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「ジブリ美術館ライブラリー」系アニメは要チェック!
今回は、「三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー」所蔵アニメについて書いてみたいと思う。
ジブリ美術館は、自社制作アニメに関連したものの所蔵や展示のみならず、海外のアニメ映画の「配給」「DVD販売」を行ってることは皆さんご存じ?
で、これらの作品のセレクトは、今まで主に高畑勲と宮崎駿が中心になってやってきたと聞いている。
それらの作品はどんなものかというと、こんな感じ↓↓
「雪の女王」監督/レフ・アタマーノフ(ソ連)
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「アズールとアスマール」監督/ミシェル・オスロ(フランス)
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「春のめざめ」監督/アレクサンドル・ペトロフ(ロシア)
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「王と鳥」監督/ポール・グリモー(フランス)
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「キリクと魔女」監督/ミシェル・オスロ(フランス)
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「プリンス&プリンセス」監督/ミシェル・オスロ(フランス)
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「ベルヴィㇽランデブー」監督/シルヴァン・ショメ(フランス)
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「夜のとばりの物語」監督/ミシェル・オスロ(フランス)
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「しわ」監督/シルヴァン・ショメ(フランス)
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やっぱ、フランスのバンドデシネ系が多いな。
あとは高畑勲がリスペクトするフレデリック・バック、宮崎駿がリスペクトするフライシャー兄弟の作品なども当然入っている。
「こんなアニメ、見たことねーぞ?」
という人は多いだろう。
・・そりゃ当然である。
だって、大手配給会社が手掛けなかった作品なんだから。
つまり、大手が「売れない」と見込んだ作品なんだろうね・・。
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いや、これは大手を責めてるわけじゃないさ。
確かに彼らの見込みは決して間違ってないと思うし、これらをリリースしたところで赤字興行になった可能性は極めて高い。
だって、これ<芸術>に近い範疇のアニメだから。
しかしジブリは、敢えてそういう商業の原則で漏れてしまった作品にも陽を当てようという試みなんだね。
「ジブリの推しです」というタグをつけるだけで、本来<芸術>には食指を伸ばさない層でも意外と手にとってくれるかもしれん。
・・いや、現実はそんな甘くはないかもしれんが。
でも、そういうジブリの心意気は崇高だと思う。
で、今回は、そういうライブラリーの中からひとつチョイスしてご紹介してみようかと。
「動物農場」(イギリス)1954年
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うむ、このタイトルだけなら聞いたことがある、という人は多いんじゃないかな?
ジョージ・オーウェルの有名な小説である。
この原作の出版は1945年。
内容は、痛烈にスターリン批判、共産国家批判、ファシズム批判かと。
それをメタファーとして、動物たちを主人公にした物語として描いたんだね。
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で、それをアニメ化したのがハラス&バチェラー。
宮崎駿がインタビューで語っているんだが、実をいうと彼はハラスの影響を強く受けてるらしい。
というのも、彼がアニメ制作に携わるようになったのが1963年からとして、その当時、アニメを勉強する為のテキストと呼べるものは1冊しかなかったんだそうだ。
それが、これである。
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そう、このテキストの著者がハラスだったんだよ。
みんなが、これをバイブルとしてアニメ作りを模索していたようだ。
宮崎さんもまた、これを熟読して勉強したクチらしい。
いわば、江戸時代「解体新書」の元ネタの洋書「ターヘナルアナトミア」的な感じ?
で、そんな彼の代表作といえるのがこの「動物農場」であり、これは明確にオトナ向けアニメだね。
ディズニーのような子供向けではない。
また、日本ではディズニー「バンビ」に触発された手塚治虫が「ジャングル大帝」を作ってるが、これは動物たちが一致団結して外敵を追い払うところまでをメインにやってるのに対し、「動物農場」の方は外敵を追い払った後をメインに描いてるといえる。
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「動物農場」との対比の意味で見ておいた方がいい一作
ぶっちゃけると、かなり「動物農場」は胸糞悪いアニメですよ。
そりゃそうさ。
だって、ここで描かれてるのはロシア革命以降のソ連、およびスターリンに対する批判/風刺なんだから。
<革命>
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横暴で無能な農場主(人間)に怒り、動物たちが一致団結して人間との闘いを挑む。
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結果勝利し、人間を農場から追放に成功。
<革命以降>
やがて、動物たちは自らの手で農場を運営していくことになった。
①2本足はすべて敵である
②4本脚と翼を持つ者はすべて友人である
③動物は服を着てはならない
④動物はベッドで寝てはならない
⑤動物はアルコールを飲んではならない
⑥動物は他の動物を殺してはならない
⑦すべての動物は平等である
という法律を定め、平等の名の下に皆で農作業に取り組むことに。
ただ、これがうまくはいかないんだよね。
「頭脳労働」担当は豚、「肉体労働」担当は馬や牛や鶏、こうして分かれたところから明らかな不平等が生じ始める。
やがて豚は、豚の利益を最優先にして農場の改革をしていくようになった。
彼らは猟犬と手を組み、つまり、豚の意見に反逆する者は猟犬に粛清させるようになったわけよ。
その時点で、もう法律⑥や⑦を破ってるわけだが、豚はその都度法律を改正することで保身を図っていく。
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やがて豚は法律①も破り、農場の利益拡大の為に人間との商取引を始める。
それで農場は富を得ることになるけど、その利益が豚と側近の犬以外に還元されることはなく、農場の動物たちはひたすら以前と変わらぬ重労働、一方で豚たちは贅沢三昧、という完全な格差社会が定着してしまった。
ある意味、人間に牛耳られてた頃より労働条件は悪くなってるのでは・・?
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宮崎駿は、この「動物農場」に対するコメントを求められた際、次のような面白い発言をしてるんだ。
「僕は会社というのは誰よりもそこで生活しながら仕事している人間たちの共有の財産だと思っています。
でも、それは社会主義的な考え方なんですね。
今主流になってる考え方というのは、私有財産として株を持ってる人間のほうに発言権があって、株主たちが『この経営者はダメだ。もっと儲ける経営者を選べ』といったら、経営者はどんどん変わらなきゃいけないとか、そういうアメリカ型の資本主義です。
それを進めていくと、リストラをして正社員を減らして派遣社員やアルバイトだらけにして労働基準法のギリギリまでこき使ってポイッと捨てる。
正社員は正社員でくたくたになって働いてる。
いくらでも替わりはいるんだという今の仕組みこそ『動物農場』と同じです」
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そうね、この「動物農場」は今見ても、いや、今の時代だからこそ見ていて痛烈にズシンとくるものがある。
搾取する側、そして搾取される側、それは20世紀だろうが21世紀だろうが、あまり構図は変わってないよね。
でも私が本作を見た感じ、ジョージ・オーウェルはスターリン批判はすれどマルクス/レーニン批判をしてるわけでもなさそうな印象。
というのも、本作の悪役は明確にこの豚・ナポレオン↓↓であって、
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こいつの前の代の豚(レーニン?)、そして初代の長老の豚(マルクス?)は割とマトモで高潔だったんだから。
結局、ナポレオンが暴力(猟犬による粛清)を背景にしたあたりから豚独裁の恐怖政治になったわけで、このへんは日本の「治安維持法」施行、軍部の暴走という流れとも酷似してるよなぁ・・。
暗黒というべき昭和初期はマジで最低の時代だったんだろうが、じゃそれの発端を「明治維新」だとして、明治維新なんて無ければよかったんだと結論付けるのはさすがに乱暴でしょ?
それと同様、スターリンが最悪だったからといって、ロシア革命そのものを全否定するのもまた違うだろう。
じゃ、帝政のままの方が良かったのか?という話さ。
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この農場で、横暴な人間を追放したのは動物たちによる武力蜂起、すなわち<暴力革命>である。
この一点で、彼らは暴力の価値を否定することはできないだろう。
ただ、この暴力というのは管理が実に難しい。
結局、これのコントロール権を奪った奴とその側近が強者となり、その時点で人民平等もヘッタクレもないんだから。
とどのつまり、資本主義だろうが共産主義だろうが不平等は絶対に避けられず、まだ平等を謳わないだけ欺瞞がない資本主義の方がマシ、というだけのことである。
・・あ、宮崎さんは、一方でこういうことも言ってるんですよ。
「自分が善意であるからといって、自分が善良な存在だと思ってはいけない。
特別お金を稼いでいるとか、楽をしているわけじゃないから自分は無罪だ、とは思ってはいけないんです。
仕組みの中では、自分だってナポレオンなんです。
その仕組みの問題はいっぺんには解決できないですけど、だからといって、手をこまねいて無関心でいられること自体、既にそれはナポレオンなんだってことなんです」
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・・結局のところ、実は我々だって豚なんですよ、と。
まぁ、確かにそれはそうかもしれないね。
宮崎さんの世代はこのへんの議論を若い頃に腐るほどやってきたクチだろうし、だから「動物農場」についてコメント求められた際には、もうとにかく喋るわ喋るわ・・(笑)。
そのぐらい、思い入れの強いアニメなんだろう。
・・政治色強いの?うざっ!
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と思う人もいるかもしれないけど、心配ご無用、普通にエンタメ作品として面白いから。
未見の方は、是非ご覧になってみて下さい。
まずジブリが出してるDVDをお薦めするけど、あくまで無料で!という人はニコニコ動画にアーカイブされてるし、あとは「animalfarms1954」というワードでYouTubeを検索し、自動翻訳版で見る手もあるよ。
それにしてもジブリ美術館、こういうアニメを配給するのは立派なんだけど、おそらく儲かるどころか赤字だと思うので、ちょっとそのへんが心配・・
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