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作品を「一人」で作るか、「大勢」で作るか

映画は200人くらいと作るんですけど、いろいろなジャンルのクリエイターが1本の作品に向き合っていて、アルゴリズム化できないもの同士がぶつかり合っている。結果、自分のイメージに近づくときもあるし、裏切られることもある。そこが面白いんです。
理系に学ぶ。/川村元気)


映画プロデューサーや小説家として活躍する川村元気さんが、15人の理系人と対談する本『理系に学ぶ。』の感想、第4回です。

第1回 「無名」のメリット
第2回 「売り方」の哲学
第3回 作り手が他者のコンテンツに接するときのスタンス


きょうは作品作りに対して『一人で向き合うか』『大勢で向き合うか』というテーマについて書きます。

結論から言っておくと、きょうのnoteに結論はありません。


川村元気さんは、ご存知の方も多いと思いますが、映画プロデューサーとして活躍する傍ら、小説家としても活躍しています。

『物語を作る』という点においては通底していまが、大きな違いは『映画は大勢で協力しながら作り、小説は極論一人で作れる』という点です。

この点に関して、川村さんは本中で、『両方にそれぞれの魅力がある』という旨のコメントをしています。

映画は200人くらいと作るんですけど、いろいろなジャンルのクリエイターが1本の作品に向き合っていて、アルゴリズム化できないもの同士がぶつかり合っている。結果、自分のイメージに近づくときもあるし、裏切られることもある。そこが面白いんです。一方で、一人で書く小説は何もかも全部自分で引き受けないといけないから、ひたすら孤独な苦行なんですけど、ときどき自分が自分を超える瞬間みたいなものがある。


それで、この議論どっかで既視感あるなと思ったら、そう言えば西川美和さんという方も、小説家と映画プロデューサーという、2つの顔を持っていました。

ちょっとだけ川村さんと西川さんが違うのは、西川さんはインタビューでたびたび、『映画のほうが予算や尺などの制限が多い』や『映画を作るにあたって、自分の意図したものが伝わらないことが多い』など、少し映画に対して否定的なニュアンスのコメントが多い印象であることです。


ただ、最終的には『それも含めた人間同士のコミュニケーションが楽しい』だったり『大勢でなにか一つのものを作り上げる達成感がある』だったりの、ポジティブなコメントで締めることが多いんですが。


ぼくの勝手な想像ですけど、クリエイターというか、なにかを表現したい人って、基本的に自分の思い描いているものが最高だと思ってるし、それを純度100%で形にしたいと思ってる人が大半だと思うので、一人でものづくりを完結させたいはずです。

それでもより規模の大きなものだったり、複雑なものを作ったりするには、自分ひとりでは到底無理な場面が来ます。

そのときに、『自分の下位互換』ではなくて『その分野のプロ』の方と協働して、自分1人が単純に分身したものよりも良いものが作れたときに、クリエイターとして次のステップに行けるのかな―と、ぼんやり考えることがあります。


というのも、ぼく自身、自分のことをクリエイターと認識しているわけではないですが、いまライターとして活動するなかで、企画からインタビュー、カメラ、執筆、編集、運営までほぼ一人でやるなかで、『他者と協力してなにかをする』ということが自分にもできるようになれば、発信の仕方にもっと幅と深さを出せるようになるだろうなーと考えることがあるので。

ただ。

とは言え、究極的に最後はやっぱり一人というか、どんな作品も核となるところはたったひとりの圧倒的で尖った熱狂と個性から生まれるものなんだろうなーとも思っています。


今回の本中に川村さんの対談相手として登場する、ロボットクリエイターの高橋智隆さんは

みんなでわいわいやるのも楽しいんですけど、結局、小学校の頃に「みんなで宿題やろうぜ」って言ったところで、はかどらなかったのと一緒です。外部からの刺激や人と会ったりしゃべったりすることも必要だけど、最後のところはやっぱり、一人でうんうん考えて出すものだと思っています。

と述べています。


キンコンの西野さんも、絵本『えんとつ町のプペル』を分業制で制作したことが話題になりましたが、あれも脚本やベースとなるラフ画(=核)は、たしか西野さんが一人で書いていたはず。


だから結論、一人がいいとか大勢がいいとかはまったくないんですが、どっちにしろ、大勢でやるなら一人ひとりの能力が低くていいことはまったくありません。

むしろ逆で、大勢でなにかを作るにしても、一人ひとりがものすごいスキルと熱量をもったうえで掛け算したときにこそ、大勢で作った価値が出るし、一人の作品にはその人の純度100%の表現が込められているという意味で価値のあるものだなと思いました。

答えはないです。


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藤本 健太郎 / 編集者
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