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粕漬け オカンとワタシと、時々、オトン
郷土料理初心者
だんない おきばりやす
「大根の粕漬けを漬けたんやけど、どうする? 見に来る?」と、母から電話がかかってきた。五月が終わる頃の話である。身支度を早々に済ませて家を飛び出した。見に行くに決まってるやん! だってあの「粕漬け」やで!
実家の食卓で出されるあの「粕漬け」は、全ての漬物の中で一番大好きな漬物である。それは、祖母から母へと代々引き継がれた漬け方だ。奈良漬けとは似て非なるもので味が微妙に違う。一切れ食べると箸が止まらなくなるほど夢中になってしまうのだ。まったく箸休めにならない魅惑の漬物。さぁいよいよその作り方を教わる。
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はじめに、母が漬け方を絵に描いて教えてくれた。「まず、たくあんをな、酒粕とざらめで漬けるねん」…え? たくあん? 漬物をまた漬物にする? なんで? …もう頭の中は「?」だらけ。
奈良漬けは、塩漬けの大根を粕に漬けるのが一般的らしい。 なぜ、うちはたくあんを使うのだろう…。「そら、たくあんで漬ける粕漬けがうまいでよ。」と父が言う。なるほど! ザ・シンプル。夢中になる理由が分かった。
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さらに、母は構わず淡々と話を続ける。十二月に畑で採れた大根を二週間干す。米ぬか、塩、茄子の葉を乾かして粉にしたものと、干した大根を「たくあん漬け」にする。
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冬を経て、翌年の五月頃にたくあんを取り出す。たくあんの使い道は三つ。①そのまま食べて楽しむ ②ぜいたく煮を作り味わう ③粕漬けを漬ける。粕漬けは一か月ごとに漬け直す。それを三回繰り返して出来上がり。食べ頃は八月というわけだ。なんというお手間入り! 大根がたくあんから粕漬けへと旨さの成長を遂げる壮大な発酵物語だったのである。
(文hk/イラストhi)
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