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いま注目したい教育分野 ① 大阪大学 福島拠点を常設化②≪金融教育≫令和のブラックマンデー⁈【教育ニュース最前線vol.12-2】

【教育ニュース最前線vol.12】
日々報じられる教育関連情報から、教育業界への影響が大きいと思われる内容を、代ゼミ教育総研 研究員・編集チームが厳選してピックアップ。
それぞれの分析・私見を述べます。
教育・学校・入試について関心がある方々の、考えるヒントとなりましたら幸いです。

\\ ✨Vol.12は 2日連続投稿✨//
12-1:教育のやりがいに集中できる学校へ ←ぜひこちらもご覧ください📓
12-2:大阪大学 福島拠点を常設化/令和のブラックマンデー⁈



① 阪大 福島拠点を常設化——原発事故や放射能問題を地道に調査・研究に取り組む姿勢は、復興のみならず、未来の科学教育のヒントにも

未曾有の被害をもたらした東日本大震災と福島原発事故。
すでに発生から 13 年が経過し、福島県では復興に向けてさまざまな取り組みが行われてきています。

そのようななか、発生直後から放射線汚染の調査・研究について積極的に取り組み続ける大阪大学の活動が注目を集めています。

<大阪大学  知ろう!考えよう。福島浜通り!プロジェクト>

そして、このほど、大熊町連携大学等研究支援センターに新たな常設拠点「大阪大学福島拠点」がオープンしたとのこと。

▼<被災地から始まる復興支援と教育活動 大阪大学福島拠点を福島県大熊町に開設>(大阪大学HP・8/6)

 そもそも関西の大学が、復興のためとはいえ、わざわざ福島県に乗り込み、活動を地道に積み重ねること自体なかなかできることではありません。
ほんとうに頭が下がる思いです。

しかも、その結果、地元との信頼関係が築かれ、拠点の常設化に結びついたということは、大いに評価されるべきでしょう。

そして、特に注目したいのは「環境放射線の状況を、自然科学面と社会科学面の両面から学ぶことを目的」としたこの活動に、参加する学生が、他大学から留学生も含め、どんどん増えてきているとのことです。

…2016 年に始まった福島環境放射線研修は、本学が主催する学生向けの教育プログラムで、福島第一原子力発電所事故後の福島県における環境放射線の状況を、自然科学面と社会科学面の両面から学ぶことを目的としています。学年や専攻を問わず参加でき、留学生や他大学からの参加者も受け入れています。現地での研修は、放射線測定や被災状況の視察、地元住民との意見交換などを通じて、放射線に関する正しい知識と、そこから派生する社会問題についての理解を深めるものであり、研修開始当初の 2016 年は参加学生が10 名程度でしたが、現在では 200 名を超えるまでに発展しています。

大阪大学ホームページ 2024年8月6日 プレスリリース
「被災地から始まる復興支援と教育活動 大阪大学福島拠点を福島県大熊町に開設」より 

さらに、地元の小中高生を対象にした未来の研究者を育成する「めばえ適塾」の教育活動も並行し行われ、おそらく今後、さらに充実していくことが期待されます。

💡研究員はこう考える

思い返せば、甚大な原発事故が起きた後、日本の社会全体に科学や科学者たちへの不信感が渦巻き、科学と社会の在り方について様々な議論が起こったことは記憶に新しいところです。

また一方、大学生たちの“原発離れ”の現象が起きていて、いまだ深刻な状況であるとのことです。無視できない話ですね。

文部科学省も、原子力関係学科等の入学者数の減少、教員数の減少に歯止めをかけるべく、経済産業省をはじめ関係省庁、複数の機関で連携してコンソーシアムを形成し、人材育成、研究開発に力を入れ始めています。

原子力分野の人材育成に関する現状の課題と取り組みについて(PDF)
(令和5年12月 文部科学省 研究開発局 原子力課)


また、 日本学術会議は 2014 年 9 月、「科学と社会のよりよい関係に向けて―福島原発災害後の信頼喪失を踏まえて―」との提言を発表し、そこでは大学における科学教育の大切さやあり方について触れられています。

近年多くの大学及び大学院教育において、教養教育の見直しと再評価が始まっているが、依然として、教養教育は初学者の見聞を広げるという視点から入学当初の時期に配置されることが多い。しかし今問題になっているのは、一定の専門性を身につけた人間の「社会リテラシー」を涵養するための教育(=「21 世紀の教養教育」)である。大学は、学部後期や大学院におけるこのような教養教育を充実させることを、教育の使命と考えるべきである。

2014年9月11日7日本学術会議
「提言 科学と社会のよりよい関係に向けて-福島原発災害後の信頼喪失を踏まえて-」
5.化学集団と政府との関わりのあり方 より

この提言からもお分かりのように、原発事故は、科学教育の重要性について、ひいては、教育が果たすべき役割を我々に再認識させるきかっけともなりました。

しかし、“再認識”でとどまっていてよいのでしょうか。
実は、さらに重要なことは、そのための場をいかに設けるか、そして、いかに実践するか、ということではないでしょうか。
学びの継承は、そこから生まれていくのです。
大阪大学の取り組みは、そうしたことに気付かせてくれる気がします。

放射能や原発問題を忌避することなく真摯に向き合ってきた大阪大学の姿

そこには、単に福島復興のために積極的に取り組んでいるというアピールにとどまらず、未来に向けての科学教育の在り方を模索する姿勢が見て取れるのです。

・    ・     ・

♢ 震災関連記事紹介♢


②≪金融教育≫令和のブラックマンデー⁈

連日の報道で、その動向が大注目の株価の値動き。
この状況を金融教育で取り上げる際、どのような方法があるのか。
関連記事をピックアップしつつ、代ゼミ教育総研 金融教育担当者に語っていただきました🎤

 💰  ・  📈  ・  📉  ・ 💴

2024年8月5日の月曜日、日経平均株価が大幅に下落しました。
下がり続ける株価の動向はニュース速報でも大いに報じられ、令和のブラックマンデーとも言われています。

東京新聞の連載記事では、今回の歴史的暴落を金融経済教育の観点から記しています。

▼金融経済教育って? 歴史的暴落にも慌てない 小学生から身に付けていきたい知識とは(東京すくすく/東京新聞・8/10)

💡ブラックマンデーに学ぶ投資との向き合い方

このニュースは夏休み中に大きく報じられたため、新学期の最初の授業で取り上げる先生もいらっしゃることでしょう。確かに、投資を身近に感じられるという点で金融教育に適した話題と言えます。

しかし、このニュースだけを取り上げてしまうと、「株や投資は怖いもの」という先入観を与えてしまう恐れもあります。そこで、まずは過去の(本家)ブラックマンデーを取り上げ、そこから何が学べるのかを考えてみるのはいかがでしょうか。

(参考サイト)

▼1980年代:ブラックマンデーからバブルへ(日経平均プロフィル(日経の指数公式サイト)

ブラックマンデーとは、1987年10月19日の月曜日に起こったニューヨーク株式市場の大暴落(前日比▲22.6%)を指します。この暴落は瞬く間に世界各地の金融市場にも波及し、日経平均株価も前日比▲14.9%と大幅に下落しました。

マーケットは売りが売りを呼ぶ状態となったことから、投資家の多くは「元の株価に戻ることはない」「投資なんてしなければよかった」とパニックに陥り、保有する株を手放しました。いわゆる「狼狽売り」です。

しかし、急落した日経平均株価は5か月ほどでブラックマンデー前の水準に戻り、数十年という長期的なスパンでは右肩上がりに推移しています。
 
さて、このブラックマンデーからどのようなことを生徒に伝えられるでしょうか

例えば、以下のような学びが得られます。

①投資の目標を見失わず、短期的視野と長期的視野を持つこと
②どのような値動きにも、感情ではなく理性で対処すること

上述の通り、ブラックマンデーに起因する市場の混乱は短期的なものでした。つまり、株価の急落に動揺して株を売った投資家の多くが損失を出す一方、長期目線の投資家の多くは損失を回避できたのです。

もちろん、これは結果論の側面もありますし、投資手法によっては即損切りした方が良いこともあるでしょう。

しかし、金融教育で扱う投資は「老後を見据えた資産形成」を目標としており、一般的には長期・分散・積立投資が推奨されています。ブラックマンデー後の株価の推移を確認すると、その手法が将来の資産形成に有効であることが伺えます。

令和のブラックマンデーも同様の流れになるかは分かりませんが、株価の乱高下に一喜一憂することなく、長期・分散・積立の視点を持って冷静に対処することが重要なのは間違いないでしょう。

このように、金融教育では「自分ごと」として捉えるきっかけを授業に取り入れることが有効です。

ニュースをただ事実として伝えるだけでなく、その内容を抽象化し、そこからどのような普遍的学びが得られるかを考えてみてください。


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