言葉の宝箱 0566【人間も過去の記憶で作られている】
れんげ野原のまんなかにある秋葉図書館。
ゆったりとした時間が流れるのどかなこの図書館でも、季節はうつろい、
新人司書文子の仕事ぶりも板についてきた。
そんななか、図書館のお隣の日向山から驚くようなものが発見され、
大騒ぎになる。なんでここに埋められていたの?
気になって仕方がない文子は、真相究明に乗り出す。
だけど、謎はそればかりではない。
図書館利用者が持ち込むちょっとした謎は、
絵本にお菓子に料理に、と実に様々。
本の力、そして頼もしい先輩司書たちの力を借りて、文子はすっきり解決!と、なるのやら。
すべての本好き、図書館好きに捧げる、やさしいミステリ、第2弾。
『穀雨』『芒種』『小暑』『白露』『寒露』5話連作短編集。
あとがきに
“すでに十年ほど前のことになりますが、
秋葉図書館の秋から春までのうつろいを書くのは、
とても楽しい作業でした。
そして今回、その季節の続きを書きたいと思った時、
筆者の脳内で『れんげ野原のまんなかで』のラストで
満開を迎えていたレンガソウが、まだそのまま揺れていました。
ですからこの『花野に眠る』は、
『れんげ野原のまんなかで』からまっすぐにつながっている連作です。
お話はもう一度、
レンガソウに囲まれたのどかな図書館から始まります(略)
図書館の本質的な役割の一つは資料の収集にありとは、
司書が真っ先に教えられることです。
そして資料とは、作られた瞬間から過去に属する性質のものです。
本を集めることは必然的に「過去」を蓄積することであり、
だから図書館は「過去」と非常に親和性が高いのです。
開き直りついでに言えば、人間も過去の記憶で作られているわけですしね” とある P337