どさくさまぎれ #シロクマ文芸部
私の日和見な態度に、あの方は業を煮やしているんですわ。でもどうにもならないんですの。あの方のことはお慕い申し上げています、ええ、お父様のように。でも私の心の中にいるのは、いつもいるのは、あなたなんですわ。
そう云ってしな垂れかかる女の、じっとりと湿ったような肉の感触が、薄い浴衣の木綿の隙間から伝わってくる。
女のしたいようにさせたまま、安宿の頼りないような柱に寄り掛かって薄く障子を開け、シャツの胸ポケットから煙草を取り出した。進駐軍から闇に流れたラッキーストライク。つい