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「小4の壁」でつまずかない!苦手な算数を挽回する方法

小学4年生のつまずきが多く見られることから、算数には「小4の壁」があるといわれています。子どもの苦手意識を減らして挽回するために、親ができることはあるのでしょうか? 幼児さんすう総合研究所代表で、「幼児さんすうスクールSPICA®」を運営している大迫ちあきさんに、算数が苦手な子どもが挽回する方法や具体的な声かけについてお話を聞きました。

そもそも「算数」はなぜ必要?

 最近の大学入試の試験内容を見たことがありますか? 知識さえあれば解けるような問題は激減し、設問を理解して文章・グラフ・図を読み解き、筋道を立てて考え、伝える力が必要な問題が増えています。

 AIの登場により、社会で求められる人材はこの先ますます変化していくでしょう。そうした時代を生き抜くには、問題や課題を見つけ出す「問題設定力」と、それを解決する「問題解決力」、そして解決方法をわかりやすく説明して人の心を動かす「言葉の力」が必要です。

 そこで役立つのが、「算数」です。算数を学ぶことで、ものごとを数値化する力や、図やグラフを使ってものごとを視覚化する力が身につきます。ものごとを数値化・視覚化することで、試行錯誤しながら課題や解決法を探して、言語化する力が磨かれていきます。

 こうした力を身につけるために欠かせないのが、「知識」です。算数の「知識」とは、「計算」です。足す・引く・かける・割るという四則演算が、すべての土台となっていて、その上に公式などの「技術」が積み上がります。

 たとえば円の面積は、公式という「技術」と、小数の計算という「知識」を使って求めます。知識と技術があるからこそ、「円と四角の面積はどうして違うんだろう?」と自分の中に問いを立てる「思考」にたどり着けます。今後AIがさらに発展しても、計算という知識をないがしろにできない理由は、ここにあるのです。

なぜ小4算数はつまずきやすい?

 小学4年生ごろから、算数に苦手意識を持つ子どもが増えていきます。小数・分数の計算や、垂直・平行といった抽象概念の理解など、複雑化する単元につまずく子どもは少なくありません。中学受験をする場合は、急激に学習量が増え、てこずるケースも見受けられます。

 こうした要因に加えて、子どもの「心」の成長も大きく関連します。小学4年生、9〜10歳といえば、思春期に差しかかるとき。自我が強くなり、自分の主張を通したがって、口答えや反発も出てきます。そこに学習の難易度アップが組み合わさり、「やらされる学習」の限界がやってきます。親が子どもをコントロールして「勉強させる」ことができなくなるのです。

いますぐできる!算数力を高める5つのアイデア

 算数は、積み重ねの学習です。小4の壁にぶつかったとしても、つまずいたところに戻ってやり直せばいつでも挽回できます。

 とはいえ、「やらされる学習」が限界を迎える時期なので、対策や声かけには工夫が必要です。頭ごなしに否定するのではなく、子どもの主張をある程度は認めて、意見を聞く姿勢をみせることが大切です。具体的には、次の5つのポイントを意識することから始めてみましょう。

①5W1Hを意識して「言語化」する

 ドリルを購入したり、塾に通ったりする前に、まずできるのが「親子の会話」を変えること。「いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どのように」という5W1Hと、「Which(どっち?)」を意識して子どもと会話しましょう。思考力と言葉化する力が養われます。

②指示語はなるべく使わない

 「これ・それ・あれ」といった指示語を使わずに会話することで、算数力が育まれます。たとえば、少し離れたところにあるものを子どもに取ってもらいたいとき、こんな声かけをしてみましょう。

△:「あれ取って」
◎:「上から3番目、右から2番目の、大きいほうの四角い箱を取って」

 下の声かけには、算数で学ぶ「位置」「大きさ」「形」すべての要素が入っています。指示語を避けたこうした声かけで、子どもの言葉の力を刺激しましょう。

③「なぜ?」を3回繰り返す

 たとえば学校から帰ってきた子どもが、宿題はまだだけれども、ゲームをしたいと言ったとします。

子:「ゲームしたい」
親:「なんでゲームをしたいの?」
子:「だって、強くなって友達に勝ちたいから」
親:「どうしてゲームで友達に勝ちたいの?」
子:「強くないと一緒に遊んでくれないからだよ」
親:「なんで一緒に遊びたいの?」
子:「みんなが遊んでいるのに、僕だけ入れなかったら嫌だもん」

 子どもの主張を頭ごなしに否定せず、「なぜ?」「どうして?」を繰り返すと、言葉の裏にある子どもの考えや感情が見えてきます。次に、「じゃあ、どうしようか?」と、妥協できるポイントを話し合ってみましょう。こうした会話を通じて、子どもは折り合いをつけることや論理力を身につけます。

④料理や食事を「算数タイム」にする

 料理や食事というシチュエーションは、数だけでなく、図形の学習もできる絶好の機会です。たとえば、きゅうりは、輪切りにすると断面は円ですが、両端を切ってから縦に切ると、断面は細い長方形になります。これはまさに、小学校高学年で学習する「立体図形の断面図」にあたります。

⑤算数パズルや数独・脳トレドリルを使う

 つまずいたところに戻ってやり直すときに気をつけたいのが、子どものプライドを傷つけないこと。小数のかけ算でつまずいている小4の子どもに、「小学2年生」と書かれた九九ドリルを渡してしまうと、プライドが傷つき、ますます算数から離れてしまいます。

 そんなとき強い味方になるのが、算数パズルや大人向けの計算ドリルです。算数パズルは、対象年齢99歳までというものもありますし、数独ドリルや脳トレドリルは大人向けのものが多く、子どものプライドを傷つけません。「私もこれ、苦手なんだよね。一緒にやってみようか?」と誘って、子どもができたら「すごい!」と、すかさず褒めましょう。

 計算は、筋トレのようなもの。訓練を積み重ねれば、ほとんどの子ができるようになります。大人向けのドリルも嫌がる場合は、「1日○枚」というタスクではなく、「10分でできるところまで」などと時間で区切ると、やる気が出ることもあります。

 スムーズに問題を解けるようになったら、「この問題解けたの? すごいね! どうやって解いたの?」と、子どもに解き方を聞いてみましょう。アメリカ国立訓練研究所の研究によると、もっとも子どもの頭に定着する学習方法は、「他の人に教える」ことという結果が出ています。

「小4算数の壁」にぶつからないためにできること

 小4算数でつまずかないためには、低学年のうちに、算数の3本柱である「数・図形・推理」のなかで、子どもの得意なこと・苦手なことをおおまかに把握しておくことが大切です。

 子どもが苦手なことは、楽しんでのりこえるのがおすすめです。数が苦手であればトランプやお金の計算があるボードゲームを、図形が苦手であれば算数パズルを、推理が苦手であれば戦略系のボードゲームやカードゲーム、なぞなぞを、日常生活に取り入れてみてください。小4の壁をのりこえる助けになります。

幼児期こそ「成功体験」を積み重ね、学ぶ楽しさを伝えよう

 算数を意識した声かけは、何歳から始めてもいいと思います。たとえばサイコロを部屋に置いておき、「四角い形がたくさんあるね」「こっちは黒い丸は1個だね」「反対側は、黒い丸が6個あるね」などの声かけを続けていくと、自然と算数の考え方が身につきます。

 とはいえ、幼児期に何よりも大切なのは、「成功体験」と「達成感」を存分に味わうこと。幼いころの成功体験や達成感が、「やってみよう!」という意欲につながります。

 親がどんなに入念に準備して子どもを諭しても、はじめの一歩を踏み出すのは子ども自身です。子どもが間違えや失敗に臆病になりすぎると、最初の一歩が出にくくなってしまいます。勉強でも、スポーツでも、芸術でも、どんなことでもいいので、幼児期こそ子どもの「できる」をたくさん積み重ねて、学ぶ楽しさをうんと味わわせてあげてください。楽しいと思った経験が、「やってみよう」という気持ちを大きく育みます。

「小4の壁」を親子で乗り越えよう!

 「親に甘えたい心もあるけれど、自分の主張は通したい。ある意味、もっとも扱いが大変なのが、10歳という年ごろかもしれません」と大迫さん。この時期に子どもとの関わり方を見直すことで、その先の思春期を楽に迎えられるとおっしゃいます。大迫さんが教えてくれたアイデアを、日々の子どもへの声かけに取り入れてみてください!

取材・文:三東社

【プロフィール】

大迫ちあき
大手個別指導塾で中学受験算数の担当講師として勤務したのち、2015年より東京・恵比寿で未就学児から小学生低学年対象の「幼児さんすうスクール・SPICA®」を運営。公益財団法人・日本数学検定協会認定資格講座「幼児さんすうインストラクター養成講座」を立ち上げ、幼児期のさんすう指導法の確立及び指導者の育成に力を注いでいる。


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