。

『WHOLE BRAIN(ホール・ブレイン)』 ジル・ボルト・テイラー著



以上は、TEDでのプレゼンテーションの締めのコトバです。
あまりに、深く美しい内容なので蛇足をはさむ余地がありませんね。
大いなるものとのつながりは、こういうことなのでしょう。


“どんなふうでありたいかを、一瞬ごとに選び取る力をもっています。”


ここにつきるのでしょうね。
温かな心で五感から受け取った感性を信じ
右脳のキャラたちが活動できるようにすること。



そして


“わたしのなかに、「私たち」がいます。”



もう、寒すぎて…
春が待ち遠しいですね。






シュタイナーさん
ありがとう

では、また





Yuki KATANO(ユキ・カタノ)
2025/1/19









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