保育園での研修を終えて
自然体験活動を取り入れたいという保育園に依頼されて、保育士向け研修の講師として出かけお手伝いさせていただくこともあります。先日、全国展開するキンダーキッズインターナショナルスクールから、保育士向けの研修を実施したいという依頼があり、神戸シーサイド校に行ってきました。関西には19校展開しており、各地からスタッフの方々が参加してくださいました。もともと英語教育に力を入れている保育園ですが、「アドベンチャースクール」と題して、来年度から保育に自然体験活動を取り入れようとしています。
最初にお話を聞いた時は、神戸シーサイド校はすぐ目の前が海なので、海の活動を取り入れたいということでした。それを聞いて、勝手ながら、実際に保育士さんが海に入って、その楽しさを体感するところからやるといいかな?とか、海でのリスクポイントを探すワークをするといいかな?などと想像していました。しかし、事前に現在の保育園の状況をヒアリングさせていただいたところ、まだそんな状況ではありませんでした。
研修を実施する2週間前に担当の方がよみたん自然学校に見学に来てくださいました。いろいろと話を聞くと、保育士さんと英語を教える「ネイティブ」の方が一緒に保育をしていて、英語を教えることをメインにやってきた保育園なので、カリキュラムが細かく決まっており、どちらかというと教え込むことをやってきたとのこと。私たちが大事にしている子どもの主体性、つまり子ども自身でどんな活動をするかを決めることとか、子どもは自ら学び成長する力「育つ力」がもともとあって、その「育つ力」が発揮されるように大人が関わるということとか、そういうことを、保育士さんや「ネイティブ」の方たちは、ほぼ意識していないだろうという状況が分かりました。そこで、海に実際に入ってみるような研修はまだまだ時期尚早だなと感じ、もっと保育の意識を変えていくような内容の研修を実施することにしました。
まずは幼児期の自然体験「森のようちえん」の意味とか、大切にしている思い、大人が関わる際に心がけていること、そして、実際にどんなことが起こっていて、どんなふうに子どもたちが成長してっているのかなどを、よみたん自然学校の事例を交えながらお話しさせていただきました。そして、体験が大事だと言いながら一方的な話だけをしても、自然体験活動の良さは十分には伝わらないので、実際に園庭や海岸に出かけて、五感を開いて、五感を使って自然に触れる体験をしました。子どもたちと違って、大人の感性は閉じがち。普段自然に触れていない人であれば、なおのことです。五感を開き五感を使って自然を感じることで、子どもたちがどんなふうに自然の中で過ごしているか、その一端を感じることができたことでしょう。
今回の研修は、リーダー向けの研修と保育士向けの研修と2日間にわたって行われました。特に印象的だったのは、話をしている途中にどんどんと質問が出てくること。私は質問が出るタイミングは知りたいと思うタイミングだと思うので、お答えする内容が後で話す予定のものだったとしても、できるだけその時にすぐお答えするようにしています。そして、質疑応答が進むうちに、どうやって「アドベンチャースクール」を進めていくのか、受講しているみなさん同士でディスカッションが始まっていました。キンダーキッズインターナショナルスクールでこれまで行ってきた保育とは全然違うことから、導入するのは大変そうだということもありますが、大変だけどなんとかするぞ、という意欲をすごく感じることができました。私がご協力できるのはこの2日間だけですから、この後は受講したみなさんで進めないといけません。だから、こうやって自分たちでディスカッションすることはとても大事なことだと思ったので、いい雰囲気が作られているなと思いながら様子を見ていました。
さて、そんなこんなで研修が終わって、受講者のみなさんから一人ずつ感想をいただきました。そのうちの一つに私の立ち居振る舞いに関することがありました。質疑応答が進むうちに受講者がディスカッションを始めた時に様子を見ている姿や、屋外でのアクティビティを行う時にすぐに集合の声かけをせずに受講生のみなさんが集まってくる様子を見ながら声かけをする姿、それから海岸に行った際に裸足で砂浜を歩いてもらったら波打ち際まで行って水に足をつける人もいて、その様子をしばらく見てからアクティビティを始めましょうという声かけをする姿など、まるで森のようちえんで大人が子どもに関わる態度のようだということでした。
実はこれは、私自身かなり意識している部分です。なぜそんなふうに振る舞うかというと、子どもたちに対する向き合い方とスタッフや保護者を含めた大人に対する向き合い方は基本的に同じである方がいいと考えているからです。しかし、教育現場では結構違うことが多いように感じています。例えば、校則がすごく厳しくて生徒には服装から髪型まで事細かに決められているのに、先生にはそんな厳しさは全然なく服装も髪型も自由だというケース。これはわかりやすくて極端なケースですが、実は、子どもたちの自然体験活動をしている団体でも、子どもたちには見守る関わりをしていながら、スタッフには厳しく指導が行われているというケースが時々あります。これは私にはダブルスタンダードに感じられるので、できるだけ避けたいと思っています。いや、ただダブルスタンダードを避けるというだけではありません。教育理念に関しては、子どもたちとの関わりだけではなく、関わるすべての人との関わりに関して同じようにした方が、その教育理念はよりいっそう体現できるのではないかと強く思うのです。
この講習会中でもディスカッションが生まれていましたが、講習会が終わった後に、受講したリーダーのみなさんが、今後も定期的に集まって「アドベンチャースクール」導入に向けての話し合いを続けていこうという話をしていました。とても意欲的だなあと感じ、また、キンダーキッズインターナショナルスクールが来年度に向けて今後どのように進んでいくのか、そして来年度からどのような活動を展開していくのか、楽しみになりました。
「すべての子どもたちに自然体験活動を!」という思いがありますので、もし、自然体験活動を取り入れたい保育園や幼稚園、認定こども園などがありましたら、できる範囲でご協力したいと思っています。研修会や講師派遣の希望がありましたら、こちらからどうぞお気軽にお問い合わせください。
https://yomitan-ns.org/contact/
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