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言葉の宝箱0716【たった一つのいい思い出が、すべての記憶を書き換えてくれることもある】


『ボールパークの魔法』本城雅人(東京創元社2012/10/25)

『ボールパークの魔法』本城雅人(東京創元社2012/10/25)


ニューヨークで特に目的意識もないまま、留学と称した無気力な生活を送っている恭平と篤郎のもとにメッツの日本人選手でローテーションピッチャーの進藤が「シーズン中の今、チームメイトにかけられた窃盗の疑いを晴らすためにアルバイトのクラブハウスボーイ(通称:クラビー)として潜入してほしい」と訪ねてきた。さっそく翌日から働きはじめた二人だがクラブハウス内の規格外の出来事に大忙し。大量のユニホームの洗濯と料理の準備に追われている間にまたもや事件。ニューヨーク、そしてメジャーリーグを舞台に奮闘する若者たちの姿を描く『マリソンの指先』『世の中甘くねえぞ、坊や』『アフリカに行って地雷を踏め』『牧師の後継者』『さすらいの仕事人』5話連作短編集。

・多感な頃にいきなり辛い環境に放り出された人間というのは、
他人を簡単に信じてはいけないと警告する声が耳なりのように聞こえ続け、誰に対しても正面から向き合うことができなくなってしまう P40

・アメリカという国は何よりもヒストリーを重んじる。
ヒストリーといっても国や世界の歴史ではなく、
個人、あるいは家族の履歴である(略)
アメリカに足を踏み入れて、仕事をして金を稼ぎ、
少しずつでも生活の足跡を残していくことで、銀行から信用され、
そしてようやくアメリカの住人であることを社会が認知してくれるのだ。
永住権を取ろうなんて思ったら、さらにまた長い道のりを要する P55

・なにを言われても深読みしてしまった P75

・ベストを尽くしたから負けてもいいとか、
あるいはあの時はいろいろ事情があったから仕方がないのだという
言い訳は、
それでも許される恵まれた環境にいるからこそ言えることであって、
生きるか死ぬかの瀬戸際では、そんな理由は通らない P87

・すぐにお金持ちにはなれなくても、教育で心は豊かになれる P114

・恵まれているからこそ、
自分の人生を疑問に思うこともあるかもしれない P123

・自分が経験もしていないのに、
子供に対して偉そうなことを言ったって子供は聞かない P137

・無邪気な顔で誘われるとみんな乗っちゃうのよね P157

・欲が出た瞬間に心に隙ができるんだ P157

・信仰というのは信頼でもあるのだ。
それは人間関係と同じで、会ったその日に相手を信頼できる人間もいれば、ゆっくり時間をかけて距離を縮めていかないことには、
自分の心を開けない人だっている P167

・すごく苦しんでいて、
その苦しみから脱却した時に言われた言葉というのは
ずっと心に残っていて、そしてその言葉をまた苦しみに陥った時に、
脱出への励みにするんだ P168

・人を信じることは勇気がいることなのでそう簡単にはできないけど、
信じようと思えた時は、勇気を手に入れたも同然なのだ P175

・シー・ユー・アゲイン。
季節というのは、
去り際にそう言って軽く挨拶でも交わしていたかのように、
しばらく時間が過ぎればまた元の場所に戻ってくる P201

・勝つためにどれだけ必死になれるかが(略)
スポーツ選手の一番の能力(略)
素質があってもそういう気持ちが欠けた選手は
必ずどこかで壁にぶち当たっていなくなってしまう。
そして必死になっているという姿勢は正面からではなく、
背中からの方が見やすい P208

・たった一つのいい思い出が、
すべての記憶を書き換えてくれることもあるP 241

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