結局、「エンゲージメント」って何なのさ|今日のマーケティング用語
「エンゲージメント」という言葉を聞いてあなたは意味を即答できますか?
「企業と顧客におけるエンゲージメントを上げましょう」
「従業員エンゲージメントは組織の発展には欠かせません」
「リードをナーチャリングするためにエンゲージメントを高めましょう」
カードゲームの呪文や効果の名称っぽいなぁ…と思っていまいそうな「エンゲージメント」という言葉…なんと「企業が事業を発展」させていく上で避けては通れない重要な概念なのです。
マーケティング業界ではもちろんのこと、人事やマネジメントなど企業活動の中でもよく使われる言葉です。
「エンゲージメントを制するものは、企業活動を制する」と言っても過言ではないエンゲージメントの意味を解説します。
エンゲージメントとは「深い繋がりを持つ関係性や愛着心」のこと
エンゲージメントとは英単語の『engagement』を語源とする言葉で、「婚約」「契約」「約束」「雇用」「従事」「誓約」「責務」のように『AとBの間で結ばれる関係性』を示す意味を持っています。
マーケティングや人事では「約束」「契約」といった関係性を意味する言葉が転じて『(顧客との)繋がり』『(顧客の)関与度)』『(従業員の)愛着心)』『(企業に対する)思い入れ』と言った企業と対象の関係性を示す概念となりました。
マーケティングでは「顧客になる可能性がある」見込み客に対して広告や検索エンジン、コンテンツ、SNSなどの接点から興味関心を抱いてもらえるようにプロモーションを仕掛けます。
一昔前では顧客の抱える「ニーズ」に訴求をする際はテレビCMや雑誌広告のようなマスメディアで訴求をし、ニーズを刺激しながら購入を促していました。
インターネットの普及やスマートフォンの登場、SNSの浸透によって、今までは『企業側のメッセージを受け取る』側だった人々が『自ら情報を収集・評価・決定』をすることができるようになります。
自らの中にある『ニーズ』に対して、自身で意思決定を行えるようになったことで、マーケティングは『一方的に届けるもの』から『顧客との関係性を構築するもの』へと変化する必要がありました。
2010年以降はインターネットを介した消費者行動が主要になったこともあり、「適切なタイミング」に「適切な情報」を届け、「意思決定の背中を押す」というマーケティングを求められるようになっています。
『集客した見込み客が顧客になるように育成する』という思考が主流になったことで、顧客との関係性を可視化し、企業や商品に対する愛着心を示す『エンゲージメント』が重要視されるようになりました。
「エンゲージメントを高める」とは何か
「エンゲージメントを高めてくれ」と言われても、具体的に『エンゲージメントを高める』とはどのように行えばいいのでしょうか?
マーケティングでは主に『CRM』『SNS』の領域でエンゲージメントは概念として登場します。
どちらも消費者と接点を持ち、優れた「顧客体験」を提供し、関係値を積み重ねていくことで『愛着』や『親しみ』といった感情を抱いてもらうことが重要なマーケティングです。
ここでは、2つの視点からエンゲージメントについて深掘りをします。
様々なチャネルを通して顧客と企業の繋がりを強め、LTVを高める
エンゲージメントマーケティングについて全体像をある程度把握するためには『CRM』『MA』『NPS』『LTV』の4つの言葉を知る必要があります。
■CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
CRMとは『顧客関係性管理』を意味する言葉で「顧客との関係性を維持・向上」させるのを目的とした考え方・ツール・手法です。
現代では顧客情報を管理できるCRMツールが広く普及したことで、企業内に存在する全ての顧客情報を一元管理できるようになりました。
CRMによって顧客との関係値を管理・分析が可能となり、適切なタイミングで顧客個人に対してアプローチを仕掛けることができます。
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■MA(マーケティング・オートメーション)
MAとはマーケティング活動を自動化することができるツールです。MAは「① 顧客情報の取得・蓄積」「② 見込み客の育成」「③ 施策の分析」の3つの要素から成り立つという特徴があります。
消費者行動が多様化し複雑化する中で、MAは見込み客が求める最適なコンテンツを適切なタイミングで訴求することが可能です。
MAは見込み客との関係性を構築し、顧客になるまで育成をするという特性があることから「エンゲージメントを高める役割を担うツール」と言えます。
■NPS(ネット・プロモーター・スコア)
NPSはサービスを利用している顧客に対して「サービスを他の人にどれだけ進めたいか」という質問をし、顧客ロイヤルティを定期的にスコア化する手法のことです。
ロイヤルティとは「顧客が企業に対して抱く愛着心・信頼」を指す言葉でエンゲージメントと近しい意味を持ちますが、ロイヤルティは「顧客が企業に対する一方的な感情」を指します。対するエンゲージメントは「顧客と企業の双方向における関係性」を指す異なる概念となるため覚える際は注意が必要です。
MAで育てた顧客が、CRMで関係性が向上し、ファン化したユーザーの『愛着心』を図るためにNPSは使われます。
■LTV(ライフタイムバリュー)
LTVは『顧客生涯価値』を意味する言葉で、ある顧客が取引を開始してから終了するまでにもたらす価値を示す指標です。消費者行動の複雑化によって新規顧客の獲得難易度が上がったため、既存顧客維持の注目度が上がったことでLTVが重要視されるようになりました。
LTVの向上には顧客がサービスに対して愛着心を抱き、継続的に利用してもらえる関係性を構築する必要があります。
そのため顧客エンゲージメントの向上が重要視され、LTVを最大化するためにエンゲージメントを上げる施策をするようにマーケティング活動自体がシフトし始めました。
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エンゲージマーケティングは長期的な投資が必要なほど長い目で関係性構築をしていかなければなりません。
検索エンジンで上位に表示されるようにSEO対策をすることも、サービスの存在を認知させる広告もエンゲージメントを上げていくプロセスの一つなのです。
そして、集客したユーザーと関係性を持ったら『見込み客』として囲い、適切なタイミングでコミュニケーションを取りながら育成し、購買へと誘導します。
その後、顧客となったユーザーに対して継続的にサービスを利用してもらえるように『顧客関係性の管理』を行い、エンゲージメントを高めていきます。
エンゲージメントを高めていくことで、顧客と企業の関係性を継続的なものにし、LTVの向上を目指すのがCRM起点におけるエンゲージマーケティングの全体像となります。
顧客とSNS上で直接的な接点を持ち、関係性を向上させる
TwitterやFacebook、InstagramといったSNSは、世界レベルで一般層にまで普及しました。その結果、ユーザー(SNSを利用する消費者)が購買活動に至るまでのプロセスにSNSが組み込まれるようになりました。
SNSがエンゲージメントにおいて重要視されている理由として『ユーザーと直接コミュニケーションを取れる(接点を持てる)』点と『エンゲージメントの可視化が可能』な点が挙げられます。
前述で紹介したCRMでは『データによる関係性の予測』『アンケートによる関係値の把握』によって適切なタイミングを仮説立てし、コミュニケーションを取ることでエンゲージメントを高めます。
SNSでは、直接ユーザーと接点を持っているため、どれだけ関係値を築いているのかが数値として可視化しやすく、エンゲージメントの予測が立てやすいため、CRMとは少しアプローチが変わるのが特徴です。
SNSでユーザーと直接接点を抱き、エンゲージメントを高めることで、実際に顧客になった時、最初からロイヤルティの高い状態から関係性を開始できるのがSNSを活用する最大のメリットとなります。
また、SNSには拡散性があるため、ロイヤルティの高いユーザーが他のユーザーに企業やブランド、サービスをオススメすることで連鎖的に接点を拡大できる点も外せません。
現在ではSNSを活用したマーケティングは欠かせないものとなり、多くの企業にとって必須項目となっています。
エンゲージメントはマーケティングにおいて最重要指標の一つ
エンゲージメントマーケティングでは『見込み客が顧客になるまでのエンゲージメント』と『顧客が継続的にサービスを利用し続けるエンゲージメント』に大きく分類され、これらを適切に管理・分析・予測をすることで効果的なアプローチができるようになります。
ターゲットの状態によって適切な施策は変わることを念頭に置いておかないと、マーケティング施策は成果を得ることができないでしょう。
エンゲージメントが低い層に向けた施策と、エンゲージメントが高い層に向けたマーケティングは目的が異なるため注意が必要です。
ただし、点で見れば確かに異なるターゲットですが、線として長期的に見ればエンゲージメントのフェーズが異なる同一のターゲットに向けたマーケティング活動であることを忘れてはいけません。
マーケティング活動を行う際は、点で捉えずに、エンゲージメントという線で施策を実施することで投資に対して大きな成果獲得が期待できるでしょう。
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優良顧客との関係性を構築するマーケティングについて学べる良書です。著者がWOWOWで経験した事例を解説してくれるので具体的なイメージを持てます。
■戦略から始めるエンゲージメントマーケティング ーー 「対面営業」に依存しない新しい売り方
本記事でも記載している「長期的視点でのマーケティング活動」について述べているため、エンゲージメントについて体系的に学べます。実践的な内容なので、様々なシーンでヒントを与えてくれる良書として大変オススメです。
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