2017年10月の記事一覧
「直感」文学 *深夜の音楽*
深夜に流れる音楽は、普段聴く他の時間の音楽よりずっと、
僕に寄り添ってくれているように感じる。
多分、気のせいなのかもしれない。
多分、深夜という静寂が、日中の僕より寂しくさせているのかもしれない。
だからせめて、音楽くらいは僕に寄り添ってくれてるって思いたいのかもしれない。
多分、そうだ。
だから、そうだ。
それは分かってる。分かってるのに、なぜか、
深夜に聴く
「直感」文学 *”ホットワイン 600円”*
「なあ、あそこにホットワインって書いてあるんだよ。……あれ、どう思う?」
向かいに座ったトオルが不意にそんなことを言うから、僕は彼の視線を追っかけて、そのメニューが書かれた紙を見つめた。
”ホットワイン 600円”
確かにそこにはそのように書かれていた。
「いや、暖かいワインなんじゃないの?」
僕がそう言うと、
「そんなもんは分かってるっつの。そうじゃなくて、美味いのかな?って
「直感」文学 *足跡と魔法。*
「ほらーそんなに走ったら危ないでしょー!」
3歳になったミユは、その真っ白な雪を見てえらく感動していた。
彼女にとっては初めて見る雪だから、無理もないかもしれない。
「ねえー、どうして白いんだろう」
両手でそれらをすくい上げて、頬を赤らめながらミユはそう言った。
「ねえーどうしてだろうねー。魔法がかけられちゃったのかもしれないよー」
「まほう?」
「そう魔法」
「まほうってなに?」
「直感」文学 *私の意見*
私のような「本屋の人間」は、なぜだか本とばかり接していると言われることが多い。
確かに私が勤めている書店には、もちろん本がたくさんあるのし、たくさんの本を検品したり、棚に入れたり、またはそこから差し引いて出版社に返品したりもするのだけど、そればかりではないことを皆にも伝えたいと思う時が、ふとあったりもする。
人と関わる仕事なのよ、もちろん本を挟んだ仲だけど。
そう言ったところで、理解
「直感」文学 *ずっといられるなら、その不可視な中で。*
何を考えていったら答えが見えるのだろうか。
僕は今、そんな不可視な場所にして、その”見えるか見えないか分からないもの”を相手に、思考を続けていた。
どこを、どのように、どうすれば、その場所に行けるのだろうか。
そして、それが見えた時に、僕は何を思うのだろうか。
答えがないからこそ、今はまだここにいることができる。
答えを知ってしまったら、僕はもうこの場所にはいられないかもしれ
「直感」文学 *家族が増えるというコト*
妹が結婚した。
それは僕としては純粋に喜ばしいことであるし、ただ素直に祝福したいと思う。
「家族が増えるってどんな感じ?」
昨日妹から電話でそんなことを言われた。
僕はいつからか、あまりお互いがお互いのことを意識しなくなっていたから、突然の電話、そしてそんな内容といきなり言われても、僕は何をどう返したらいいのか分からなかった。
その内容云々の前に、妹に対して僕がどのように接
「直感」文学 *暖かくて冷たい食べ物*
「暖かいものの中に冷たいものが入っているって食べ物あるじゃない?……ごめん、今すぐにそういった食べ物にどんなものがあるのか思い出せないのだけど。……ただ、そういう食べ物よ、分かるかしら?私はそれがとても好きなのよ」
フジサキユカは、僕がした「どんな食べ物が好き?」という質問にそのように答えた。
僕は決してそんな返答を求めていた訳ではない。ただもっとフランクに、(言ってしまえば)適当な答え
「直感」文学 *生きている実感*
しばかれるような痛さを伴った寒さが、僕たちを取り囲んでいた。
許可もなしに、許しもなしに。
「こんなに寒いって……、なんだか生きてるってこと、実感する」
彼女はそう言って、マフラーを巻き直した。
「実感?」
僕は白い息と共に、そして含んだ笑いと共に、そう彼女に聞き返した。
「そうそう、なんだかさ、感じない?……ね?ほら?あー生きてるなー私、って。ね?感じるでしょ?」
「直感」文学 *そろそろ情熱的な恋をする*
誰に教えられたでもないが、
とりあえず情熱的な恋をしてみようと思った。
はて、
なぜそんなことを思わなくてはいけないのか。
それは他人には確実に、そして、僕にだって分からないのだった。
暇っ潰し、と言われれば、「ああ、そのようだ」と返すだろうし、お前もようやく真剣になったのか、と言われれば、「ああ、そのようだ」と返すだろう。
いずれにしたって答えは同じ。
ただ、僕は唐突に不安になったの
「直感」文学 *”ミナミトウヤ”*
”ミナミトウヤ”は、僕が中学生だった時の同級生だ。
僕はたまに”ミナミトウヤ”という人間が、みんなの目にはどのように映っていたのだろうかと気になることがある。
彼は、僕の同級生であると同時に、僕の”隠れた憧れ”でもあったのだった。
当時、僕と”ミナミトウヤ”は仲が良く、暇な時間さえあれば、そのほとんどを共有していた。というか、中学生の時なんて、ほとんどが暇な時間であり、僕はいつだって