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「不思議の国のアリス」は世界最古の量子力学SF?
今回は、「不思議の国のアリス」について少し書いてみたい。
というのも、今夏公開予定のP.A.WORKS新作映画が「不思議の国のアリスと-Dive in Wonderland-」ってやつらしいのよ。
で、少し驚いたんだが、実はこれが日本初の「不思議の国のアリス」映画化ということになるらしいね。
ファンタジーの王道中の王道というところが、案外日本は手つかずになっていたということだ。
これほどまで異世界系が興隆してる日本アニメ界が、まさかその先駆けともいえる古典を映画化してなかったとはね・・。
で、皆さんは「不思議の国のアリス」を知ってる?
そりゃ当然タイトルぐらいは知ってるだろうけど、でも実際どんなお話かというと、意外にうろ覚えという人は多いんじゃない?
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これの原作小説は1865年に英国で出版されており、著者はルイスキャロル。
日本でいうと江戸時代に該当する頃の文学だね。
これはありとあらゆる国の言語に翻訳されてて、その翻訳の多さは「聖書」「シェイクスピア」に次ぐ第3位ということらしい。
とにかく、世界最高峰のベストセラーですわ。
じゃ、そんなにも面白いストーリーなのか?というと、正直私は子供の頃に読んで「??」となったクチだけどね。
意外とオンナノコには人気だったようだが、オトコノコ的には冒険譚というにはパンチが弱いし、ただアリスが異世界をうろうろと彷徨してるだけで、しかも最後は夢オチでしたというのは「・・だから何やねん!」とツッコむしかない内容である。
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・・いや、多分だけどね、これは子供たちに愛される児童文学というより、むしろこれを支持してるのはオトナたちの方じゃないかな?
実際、私も「アリス」を好きになったのはオトナになってからだよ。
オトナが「アリス」に惹きつけられる要因というのは、主に次の3つだろう。
①ヒロイン・アリスのフシギちゃん系魅力
②登場人物全員が頭おかしいシュール系不条理劇としての魅力
③チェシャ猫の存在、時間の概念など、哲学/量子力学にも繋がる設定の異様なまでの知性の高さ(SFとしての魅力)
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多分このへんの面白さの理解は、子供にはまだ無理だってば・・。
で、今回はあくまでオトナの皆さんを対象として、「アリス」アニメ作品群の数々をご紹介していきたいと思う。
まずは基本中の基本、ウォルトディズニーの「アリス」から。
「ふしぎの国のアリス」(1955年)
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これは現在著作権フリーとなってるので、YouTubeでタイトルを検索すれば普通に無料視聴ができます。
「アリス」入門としては、まず最初にこれを見てほしい。
ここでまずビビるのは、アリスのフシギちゃん系キャラに対してだろう。
ぶっちゃけ、本作はアメリカで公開当時評判がよくなかったらしい。
おそらく、その原因の多くがこのヒロインのキャラ設定にある。
この子、ちょっと変なのよ。
こういう未知の異世界に迷い込んだ場合、普通の少女なら、まず怖がるものだろうに、彼女には全くそういうのがない。
冒頭からそうである。
まず、謎の縦穴に墜落するところからして相当な危機だというのに
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特に悲鳴を上げるでもなく、冷静に状況分析をしているアリス・・。
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で、行き着いた先は俗にいう異世界というやつで、そこは動物も植物も言葉を喋るというワケ分からん世界だというのに、特にアリスはそれに驚くでもなく、比較的早い段階で順応してしまう。
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終始、こんな感じなんです。
ディズニーは「白雪姫」の頃から伝統的に「ロトスコープ」(まず実写映像を撮り、それをアニメ化する)という手法をとっており、このアリスもまた声優を務めてた子がロトスコープの被写体になってるらしい。
で、その子の個性がかなりアニメに投影されてるんだろうね。
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かなりヤンチャ系のキャラっぽく、これが公開されたのが1950年代だということを思うと、ちょっと異質なヒロイン像だったかもしれない。
だから、当初は「駄作」認定されてた本作なんだが、これが時を経るごとにだんだんと評価が上がり、今では立派に「名作」のひとつとして認められている。
いや、実に現代的なアクティブ系ヒロインだと思う。
で、このヒロイン・アリスには原作小説の段階でモデルとなった少女がいたわけよ。
それが彼女↓↓で、原作者ルイスキャロルの知人の娘さんだったというアリスリデルなる少女である。
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美しいお子さんだよな?
これはルイスキャロル自身が撮った写真らしいんだが、彼はアリスを被写体にしてこういう写真も撮っている↓↓
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少し、エロくないでしょうか?
どうやらルイスキャロルには、少女のヌードを撮るという趣味があったらしい・・
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実際にかなり子供好きだったみたいで、いうなれば
ルイスキャロルは19世紀版マイケルジャクソンだった?
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いや、そこには諸説あるらしいんだが、私はキャロル=マイケルジャクソン説よりも、むしろキャロル=宮崎駿説の方を支持する立場です。
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確か、宮崎駿も知人の娘さん(日テレ奥田プロデューサーの娘・千晶さん、当時10歳)をヒロインのモデルにして、「千と千尋の神隠し」を作ったんだよね?
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思えば「千と千尋」は宮崎駿流「不思議の国のアリス」であり、湯婆婆などは分かりやすく、「アリス」でいうハートの女王だろう。
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やっぱ<子供好き>たるもの、こういう理不尽な暴君と対峙する少女の姿を描くことが表現者としての至福なんだと思うぞ?
さて、ここでディズニー以外の「アリス」もご紹介しておこうか。
全世界中に数多くある中でも私の個人的なお薦めは、1981年、ソ連制作の「不思議の国のアリス」です。
ソ連版「不思議の国のアリス」
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これはね、ディズニーのと比べると、めっちゃダークファンタジー色が強いのよ。
陰鬱で、<ギレルモデルトロ風の世界観>とでもいうべきか。
ディズニーの場合は、すぐに斬首刑をしたがるハートの女王を一種のギャグとしてコミカルに表現してたのに対し、ソ連版の方の女王は一種の政治批判(共産党)のメタファーとして表現されてた気もするなぁ・・。
とにかく不気味で怖い「アリス」。
興味のある方は、ニコニコ動画にアーカイブされてるから一度ご覧になってみてください。
さて、じゃ日本国内での「アリス」作品はどうかというと、幾つかあるんだが、ダントツでお薦めしたいのは1983年の日本アニメーション制作「ふしぎの国のアリス」ですね。
日本アニメーション版「ふしぎの国のアリス」
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うん、これはいいですよ。
「アリス」系では一番マイルドなやつで、とてもかわいい。
アリス役を今は亡きTARAKOさんがやってるんだが、皆さん彼女の演技は「ちびまる子ちゃん」ぐらいしか知らないかもしれないけど、この人は普通に巧いですよ。
ほんわかフシギちゃん系のアリスの声を実に見事に表現している。
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作品としては、児童向けに敢えてオリジナル要素をふんだんに盛った感じで、だいぶ甘口ですな。
私のお気に入りは、原作設定からアリスの体は大きくなったり小さくなったりするんだが、ここではそれに付け加えて、太ったりするんですよね(笑)。
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こういう感じで非常に親しみやすい「アリス」なんだが、ひとつ難をいうと原作がもつ支離滅裂さ、意思疎通がほとんどできてない会話劇のシュールさなどはここになく、そういう意味でいうとディズニー版「アリス」って凄いよなぁ、と改めて感じたんだけど。
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私はルイスキャロルが成した最大の功績って、「アリス」でシュール系ギャグというジャンルを開拓したという点に尽きると思うのよ
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そして、こういったシュールさの象徴ともいえる存在が、やはりコレということになるだろう↓↓
チェシャ猫
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ちなみに、実はルイスキャロルって人は本職が数学者らしい
こういうファンタジーっぽいのを創る人だから文系だと誤解されがちだが、実は思いっきり理系の人である。
つまり、「アリス」はファンタジーではなくSFだと解釈する人も結構多くいるわけで。
その論拠とされるのが、このチェシャ猫の存在。
この猫は<どこにでもいて、どこにもいない>といえる存在不確定の生物であり、まさに「シュレディンガーの猫」なんだよね。
アリスの<観測>によって初めて顕在化する。
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よりによって実に量子力学的な猫なんだが、ちなみに、この小説執筆時にはシュレディンガー(1887年~1961年)はまだ生まれてもいないわけだから「シュレディンガーの猫」という概念そのものもまだ無い時代である。
なのに、思いっきり<観測されるまで存在が確定しない>、量子論そのものともいえるキャラクターなんだ。
と考えると、このアリスが彷徨した「不思議の国」というもの自体、物語としては一応「夢オチ」という締め方をしてるけど、実はアリスの<観測>によって顕在化した<量子世界>、分かりやすくいうとイマジナリーフレンドの発展形みたいなものとも解釈できるわけよね。
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というか、数学者であるキャロルが「単に夢でした」という子供騙しなオチをつけたこと自体、一種のミスリードという気がしなくもないよ。
と考えていくとね、この物語、色々と深いんだ。
アリス「道を聞いてもいい?」
チェシャ猫「どこに行きたいかによるよ?」
アリス「どこに行きたいか分からないの」
チェシャ猫:「ならどうでもいいよ。
どこに行きたいか分からないなら、どの道を選んだって、そこにたどり着けるんだから」
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・・ね?
「涼宮ハルヒ」的世界観でしょ?
なんていうかさ、このアニメはむしろオトナにこそ繰り返し見てもらいたい作品だわ。
お薦めです!
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