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eriko_fukaki
和歌から『とはずがたり』を読む8
和歌
院→二条(著者)
さらでだに秋は露けき袖の上に昔を恋ふる涙そふらむ
―ただでさえ秋は露が降りて袖が濡れる季節なのに、亡き父君のことを思い出して涙でさらに袖が濡れていることでしょう。
後深草院が、著者の父の35日目の法要の日に届けた和歌。著者が死んだ父のことを思い出して泣いているのだろうと慰めています。共感することで、著者の心をつかもうとしているのかも?
この歌を受け取った著者は満更でもないようで、父が生きていたらどう返信したらいいのか喜びながら相談していたのに、と悔やんでいます。
和歌
二条(著者)→院
思へたださらでも濡るる袖の上にかかる別れの秋の白露
―ご想像の通り、普段であっても袖が露で濡れてしまうのに、更に別れの秋の白露のような涙で濡れてしまいます。
著者から後深草院への返歌。
院が心配をして、亡き父君のことを思って泣いているのでしょう(涙そふらむ)と送った歌に対し、その通り涙を零して泣いていると返した歌です。
院が「む」(推量の助動詞)を使っての問いかけに応えており、著者の悲しみがいかに深いものであったかが窺えます。