言葉の宝箱 0955【大切なのは自分に必要なものは何かを自分自身で見極めること】
『幸せの条件』誉田哲也(中央公論新社2012/8/25)
「新燃料・バイオエタノール用にコメを作れる農家を探してこい」
突然の社長命令を受け、
片山製作所・伝票整理担当の梢恵は縁もゆかりもない長野の農村へ。
ところが行く先々で「コメは食うために作るもんだ。
燃やすために作れるか」と門前払い。
さらには農業法人『あぐもぐ』の社長・安岡に、
「まずは体で一から農業を知れ」と一喝され、
これまで興味も知識も皆無だった農業に取り組むことに。
そこで初めて農家が抱える現実を思い知る。
彼氏にも会社にも見放された24歳女子。
果たして、日本の未来を救う、新しいエネルギーは獲得できるのか?
農業、震災、そしてエネルギー問題に挑むお仕事小説。
『社長の用件』『最初の出張』『現地の人々』『決断のとき』
『農業の諸々』『最後の奉公』『幸せの条件』の7章。
・お前は不必要な人間だといったんだ。
そして今、お前の代わりいくらでもいるといった。
でもな、お前が必要とされない原因は、お前自身にあるんだからな P99
・人は常に、何かと何かを比べて、
マシな方を選択して生きていくものなのだと思う P102
・自分の底が見えてくるだろうか。
底が見えたら、少しは気も楽になるのだろうか。
あとは登るだけだと、開き直れるのか P103
・人はどんなに惨めな気分でも、笑うことができる生き物らしい P105
・ここに人が集まってくる理由が(略)
少し分かった気がした。
人として本来すべきことを、曲げずにやり通す強さ。そのあたたかさ。
余所者でも受け入れ、食事を出す。他人の子どもでも預かり、面倒を見る。損得ではない、もっと大切な何か。
利害より優先されるべき、もっと大きな価値観。
ひと言では言い表せないけれど、でも、そんなものを感じた P149
・誰だって親になるのは不安なんだ。最初は誰だってそうなんだ。
でも不安でもなんでも、やるしかないんだよ。やってみろよ。
生んでみろよ。育ててみろよ。
絶対に分かるから。その尊さが分かるから P283
・食べるものを、自分たちで作って、生きる。
それによって、他の人たちの食も支えて、生きる。
常に、大いなる自然の一部として、生きる。
季節を感じながら、雨風と闘いながら、生きる。
体力的にキツくても、暑くても寒くても、笑って、生きる。
とにかくあの場所で、みんなと笑いながら、生きる―― P361
・大切なのは、誰かに必要とされることなんかじゃないんだ。
本当の意味で、自分に必要なものは何か・・・
それを、自分自身で見極めることこそが、本当は大事なんだ(略)
自分は、これをやって生きていきたい。これをやって暮らしていきたい。
生きるって、実はこういうことなんじゃないか P366