2019読書
12月ともなると、今年読んだ本について書きたくなるわけですが、いざ書くとなると迷ってしまってなかなか書き出せずにいました。
そこで、本を閉じている時にその本について考える時間が多かった本にしよう、と思い付きました。
今年は、たぶん笙野頼子さんだわ。
と、ここまで書いた時点で既にスキの数を諦めてる気がするけど、わたしのスキは数より質なので、数はどうでもいいことだったのでした。
それはともかく、今年は頭の中で彼女の作品の断片がいつまでもぐるぐると巡る年でありました。
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ある日、書店で何気なく手にとったのは、笙野頼子氏の「ウラミズモ奴隷選挙」でした。
https://www.amazon.co.jp/ウラミズモ奴隷選挙-笙野頼子/dp/4309027369/
その表題が気になったというより、帯に書いてある文字が目に入ったからです。
「千葉県S倉市」 わたしの故郷の地名が突然目に飛び込んできたのでした。
でも、なにやら怪しげな表題、気になるけど重量感のあるハードカバー、結局その日は買えずに帰宅しました。
帰宅してもその「千葉県S倉市」の帯の本がどうも気になって、Amazonにてレビューを見てみると、どうやら別の作品の続編だということが判明。
それならその前の作品から読んでみよう、と思った次第です。
そんなわけで、最初に読んだのはこちら。
https://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/4103976047/
水晶内制度
原発を国家の中枢として、日本政府に黙殺された女達の、闇から生まれた女人国ウラミズモ。
何ともキャッチーな紹介文に心惹かれて読み始めましたが、途中で2003年の作品である、ということに驚きました。とても予言的。
2003年の時点でこの本を読んで、当時のわたしに作品の意味が分かっただろうか、と思うと全く自身がありません。15年後追いついた感。
記紀神話の読み替えと書き換えという職業についても、その重要性や、その恐ろしさについて、昔のわたしなら気付かなかった気がするのです。
作者の筆力に圧倒されて、興奮覚めやらないまま、次の本を読みました。
https://www.amazon.co.jp/ひょうすべの国――植民人喰い条約-笙野-頼子/dp/430902520X/
ひょうすべの国
こちらはTPP(FTAも含)発効後の世界を描いたディストピア小説です。完全なるフィクションなのにもうこの小説の世界の兆しが日本のあちこちに見え隠れしていて、フィクションとは思えません。わかる人には痛いほどわかる、この社会の「詰んでる感」をこんなに分かりやすく、魂と怒りを込めて書いてくれる人はいただろうかと思うのです。全部引用したいくらい。
そしてようやくウラミズモ奴隷選挙。
世界金融経済が人間の尊厳を収奪して、権力を持たない女性にとって完全なるディストピアと化した男尊国の日本から独立して、女尊国のウラミズモが存在する。が、そこも決してユートピアではないのです。
どの作品もですが、新自由主義や、国の在り方や、社会構造、ジェンダーやフェミニズム等について日頃から考える習慣のある人にとっては面白い作品と思います。実はとても多層的な内容だと思うので、わたしにも読み解けていない部分があるのだと感じます。
個人的には舞台が故郷のよく知る場所で、ちょっとした風景描写がいちいち懐かしい、という不思議な感覚も楽しめました。
その後も笙野氏の作品を追いかけた2019年でした。破綻しているように見せかけても、その世界にまんまと連れて行かれていて、確実に爪痕を残されてしまう。文学の力を再確認させてくれる凄い作家さんです。
彼女の作品を今まで知らずにいたのは悔しいけれど、昔のわたしには恐らく手に取ることもできなかった本です。そして読んだとしても、作者の意図は汲み取れなかった気がします。凡人なりにですが、多少とも理解できるようになってから出会ったことは幸運だった気もします。
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そして、毎年思うこと。
読書ノート、なんて大袈裟なものでなくていいから、本のタイトルと日付くらい書き留めておくべきなんでしょうね。
なんて、また来年もやらないんだろうなあ。笑
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