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「森の文学館」 和田博文 編 ちくま文庫

森をテーマにした小説やエッセイを集めた不思議な本。


村田沙耶香、倉本聰、宮沢賢治、多和田葉子、宮崎駿、深澤七郎、寺山修司、森敦、五木寛之、俵万智、井上靖、今西錦司、串田孫一など、時代も違えばフィールドも違う人たちの、それぞれにとっての森が描かれています。


大岡信という人の「森の魅惑 エルンスト」に、惹かれました。マックス・エルンストは、シュールレアリズムの代表的画家です。彼は、「狂気の境に存在する曖昧で危険な土地を徹底的に開拓してみようと決心した(p.253 ラインの回想より)」人です。曖昧で危険な土地とは、ライン地方の森なのでしょう。エルンストの作品は、まさに、クレーの言う「芸術は見えないものを見えるようにするのだ」を実現したものなのでしょう。森そのものというよりも、森の中に潜んでいる見えない存在を表現したものなのでしょう。


マックス・エルンスト作 Forest and Dove


マックス・エルンスト作 沈黙の目


マックス・エルンスト作 荒野のナポレオン


マックス・エルンスト作 雨後のヨーロッパ

森は異世界です。異世界への入り口を見つけてしまったら、戻ってこれないほど森の奥深くまで歩いていってしまうかもしれません。・・・「まっくらの森の歌」村田沙耶香


森の中からはタタリ神が現れるかもしれません。木霊が道案内してくれるかもしれません。「だいだらぼっち」が空に昇っているところをも目撃するかもしれません。・・・「森の持つ根源的な力は人間の心の中にも生きている」宮崎駿


赤ずきんちゃんは、狼を翻弄するのです。・・・「赤ずきん」池田香代子


そして、誰もが心の中に深い森を持っているのでしょう。








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