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言葉の宝箱 1120【また明日でいいか、次の機会でいいか、と先に投げた事柄や人と再びまみえる保証はどこにもない】

『江の島ねこもり食堂』名取佐和子(ポプラ社2017/2/15)

目次に『2002年 麻布』『1915年 すみゑ』『1963年 筆』『1988年 溶子』『2017年 麻布』とある。湘南江ノ島で<半分亭>という民宿兼食堂を
営みつつ『ねこもりさん』を継承している女系5代、約100年の物語。


・ねこもりさんの<半分亭>は、
猫とお客さんに助けられつづいてきた店なんでしょう? P11
『2002年 麻布』

・梅干しを舐める三毛猫を飼ってたんだ。昔の話だけど(略)
猫が今、彼女のそばにいないことを察する
 P12『2002年 麻布』⇒ P253『1988年 溶子』

・<半分亭>の建物は横に長い(略)
横に並んでドアが三つあり、内部も三つに分かれている(略)
左の引き戸が民宿用で、
紺地に白で『半分亭』と染めぬかれたのれんがかかっている。
真ん中は食堂のガラス戸、
そして右の一番安っぽいドアが麻布達家族の母屋 P17『2002年 麻布』

・ねこもりなのに、江ノ島を離れてごめん P53『2002年 麻布』

・ねこもりは血だよ。
母ちゃんも、母ちゃんの母ちゃんも、そのまた母ちゃんもみんな、
佐宗家の女なら誰だって、生まれた時からねこもりなんだ P57
『1915年 すみゑ』

・江の島のねこもりは、すみゑちゃんのお家の人だけなの?(略)
佐宗家が代々担ってきたんだと思うよ。あ、佐宗家の女だけがね(略)
ウチは男が生まれない家系なんだ。だから、いつもよそから婿を取る(略)でも島の人から見れば、佐宗家の人間はみんな『ねこもりさん』よ(略)『半分亭さん』って呼ばれるよりも『ねこもりさん』の方が多いね。
本当は、各時代にねこもりは一人だけなんだけど P85『1915年 すみゑ』

・あの梅干し好きな三毛猫も元飼い主なんだろう?違う?
捨てた猫が気になって、好物を持って戻ってきたんじゃないの?(略)
リコンするから、私は真山朋乃になって、ママと新しいお家に住むの。
猫の住めないお家 P253『1988年 溶子』⇐ P12『2002年 麻布』

 
*ある事情から『ねこもりさん』が江ノ島を離れることになり、
話は時代を遡り、また江ノ島に戻ってくるまでの物語。

『半分亭』、佐宗家は「ウチは男が生まれない家系なんだ。
だから、いつもよそから婿を取る」女系家族で、
「佐宗家の女なら誰だって、生まれた時からねこもりなんだ」
女性はみんな、ねこもり。
1915年は大正4年、すみゑの母ユエは、夫と離縁し、
女手一つ、よしず張りの小屋<半分亭>を営み
その稼ぎで一人娘のすみゑを育てていた。


・よく言えばやさしそうな、悪く言えば気の弱そうな笑顔 P8
『2002年 麻布』

・ゆっくり時間をかけてちゃんと育てれば、
世界がおのずと広がっていく P27

・本音を、口にしない代わりに何度も咀嚼した P28

・失ってみなければわからない。
また明日でいいか、次の機会でいいか、
と先に投げた事柄や人と再びまみえる保証はどこにもない P45
『2002年 麻布』

・怒っていても悲しんでいても笑えるの。嫌な子よねえ P80
『1915年 すみゑ』

・罪のない人間なんていませんよ(略)
軽重や法に関係なく、何らかの罪を背負って生きている。
生きているだけで、人は誰かを傷つけることがある。
誰かに迷惑をかける。誰かの手を煩わせてしまう。
この世に生きるって、きっとそういうことなんだ P187『1963年 筆』

・理解と共感はまた別だ P222『1988年 溶子』

・助けるのと甘やかすのは、違う P223

・憧れたものにはいつも届かなくてさあ。
届いていないって現実を認める強さもなくて、
手っ取り早い嘘をつくようになった。
自分も相手も、その場だけ楽しくやり過ごせれば、まあいいかーって P248『1988年 溶子』

・頭で考えた返事はいらないから(略)
今の状況とか周りの境遇とかこれまでのいきさつとか、
頭で考えちゃうと、『無理』って言葉しか出てこないでしょう?(略)
心の返事を待ちます P304『2017年 麻布』


*<半分亭>『半分亭』、「江ノ島」「江の島」
異なる表記になんらかの意図があるのだろうか?


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