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日本アニメ史上、最も制作費が高額のアニメを知ってる?

世界で最も有名な映画賞授与式典・米国アカデミー賞の中に、「アニメ賞」ってあるよね。
今まで日本のアニメ作品は、

・「千と千尋の神隠し」(2002年)監督/宮崎駿
・「君たちはどう生きるか」(2023年)監督/宮崎駿

という形で、2度オスカーを獲っている。
なお、最終ノミネートまでいったけど、惜しくもオスカー逃した例は

・「ハウルの動く城」(2005年)監督/宮崎駿
・「風立ちぬ」(2013年)監督/宮崎駿
・「かぐや姫の物語」(2014年)監督/高畑勲
・「思い出のマーニー」(2015年)監督/米林宏昌
・「レッドタートル」(2016年)監督/マイケルデュドクドゥヴィット
・「未来のミライ」(2018年)監督/細田守

といったところである。

さて、こういうノミネートって一体どういう形で行われてるのかということだが、どうやら「アカデミー会員」たちの投票によって決まるものらしい。

でさ、アカデミー会員って何なの?


これがよく分からんのだよねぇ・・。
シロウトでなくプロ、すなわち業界関係者により組織されてるものらしいんだが、そうはいってもカンヌやベネツィアの国際映画祭みたく、必ずしも「鑑賞眼のあるプロ」というわけでもないみたいなんだよ。

ちなみに、日本人としては
・押井守
・新海誠
・細田守
・片渕須直
・なかむらたかし
・湯浅政明
・岡田磨里
・いしづかあつこ

など、結構凄い顔ぶれがアカデミー会員として名を連ねている。

なお、総勢は1万人を遥かに超える規模になってるらしい。
少し前まではせいぜい数千名程度だったんだが、「会員が白人/男性ばかりに偏っていて不公平!」という声が上がったらしく、その「修正」として近年非白人/女性をどんどん入会させるようになったんだってさ。
お陰で、総会員数がめちゃくちゃ膨れ上がってしまい、もはや賞の「選考」というよりは「総選挙」だよね。

あるいは「優れた作品」というより、「選挙活動がうまく成功した作品」がオスカーを獲る時代なのかもしれない・・。

「ゴジラ1.0」オスカー受賞も、「ロビー活動」の成果だと評価されている

さて、ここでちょっと話題を変えるんだが、

皆さんは日本アニメで初めて米国アカデミー賞にノミネートされた作品を知ってますか?


・・やっぱジブリ作品?
と思うだろうが、実は違うんですよ。
意外なことに、このアニメなんです↓↓

「ファイナルファンタジー」(2001年)

制作/スクエアピクチャーズ、コロンビアピクチャーズ
 監督/坂口博信

えっ?これアニメじゃないじゃん、と皆さんは思うかもしれんが、ちゃんとアカデミー賞「アニメ部門」で選考対象に入ったのよ。
いわゆる、「リアルフォト3DCGアニメ」というやつだね。

私は全くゲームをやらない人なので正直よく知らんけど、監督の坂口博信という人はゲーム界で神様級の大物らしい。
「ファイナルファンタジー」シリーズそのものを作った人なんだってさ。
つまり、創造神が本編のゲームに飽き足らず、アニメとして映画まで作ったということか・・。
それもコロンビアピクチャーズを抱き込み、日米合作という大プロジェクトである。
制作費は、なんと150億円以上を注ぎ込んだとも・・。

で、興行収入は日本国内で10億程度、世界興収でもせいぜい数十億程度で、もうトンデモないスケールの大赤字だったらしい。
なお、アニメ評価サイト「あにこれ」では、この映画に対して

150億円かけて作ったゴミ

というコメントが寄せられている。

皆さんは、この映画を見た?
私は見たんだけど、さほど「ゴミ」とは思えなかった。
じゃ、全く見たことないという人の為に、一応予告編を貼っておきます。

なお、本編を全部見たいという人は、YouTubeで「ファイナルファンタジー2001」と検索すればフル無料動画が見れるので、そちらをどうぞ。

でもさ、2001年でこのクオリティ、ぶっちゃけ凄くない?
2005年のOVA「ガンダムMSイグルー」と比較しても、「やっぱ、おカネをかけてるだけのことはあるな!」という印象である。

「ガンダムMSイグルー」(2005年)

なんつーかさ、「MSイグルー」はめっちゃ頑張った当時の力作だと思うんだが、それでも鉄砲伝来によって開発された、<種子島>感があるんですよ。

<種子島>では、世界と互角に闘えない!


そう考えたのが、前述の坂口博信さんである。

そこで彼がとった戦略は、こっちが目標とすべきハリウッドと共同で作品を作るという方法論だったんだ。
俺はゲーム界で世界的名声を得た神だ!」と映画界に打って出るスタンスではなくて、むしろ「勉強させていただきますぅ~」という低姿勢である。

誇り高きサムライであれど、あくまで長州ファイブ的スタンスだね。
・・いや、素晴らしい。

私はね、自身はゲームやらない人なので本来語る資格もないんだが、しかし実はゲームクリエイターにはとてもリスペクトする部分というのもあって、それは彼らに<学ぶ姿勢>がきっちりあることなんだよ。

たとえば、この「ファイナルファンタジー」という映画では本場ハリウッドの3DCGスタッフのみならず、
・金田伊功
・村瀬修功

といった2Dの日本人アニメーター(神クラス)を三顧の礼で招いてるんだよね。
それこそ尊王攘夷の真逆、「勉強させていただきますぅ~」というスタンスである。
だから「150億円かけて作ったゴミ」とか言われつつも、作った側としては決して無駄ではなかったと思う。

そのへんは、その後スクエアエニックスが作った劇場用アニメ映画第2弾を見れば理解できることである↓↓

「キングスグレイブファイナルファンタジーXV」(2016年)

制作/ヴィジュアルワークス、スクエアエニックス
監督/ 野末武志

「ゴミ」と揶揄された映画「ファイナルファンタジー」から十数年を経て、今度は日米合作でなく、スクエアエニックス自力で映画を作ったのよ。
ただ、これの公開は僅か10日程度だったらしく、それでも興収は1億を突破し、まずまずといった結果だろう。
狙いが「ゲーム販促用映画」ゆえ、もともと映画自体でビジネスにしようとしてなかったということね。

その割に、この3DCGアニメ、多分私が思うに日本アニメ史上でも最高水準なんですけど?

やっぱ2001年の時に比べ、格段にクオリティが向上している。
こういうのをさらっと作っちゃうあたり、スクエアエニックスってのはマジで侮れないわ~。
なお、この作品の制作費は特に公表されていない。
よく分からんが、ゲーム本編の方の映像を使い回してるの?
という割に、これは映画オリジナルのシナリオ(本編の前日譚)らしいんだけど・・。

そもそも、これアニメなのか?
・・うん、実写ではなくフルCGだし、立派にアニメだと思う。
ただね、エンドロールを見てると、たとえば主人公のニックウリックが次のような表示になってるのよ。

【ニックウリック】
声/綾野剛
モーションキャプチャー/NEIL NEWBON
3Dスキャンモデル/JOHAN PICARD

主人公・ニックウリック

ややこしいね・・。
ようするに、このニックの顔、体形等はJOHAN PICARDをベースに3Dキャラを作り、体の動きはNEIL NEWBONがモーションキャプチャーでアニメの形にし、仕上げで綾野剛の声をハメた、ということだろう。

モーションキャプチャー

なるほど、3者が各々「見た目」「動き」「喋り」を分担し、ニックという架空のキャラを作り上げてるということね。
もはや、そこに「描く」という要素はほぼなく、我々がイメージするアニメとはだいぶ異なるものかもしれん。

・・でもこんなの、今なお老体に鞭打って必死に頑張ってるトムクルーズに失礼じゃないか?

必死に頑張っているトムクルーズ
必死に頑張っているトムクルーズ
必死に頑張っているトムクルーズ

そう、いまどきの技術ならトムクルーズの顔だけを3Dスキャンして、あとはモーションキャプチャーで何とでもできるってことじゃん?
アニメだからスタントマンの必要もないし、特殊メイクだって必要ないし、衣裳もセットも必要ないし、たとえトムが不摂生で太ったとしても修正可能だし、いや、最悪トムが死んだところで、それでも彼主演の映画を作ることは可能だろう。
何なら、ロバートデニーロの表情演技をモーションキャプチャーし、それを3Dモデルのトムの顔に落とし込めば、トムは念願のオスカーを獲れるんじゃないか?
・・んなわけねーって(笑)。

もはや、この3DCGの進化ってものは、映像において<ほとんど何でもあり>という万能領域に近づいてきてると思う

・・といっても、実は万能というわけでもないんだよ。
彼らがどうしても再現できないのが、「日本のリミテッドアニメーション」だという。

スクエアエニックスは金田伊功を招聘しつつも、結局はモノにできなかったのか

・・そう、いまどきの「リミテッドアニメ」というやつはただの作画省略というわけじゃなく、

・1コマ(1秒につき24画像)
・2コマ(1秒につき12画像)
・3コマ(1秒につき8画像)


この3つを絶妙に<ブレンド>してるらしいのよ。
いわば、「極意」の領域だよね。

・・で、いまどきの3Dアニメーターは皆さん勉強熱心なもんで、こういう「リミテッド」の<ブレンド>極意を一生懸命研究してるらしい。

ところが、これが予想より遥かに体系化されておらず、そこに一定の法則のようなものを全然見つけられないんだって。
それは<システム化できない>ことを意味し、3DCGアニメーターとしては困った事態である。

で、結局彼らはベテラン2Dアニメーターに「極意を教えてください」と頼むらしいんだが、でも返ってくる返事は大体が

「え?そんなの<感覚>だし、経験を積むしかないでしょ?」

という素っ気ないものだという(笑)。
そうか~、<感覚>か~。
日本アニメ界は、意外とふわっとしたものに支えられているようだわ(笑)。


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