吉田松陰と論争した朱子学の大家 山県太華『非聖弁』2
一日客余を芸窓に訪ひ、一篇の文を出して是を示して曰、「此れ我が邦近世の人の著作にして堯舜湯武より孔子に至るまで群聖人を歴詆せる文なり。我れ聞く、聖人は道徳の宗万世の師にして其の聡明睿智類を出萃を抜き得て間然すべからざる者なりと。然して今口を極めて是れを醜罵するは、実に非議すべき所あるにや。子は聖人の道を以て教へとする者なり。庶幾は我が為に是れを明弁せんことを。」
余が曰く「我れ聖人に非ず。いかんぞ能く聖人を弁ぜんや。中庸に聖人の道を説き是れに継で曰く、『苟も固とに聡明聖知天の