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【詩】声

のし掛かる夏を掻き分けて留守電を聞く
街を埋め尽くす熱波、ぶつかり合う蝉の声、拭えどもしたたる汗は耳に押し当てたスマートフォンをも不快で括る
短気に侵食さていく脳と四肢、三度目でようやく上がったボリュームに舌打つまでがワンセット
こんなにもあんまりな自分なのに
比べて伝わる音のやわらかみといったらない
しっとりと響く木琴みたい
当社比六割増しの短気をたちまち飼い慣らした声が言う
『ごめんだけど、遅くなるから冷やし焼き芋買っといて。高くない方のやつ』
軽やかに沁み渡る一音ずつに返すは了解一択
それあるのって遠い方のスーパーだけど、でもいいよ
ありがとうを奏でる五文字を特等席で聴く
チケット代としては安すぎるくらい








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