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29歳の徹夜
29歳という年齢はすごく微妙なのだと思う。
精神的な変化はあまり感じずとも、身体的な変化は迎え始めていると感じる。
20代前半、我が家から新宿まで自転車を走らせた時に、本気を出せば35分で着いていた。それが今じゃ45分くらいまでタイムが落ちてしまっていた。
これが人間としての正当な成長であってほしいと願うばかりだ。
先日、稽古の帰り道に電車の中で地震に遭遇してしまった。
時間は23時前だっただろうか。そのまま電車内で缶詰にされてしまった。
稽古終わりで疲労困憊、夕飯も食べてないからお腹も空いている。
椅子に座れていたから良かったものの、本当は40分前後で帰れていたのにと思えば思うほど、心身ともにぐったりしてくる。
運転再開時刻も何時になるか分からない中で、スマホのバッテリーも切れてしまった。
そうなるといよいよ暇を持て余してしまう。
そんな時、友人に薦めてもらった本を持っていたことを思い出す。
その本は外見がもろにビジネス書かつ自己啓発本的なところがあって、そこそこ他にもひとが乗っている電車内で開くのはちょっと抵抗があったのだが、暇なので読み始める。
内容としては【流れに身を任せる】【何もしないでみる】【立ち止まってみる】的なことが書かれていて、今のぼくにはとても必要なことなのだ。
本の内容と本を読んでいるときの状況というのはリンクしがちだし、思い込み力の強いぼくは「電車が止まっているという状況こそ、立ち止まるチャンスなのでは?」とポジティブに考えることができた。
少しポジティブになれると、どこからかやる気が湧いてくる。
「何もしないためにも選択肢を作っておきたい」
そんなことを考えてしまったぼくは深夜1時に家に到着し、お風呂に入って、そのまま4時まで仕事をしてしまった。
何もしないことを勧められたのに、何かをしてしまうぼく。
29歳のぼくにはその徹夜的行為がもう無茶だったらしい。
翌日は本当に何もすることができず、泥のように眠っていた。
29歳、今回の出来事で少し大人になれるかもしれない。
無茶をしなくてもいいように、普通に生きる。
何もしない勇気を持ってみる。
勢いで徹夜はもうしない。