戌の日にお供えする「犬の舌餅」覚え書き
2024年11月6日甲戌、戌の日。
滋賀県多賀町富之尾、大瀧神社の横に鎮座する犬上神社の例祭に偶然居合わせることが叶いました。以前『富之尾史』に「秋の日、犬の舌に似た形の「舌餅」をお供えする」と目にして以来、気になっていました。
犬上神社のお供え「犬の舌餅」
犬上神社にお供えした「犬の舌餅」は、もち米100%のお餅です。
三宝の上に重ねられた餅の数は約60個。総代さんに詳しく数を聞きそびれてしまいました。
手のひらにのるサイズで一個60g。約9.5×5.5㎝の楕円形。
彦根市のお菓子屋さん、庄月堂さんに頼んで作ってもらっているそうです。一個ずつ形がまばらなところを見ると手作りのようです。昔は、多賀大社の門前通りにある風月堂さんにお願いしていたそうです。
総代さんの記憶では、皆で集まって餅を作ったことはないそうで、昔からずっと犬の舌餅をお供えしていたとのことです。何故犬の舌なのか?いわれはご存じないとのことですが、おそらく、この地に伝わる小石丸伝説に関係あるのでは??と推測していますが・・・。
山の神と牛の舌餅?
農耕に欠かせない牛を神様にささげるので「牛の舌餅」、というのは定かではありませんが・・・。「牛の舌団子」を作って山の神に供えに行くという風習が大津市にはあるようです。
山の神と牛の舌餅の接点も分かりませんが・・・。
山の神が春には田の神になって里や田に下り、秋には新嘗祭を終えて山に帰っていく。焼き畑をする地域では山の神をまつる風習があるそうです。
しかし、町内の聞き取り調査では焼き畑を知っているという年配の方の話は、今のところ聞いたことがありません。しかしながら、山の集落、杉や保月集落では昔、蕎麦を掻いて食べていたとは聞きました。また、河内集落では、旧暦端午の節句にチマキをつくり、山の畑に12本お供えしに行ったとも聞きます。山の神をまつる集落は町内に多くあります。
足形のお餅
多賀町内、約40集落、一つの集落に一社、神社がお祭りされています。2015年、町内の祭礼調査時の、記憶の片隅に、他にも変わった形のお餅の神饌があったはずと、過去のメモを検索したら出てきました。
多賀町八重練集落の高松神社、10月8日秋の例祭の神饌に「足形のお餅」があります。足形のお餅は氏子軒数分作られ、1軒に二枚(一足)餅が配られるそうです。何故足形なのか、その謂われまでは聞けていませんでした。
ハレの日の餅
神様を迎える「ハレ」と、日常の「ケ」のなかで、ハレの日に神様を迎える特別なお供え物が餅。さらに、人生儀礼、農耕儀礼のハレの日に餅を作ります。餅は米が凝縮されたもので、生命を再生、更新する特別な霊力があるものと言われており、神事のあと、その餅を分けて、同じ餅を食べることで共同体の意識を深める役割を果たすと・・・。
また、正月は勉強机や車、家畜諸道具まで、それぞれ名指しの餅を備えて年を祝う。町内の年配の方は餅を何臼もついて、お鏡さんをつくり家中に備えたとおっしゃいます。
そして、お年玉は餅だったとも。
子どもの頃、餅が豊富にある家で、3月頃までは朝食が餅でした。お正月の餅を水餅にして、毎日水を換えて保存するうちに、だんだん味が悪くなってしまいます。毎朝のお餅が嫌で嫌で。なのに、昔のお年玉は餅だったんやで、お年玉は餅でどうや?と父に言われた時は、姉弟で憤慨した懐かしい思い出があります。
犬の舌餅と足形の餅、いわれをもう少し探ります。
そして、餅と団子に注目して、町内をしっかり再び調べなくては・・・と思いました。
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